虚用叢

見渡すかぎりうつろなくさむら

引越し

 引越しを考えている。きっかけはお金で、収支とんとんの現状からなんとかプラスにできないかと家計を見直していたことによる。今住んでいるアパートは大学進学時から住み続けているところで、当然ながら価値観もニーズもそれから大きく変化している。でも、その当たり前のことになかなか気付けず、我ながらようやくいろいろと調べたり考えたりしている。

 そもそも、支出(≒収入)の月12万余りのうちの5.3万を家賃および共益費が占めるのはバランスが悪い。出不精でいくらでも引きこもれる性分ゆえ、その本拠にお金をかける価値はたしかにある。この価値観は相変わらずで、同時に、これが思考停止の原因にもなっていた。大切な部屋のグレードは落とさずとも、立地が変わるだけで家賃は下がる。驚いたのはその幅の大きさで、同じ大阪府内で利便性や位置がさほど変わらない(ようにみえる)エリアでも、2万円以上今より抑えられることがわかった。この差はあまりに大きい。開始時は時間給のパートをなめていたところがあり、1万余分に欲しくなったら1日余分に働けばよいと気楽に考えていたが、今ではもう本当に週4日以上は働きたくない。退去やら引越しやらの費用も近距離のワンルームなら案外知れたもので、こういった少し調べればわかることを調べずに被った損はたくさんあるのだろう。

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 立地に求めることをもう少し考えてみる。現住居が割高な一因であろう大学への近さは不要になった。一方で外せないのが業務スーパーで、わたしの食生活はここに大きく依存している。青果全般の安さもあるが、乾燥大豆1kg税込495円とオートミール1kg税込538円の2つは、他のスーパーではまず替えが利かない。前者はタンパク源、後者は主食として、また両者とも食物繊維源として、それぞれ(調理前で)75g、100gほど毎日食べている。ネット通販の相場は割高であるし、実店舗で買う択を持っておくのは大事だ。もっとも、これまで輸入品に力を入れてきた業務スーパーの昨今の値上げは顕著で、ここさえあれば安心ともいえないのだが。ところで、春に自転車を盗まれた。無くても何とかなるものだと知見を得たのだが、それはスーパーへのアクセスありきで、徒歩15分圏内に業務スーパーがあるとうれしい。

 転居を阻む障壁というと、職場、家族、持ち家、コミュニティ・交友関係が思い浮かぶ。わたしに該当するのは職場くらいで、2万円安いエリアに越すとなると転職することになる。今の職場にはっきりとした不満はないのだけど、留まる絶対的な理由もまたなく、いずれは離れる。人間関係だとか、経験だとか、能力だとか、労働条件だとかに、職場リセットが及ぼす影響は未知数。ただし、そのタイミングは6ヶ月でも3年でも5年でも、長期的には似たり寄ったりの結果を生みそうな気もする。他方、新しい職場を見つけるのは簡単で、なぜなら介護を必要とするお年寄りはどこにでもいるから。今の職場はたまたま今の居住地から近くてマッチングしたにすぎないのだから、新天地での縁に対しても期待値はゼロでよく、少なくともマイナスに見積もる必要はない。とはいえ、精神的、時間的、金銭的コストは掛かるので、前向きに取り組める要素もまた欲しいが。

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 通勤は徒歩(30分圏内)が望ましく、電車は待ち時間や人が煩わしいので使いたくない。あくまで自身の短い人生経験に基づく主張だが、歩く効能というのはすばらしくて、アスリートでないならへたに激しい運動をしてストレスを溜めたり歩く気力と体力を失ったりすることはない。出不精のわたしには週3の強制徒歩通勤および労働が良い薬になっていると感じる。他はせいぜい公立図書館が近いとうれしいくらいで、月1以上の頻度で利用するどこにでもはない場所はもう思い当たらない。すると駅に近い必要はなく、これもまた今のアパートの無駄な魅力のひとつであるとわかる。地方の田舎出身に言わせれば、山間部でない府内なら交通の便が悪いなんてことはない。

 さて、結局いつ引越すのかは決まっていないのだが、いつでも家を空けられる準備はしておきたい。具体的には荷物を減らしたい。全然物を買わない一方で、それ以上に物を捨てられない、売れない性分である。たとえば、ベッドの下に積んでいる未読の古新聞。さかのぼって消化するのは楽しいのだが、毎日届く分を読むだけでも時間を要するし、どうせ読みきれないのだからさっさと捨てればよい。そんなことはわかりきっているのだが、保管できてしまうのでこれまで実行できずにいた。引越しの力を借りて、こういったただあるだけの不用品を一斉に処分したい。学生から労働者へと身分が変わったのもある。教科書といった本の類はともかく、読み返すより調べ直した方が早そうなノートやレジュメ、基本的にpdfデータのある論文も紙ごみに出すことにする。はっきりごみといえるものの他に、あとは衣類だとかゲームだとか、捨てずに換金をどこまで頑張るかは悩ましいものの、これらも処分を断行する所存。

 あらためて、独身、パート、賃貸、友人恋人不在、低支出と、これだけ条件がそろっておきながら引越しを考えないのはもったいない。経済的な利で思い立った今回だが、興として2年おきくらいで転々とするのも面白そうである。先日スマホゲームを辞めて、新しい興味が続々と湧いているように、何かを手放して穴を空けることで、新しい何かをそこに充てることができるだろう。手始めに近場で、なんなら職場を変える必要のない1万円家賃の低い部屋に越してもよい。いずれにせよ、荷物の処分だな。