虚用叢

見渡すかぎりうつろなくさむら

2023夏アニメ感想

 今回でアニメ感想記事もなんとか4シーズン続けることができました。春の借金を抱えたままモチベーションが落ちてシーズンインしたため、完走本数はこの1年で最も少ないという結果に。とくに旧作の履修が犠牲になりました。その反動で秋はたくさん見られそうです。やっぱり!アニメは!楽しい!

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AIの遺電子

 空想科学の技術や世界観の真新しさよりも、そこから派生する課題やジレンマが、現実を生きる我々にも共通する訓示として投げかけられるタイプの好みのSF。たんに産業ロボットや超高度AIといったあくまで我々とは別物の存在だけでなく、人間と対等な権利を持ったヒューマノイドの存在、これがその視点も合わせて、「わたしだったら」と考えさせられるのが二度おいしい。教育的かつ倫理的で終始安心して見ていられるのに、説教臭くなく機微に富んだエピソードの数々ですさまじいバランス感覚。本筋?であるところの須藤の母のコピー人格探しはまだこれからということで、ぜひとも2期が見たいところだ。

第8話「告白」

 恋とかいう大概の人間が発症するらしい病気になりたい、切実に。もしわたしがヒューマノイドで電脳をいじれるのだったら、人並みに恋して傷つけられたり泣かされたりするのだろうか。ヒューマノイドでは生殖活動につながらないから無駄だと無理に理由づけているサバちゃんの同性への恋愛感情が、どのみち人間であっても生殖活動につながらないのが二重に自己否定をしているようで哀しい。

 エピソードの興味深さはもちろん、ギャグセンスの高さも指折りの本作。正確無比に繰り返される二度言いに対し、こちらも繰り返し描かれる一杯のコーヒーによる心の余裕の補給は、必要なときほどされないという皮肉。「令和ミルクチョコレート」は人生で一番好きなパロディ名称かもしれない。本話中ではないが、作中セリフを改変した円盤CMもツボだった。

 

青のオーケストラ

 2クール目。秋音律子氏の出番が少なくなっていて悲しい。反面小桜ハル氏の萌えぶりが加速していた気がする。青野と佐伯の関係に時間を割いて丁寧に描いていた。第2期制作決定めでたい。

 最後の2話は3年生引退までの集大成といったところ。フルオーケストラの公演で締めるのはオーケストラ部の物語だからごく自然だが、テレビアニメとしてはやはり難しい題材であるという印象が残った。曲目を飛ばさずにやっていくと見ている分にも長いし、作画の体力ももたない。そのための工夫として、演奏者個人のエピソードとオーバーラップをさせていたのだが、これによりどうしても話が散らかってしまう。演奏のわかりやすさとしても、ソロあるいは少数の方が物語を付加して走らせやすい。演奏を魅せるという意味でも、こぼれ話を魅せるという意味でも、どっちつかずだったかなと。ブラスバンドという違いはあるが、作画パワーで突っ走ったユーフォってやっぱりバケモノだわ。

第15話「本音」

 第2クールで最も印象に残っている演奏が、今回の佐伯ソロ。ドボルザーク新世界より」の第二楽章好きだ。合わせでパートリーダーたちが一致団結したのを見学した後だから、余計に夕陽をバックに教室で独り立っての演奏が決まっている。演奏後の眼光の鋭さに惚れた。これからしばらく長い夜が続くという意味で、ストーリー上でも重要な一曲だった。

 

あやかしトライアングル

 万策尽きた冬からのリスタート組。王道少年漫画は大好物なのでこれも面白かった。これまでの名作と異なるのは、主人公が女の子として学校で過ごすがゆえに、メインヒロインも含めた女子グループでの活動と友情が描かれること。男女のいざこざの絡まない花鳥風月4人の親交は見ていて心地よいものであったし、これまで祓忍として孤高に修練を積んできた祭里の新たな人間的成長につながっている点も見逃せない。ニノ曲先輩や画楽といった脇役も良いキャラしていた。

 少なくとも規制の入ったテレビ放送版では、エロ要素はおまけというか、とくに夏の放送に替わって規制でより遊ぶようになってからはギャグとしての印象が強かった。むしろ執拗に隠されるために、かえって限られたパンツに希少価値が備わるという事態。深夜にやっているのだし、この作品でそれはちょっと違うんじゃないかなという気も。

第9話「“彼”との遭遇?」

 開幕の希少価値であるところのルーシーのパンツ。構図が美しい。草むら、ルーシー、林、鉄塔、空と、下から上へ突き抜ける奥行きを見ることができる。未知との遭遇を願ってめいっぱい手を伸ばす彼女には、あまりに高い空だ。この程度の仰角では、いかにスカート丈が短いといえど、カメラから距離のある彼女のパンツは本来見えない。これを描いてしまえるのが絵のすばらしいところである。控えめながらも視線を一点に吸い込み、差し色として緑の画面を引き締めている。

 

アンデッドガール・マーダーファルス

 美しい映像、軽妙なトーク、ただしいま一歩のめりこみきれなかった。笑劇(ファルス)だと言うわりには個々の事件は凄惨ですっきりしない。教授側や事件に絡む怪異も、怪異ならではの魅力やおぞましさがピンと来ないままだった。終始飄々としている主人公一行とは別に、視聴者と世界をつなげるキャラクターなり演出なりでもあれば良かったのだろうか。事件の被害者や犯人で印象に残っている人物がとくにいないのが、推理ものとしても弱いかなと。ホームズ、モリアーティー切り裂きジャック、ルパン、ファントムといった古典の人物を本筋のキャラクターとして借りている理由もいまのところわからない。

 一方で、鴉夜、津軽、静句のメイントリオは良い。黒沢さんはさすがの演技だし、津軽の底知れなさは八代さんあってこそだったと思う。小市さんもデレマスの晴役が披露されてから随分出世したものだと感慨深い。静句の出自もそのうち明かされるのだろう。

第1話「鬼殺し」

 口づけのラストシーンに至るまでがとくにすばらしい。鬼混じりである津軽の寿命を延ばす具体的な方法も、津軽の渡欧の誘いの返事も答えぬまま、鳥籠から出すよう静句に命じる鴉夜。しかし、この鳥籠から出るという行為一つがすでにそれらへの回答となっていることが、直後の問答でわかるのである。こうしたちょっとした叙述の工夫が、作品の質を高めているのだろう。映像としても重要で、それまで奇怪にしか映らなかった生首から、川面の逆光を受けて宙を舞う美しい黒髪に、思わず息をのんだ。

 

おかしな転生

 原作では児童向けの総ルビ版も出ているだけあって、骨子がしっかりしていて安心して見ていられるストーリーだった。勧善懲悪にくどさもあるが、このくらい後腐れなく進行してくれる方が毎週気楽に再生できて好みである。キャラクターも良い。子どもたちは元気で素直、傍にいるおとなたちも頼りになる。登場までじらされたヒロインもかわいい。個人的嗜好としては双子のお姉ちゃんの方だったらどんなお話だったろうとも思う。本渡楓さんといえば茶か金系で黒髪は合わないイメージだったが、防振りやら本作やらで、少しずつ固定観念もほぐれてきたかもしれない。

 主人公が多方面に優秀すぎること(とロリコンであること)にわざわざ説明は欲しないが、せっかくだからパティシエだったことをもっと前面に押し出して、他の転生ものとの差別化がはっきりしていればより目を引いたようにも思う。「お菓子の国をつくる」という野望はあっても、実際にやっていることは大差ないので。もっと言えば、タイトルどおりのお菓子成分がもっとほしかった。毎話本筋に絡めるのは難しいにしても、別パートでこぼれ話をやってくれるだけでもどうだっただろうか。

第9話「甘いか苦いか?新茶試飲会」

 抗争のある世界だからこそ、平和なべっこう飴、ボンカ飴作りパートがとても温かいね。他でもないお菓子作り中の主人公に美点を見出すところに、本作のヒロインたる穏やかで心優しいリコリス嬢の魅力が表れている。

 そんな彼女の笑顔がレーテシュおばさんによって壊される、たまらんね。少女はどんどん曇らせていこう。冒頭の「年上のスタイル抜群、お色気むんむんの美女」ってもしかしてお前のことだったのか。次話でボンカ飴を引合いに円満に終わるところまで、美しい一幕だった。

 

幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-

 女の子がかわいい作品には間違いない。本家とはアニメーターが変わっていてどうかと注目していたが、本作には本作の女の子のかわいさがちゃんとあった。ただ、その美点とシリアスパートがかみ合っていたとは思えず、ライラプスや異変絡みの軸となるストーリーは不満だった。

 キャラクターに借り物感があるのは、設定を大きく変えているスピンオフゆえしかたないことなのかな。一方で、各キャラの掘り下げをせずとも好感度が高いという利点?もあるし。

 パッとしない印象の要因としては、OPEDと挿入歌が最も大きいかもしれない。アイドルアニメにおいては、曲良ければすべて良しスタンスで見ているので。とにかく出てくる曲すべてが好きだったサンシャイン!!を思うと、そこはとても物足りなかった。

第7話「女子会ってなぁに?」

 女子会という名の合宿回。ずっとこんな話が見たかった。この作品は、萌えというよりかわいいという感想に落ち着く。参加メンバーの希望調査時に出てくる、各の平面柄の背景のアイキャッチがすばらしい。女子会中も終始かわいい画面が続く。チカとハナマルが次々と部屋を開けていくシーン、お菓子作り班分け後の「がんばルビィ!」と板チョコを堂々と食っているハナマル、すべてがかわいい。ハナマルも「未来ずら~」って言え。それからルビィちゃんのサイズ可変仕様は結局何だったんだよ。挿入歌「GIRLS!!」は次話の「Wonder sea breeze」と並んで好き。こっちも9人で歌っても良かったんじゃないかとは思う。

 

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う

 出オチだと完全に侮っていた。めちゃくちゃ面白かった。このアニメのおかげで道端の自販機に目が行き、外出が楽しくなったと言っても過言ではない。異世界アニメなのに、現実の知らない自販機の世界を教えてくれる、知識と機転を利かせた課題解決はわくわくするものだった。

 ラッミスという理解力に長けた最良のパートナーがいて、あくまで自販機としてのコミュニケーションに徹しているのがすばらしい。途中で手足が生えたり自由に発語したりするのではないかと気がかりだったが杞憂に終わった。この不自由さが駆動するドラマは唯一無二のものだった。この作品に「いつものスープ」というED曲を書き下ろしたの天才だと思う。

第4話「ハッコン、誘拐される」

 レギュレーション的にありなのとツッコみたくなる万能さを見せてくれたハッコンであるが、人間にとって容易なことが自販機ゆえにできないということも多くある。これは意思を持って生きるには大きなハンデであり、こと悪意ある他人の前では顕著となる。共に移動してくれるラッミスがいかにありがたい存在であるか身に染みるね。愛のアニメだ。

 仮にさらわれたまま助けも来ず、ヒュールミとも出会わなければ、ハッコンはどのような選択をしたのだろうね。共利共生と言うと聞こえは良いが、もう尊厳ある自販機生は送れないかもしれない。道具としては便利で有用というのは周囲の目線であって、人間として主体的に生きるにはあまりに弱くてもろい存在であるというギャップが浮かび上がる。

 「泣きじゃくる彼女を抱きしめる腕もないし、慰める口もない。けど、また会えてうれしいよ、ラッミス」という再会のモノローグがまた心にしみる。「ありがとうございました」の音声ですべては伝わらずとも、この関係が再びこの先も続くようになったことに大きな価値があるのだろう。

 

シュガーアップル・フェアリーテイル 第2クール

 1クール目の陰険な砂糖菓子業界にすっかりはまり、気になる引きでどうなることやら楽しみだった作品。ふたを開けてみたらペイジ工房は優しい世界だった。OPEDもとても温かい。

 それでもこの作品はどうしてもアンをいじめたいらしく、今期のボスとして立ちふさがったのが妖精ラファル。その戦闘能力の高さや見た目の美しさとは裏腹に、臆病で孤独な内面は惨めで不憫さすら覚えたので、もっと彼を掘り下げるエピソードを見たいところだ。

 魅力的な新キャラクターとして、ノアも忘れてはならない。石見舞菜香さん、ツンツンしたショタボイスをありがとう。今期アイコンとして描いた絵が我ながらショタ成分が皆無になってしまったのだが、元のアニメのまつ毛の長いキャラデザも、男物の服がなければ女の子にしか見えないよな。出番少なくてちょっと悲しい。

 卓越した表現力は健在で、アンの手掛ける砂糖菓子にはいつも驚かされる。強度が持たないという野暮なツッコミはさておき、相変わらずモチーフの見つけ方が巧みだ。オーケストラ音楽も引き続きすばらしかった。

第22話「妖精と人と」

 貫井柚佳さんの泣きの演技がとかくすごい。このシーンが見られただけでも、本作と出会えて良かったと心から思う。

 

呪術廻戦 懐玉・玉折

 公式の円盤情報によると渋谷事変が47話まであっていつ終わるんだよという感じなので、懐玉・玉折編(+閑話)までを夏アニメとして感想を書く。長編漫画におけるアニメ5話分であり、頂上決戦に絞った過去編なので、面白くて当然といえば当然。バトルアニメにおける強さは、その他いかなる要素と比べるまでもない魅力であると教えられる。わたしは食事の際にアニメを見るのだが、この作品のときはいつもの半分のペースでしか食べられない。それほどにアニメーションの情報が濃いのである。平穏パートも重要なのだろうが、古典的なギャグ調のデフォルメがやりすぎな印象も。なんぼあってもよいとされる萌えがノイズにすら感じられるのだよね。

 OPは今期断トツ。控えめなギターイントロの暗い画面からスカイブルーをバックにしたタイトルロゴへの画面転換は、瞬きの間に見逃すほどのシンプルなフェードなのだが、これがどうしてかっこいい。大挙する呪霊を前に余裕の表情を崩さない五条と夏油、陰でくつろぎながら威容を放つ甚爾がじつに絵になる。青空から斜陽に進んでいく時間、次のOPにもつながっているかのようだった。話題作のOPEDが、そろって一般(アニソン畑でない)アーティストで固められる現状はどうかと思うが、ちゃんと作品の匂いがするし、良いものは良いというほかなくて悔しい。

第27話「懐玉-参-」

 何においても五条と甚爾の会敵。六眼のこと、なんかよく見えて光ってかっこいい目くらいの認識しかなくてすまん。グロは苦手なのだが、天逆鉾でグサッ、ザザー、ザクザクッ、ザクッと血飛沫を上げてめった刺しするシーンは、あの五条悟に攻撃が通ったと興奮が優った。デカい蠅呪霊軍団の中で仁王立ちする甚爾に、絶望より憧憬を覚える。フィジカルこそ結局最強なんだよ、なあ、夏油。

 見せる順番ってほんとうに大事だなと思って、PVやCMで繰り返し聞いてきた夏油の「私達は最強なんだ」が、まさか裏で五条がやられた後のセリフだったとはね。この後の展開が予測でき、悲劇への心の準備ができることで、より夏油の挫折と闇落ちに共感しやすくなっているのかもしれない。学生夏油のデザインというか顔がとても好きで、ダサい髪型と悪趣味なピアス、美形とは言えない顔立ちなのに、なぜかかっこいい。CVが降板にならなくて良かった。本編にED曲被せて終わりかと思わせて、普通にもう一度EDやるの、優れた演出かはさておき斬新だね。

 

SYNDUALITY Noir

 結局最後まで何を描きたかったのかよくわからなかった。メカ、男のロマン、キャラクターといった要素に惹かれるものがなく、青山なぎささんが出ている以外わたし向けではないのかもしれない。青山なぎささんが出ているのでたぶん2期も見ます。

第7話「My dear…」

 Liella!キャストがついにスパスタ以外のアニメに出るということで視聴していたが、まさか演じるキャラで個人回、ソロビジュアル広告、CD発売までやるとは思わなかった。ちょい役をひっそりと楽しむくらいのつもりだったので、これはこれで乗り切れなかった感もある。

 ここまで本編と無関係の感想しか出てこなくて申し訳ないのだが、たとえば本話のメイガスと人間との関係みたいな世界観についてもなんともコメントしづらい。かわいくてエロくて有能なのだから大事にするのは当然で、カナタが異常者みたいな描かれ方されても困る。せめてメイガス側が主体となって、所詮どこまでもメイガスであるという摂理を破ろうと人間にアプローチする話なら、応援のしようもあるというのに。それはさておき、戦闘で急に歌いだすのは良かった。いつだって音楽は最強だから。

 

好きな子がめがねを忘れた

 今期で一番第2話を再生するまで時間を要した作品。若山詩音さんはいま最も好きな女性声優の一人であるにもかかわらず、そのくらい初回の印象が悪かった。肝心のヒロインのキャラデザ、これがまず苦手だ。これまで意識してこなかったが、毛量が多すぎるぼさぼさ頭は地雷かもしれない。作画がリッチになるショットで顕著で、まつ毛ぱっちりすぎる目と合わさってかわいいと思えなくなる。ヒロイン、染谷さんでいこう(死罪)。

 眼鏡を常用している身としては、ど近眼なのに眼鏡を忘れがち、予備があるくせに学校に置いておかないという設定も許せなかった。たんに頭が悪いというより、中学生にもなって生存能力の低さに大した反省も報いもなく生きていることに嫌悪を覚えてしまうのだろうか。好きで見ているアニメだからこそ、自分の気持ちをごまかしたくないので書かせてくれ。映像としてはひっきりなしに出てくるタイムラプスを煩わしく感じたが、先の2点と比べれば重要ではない。

 そうした個人的な難点があってなお完走できたので、それだけ魅力も大きかったといえる。最大は若山詩音さんの演技。ことばにならないうめき声がじつに良い。滑稽さと萌えのエッジを絶妙に渡っている。話数が進むにつれて印象が変わったのが小村くんで、彼の気持ち悪さと純粋さをほほえましく見るのが楽しみになっていった。

 EDも衝撃だった。大石さんの曲っぽいキャラソンだなと聴いていたら、唐突に歌うまおじさんの歌唱が1フレーズだけ挟まる。それからまたしばらく三重さんと小村くんの細い歌唱が続くものだから、先ほどのは小村くんが覚醒しただけだったのかと整理がつかないまま、次の「ぼぉや↑↑~け~たくら~いが~(超美声)」でやっぱりマサヨシじゃねーか!!

第6話「好きな子と新学期を迎えた」

 染谷さんが映るたびに、純愛としてより寝取られとしてのエピソードに期待してしまう。皆勤賞授与の待機列で三重さんの手を触る小村くんの反応が挿入さながらで可笑しいったらない。

 

スパイ教室 2nd season

 冬にあった1期よりシリアスな場面が増えて面食らったが、それはそれで面白かった。相変わらずスパイとしては奔放なチームと作戦、だがそこが良い。1期であまり見せ場のなかったキャラクターたちにバランスよく出番が与えられているのも上手だった。最終話の真面目トーンのタイトル回収はずるい。

第13話「MISSION 《忘我》Ⅰ」

 敵をだますにはまず味方からというのは使い古された文句であるが、この作品はそれをキャラクターの個性が意図せずやっている。今回の、クラウスの「対立を楽しめ。仲間とのズレがチームの鍵だ」という紅炉の受売りのティアへのアドバイスがまさにそれである。

 ミッション遂行のための一応の共通の表の作戦はあり、それは視聴者にも知らされるが、あくまで細かいその場での対応は個人の特殊能力やスタンドプレーに依存している。これがときに表の作戦に沿わない形で実行されて意外な方向に話を進め、結果的にチームを助けることになるというのがお決まりのパターン。これを各キャラクターが「極上だ」と大真面目にやっているのだから笑いを誘うのだ。

 ゆえに、失敗の許されないスパイものとしては、あまりに杜撰な作戦と精神性に問題のある構成員たちとして映るというだけの話である。(萌え)キャラクターを大事にするうえでどうしても避けられない全員生還エンドの繰り返しを、いかに退屈させずに魅せるか、それが良く練られている。

 

スプリガン(TV放送版)

 昨年のNetflix発の潤沢予算っぽいアニメ、のテレビ放送。原作はミリ知ら。SF、オカルト要素にいっさい興味がないので、話の内容は印象に残っていないが、作画がリッチで退屈もしなかった。アーマードマッスルスーツとオリハルコン製ナイフのステマアニメ。

第2話「炎蛇(後編)」

 シンプルに敵が一番かっこよかった。一族に伝わる風と炎と剣で世界を独裁したすぎるだろ。

 

(未)ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~

(完走次第追記)

 

七つの魔剣が支配する

 東京遠征中のアニメショップで会った初対面のオタクにおすすめした今期アニメ。

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 総合点の高い作品だが、まず主人公サイド6人のキャラクターが非常に魅力的。キャラデザが華美なわけでもなければ、混沌の魔法学園の新入生にして戦闘能力や身体能力が抜きん出ているわけでもなく、立ちはだかる試練に苦戦を強いられるのが常だ。しかし、いかなる逆境においても彼らは力を合わせ、互いを奮い立たせ合い、確かな意志を持って、その才能を芽吹かせていくのである。いわばこの6人の剣花の萌芽の瞬間に立ち会うことこそが、本作最大の魅力である。

 原画パワーだけに頼らない、雰囲気作りも見事だった。迷宮の劇伴は静かにその不気味さと深遠さを醸し出していたし、魔法に付物のエフェクトもほどよく抑えられていて、剣術とのバランスが取られていると感じた。

 わたしは、テレビアニメのOPには現実世界との切替のスイッチのようなものを望んでいて、その点も完璧だった。入りで一気に作品世界に引き込まれるし、アウトロの音ハメも厨二心をくすぐる。

 全15話と変則構成だったが、ラストバトルはずいぶん駆け足で、説明不足の消化不良感がある。復讐や魔剣といった本筋もまだまだこれからといった終わり方で、第2期といわず長く続いてほしい。

第4話「円形闘技場(コロシアム)」

 序盤ながら未熟なナナオの危うさと強さとが際立っていた回。シュガーアップルといい貫井柚佳さんはほんとうに演技派だ。モブばかりでなく感情豊かなヒロインをどんどん演じてほしい。オリバーやヒール役を被る生徒たちにしても、一貫して強さと弱さの両面が描かれるところが、人間味を感じられて好きだ。

 ガルダと申す化鳥のひとの迫力がすさまじい。4話で出ていいモンスターじゃないだろ。セルと3DCGの差が感じられなくて、見ていて気持ちが良い映像。最近のアニメは映像技術の高さに感服しだすときりがなくて困っちゃうね。安心のゴッドフレイ先輩たちが助っ人に来るでもなく、布切れのごとく切り裂かれていくモブどもに絶望しかないのだが、よくこれに勝ったわ。

 

ポケットモンスター(2023)

 ストーリー的にきりが悪いが第24話時点。主人公交代作の2クール目。春も面白かったが、夏に入ってからの名作っぷりがすごい。ダブル主人公であるリコとロイの成長が進み、さらに残りの御三家トレーナーのドットの絡みも増えて、物語にダイナミズムが生まれている。原作ゲームのパルデアやガラルのジムリーダー(だよね)やポケモンとのエピソードも楽しいし、ラブリーチャーミーな敵役であるエクスプローラーズとの戦闘もハラハラドキドキ、ペンダントと古のモンスターボールを巡る謎もテンポよく進むし、まさしく大冒険だ。アニメ作品として独立した面白さがあることを保証するので、テレビゲームや過去、現在のポケモンコンテンツにいっさい興味のない、深夜アニメ専門のひとたちにもおすすめする。

第21話「ひとりぼっちのミブリム」

 2クール目に入ってから、単話としての完成度が高すぎる回ばかりで、どれを選ぶか困った。同じ特別な2体目のゲット回として、ロイの第14話を泣く思いで切り、リコ回のこちらを選ばせてもらう。

 子どもたちの成長が目覚ましい。リコは自己評価が低いけれども、小屋でミブリムの不調を感じ取り、いち早くブレイブアサギ号に連れ帰るのは、博士ではなくリコである。皆の先頭を駆けている姿にも、もう驚かなくなったよね。

 船内で行き場を失ったミブリムを、リコが展望室で見つけるシーン。姿を確認するなり、近寄るでもなく、エレベーター越しに語りかけるリコがおだやかで優しくて、思わず涙する。ミブリム、おそらく進化系は冬のアニメで目にしたのだが、この種は完全に初見。とてもかわいいね。目隠れ(目無し)だが、シンプルな口と頭の形、頬に入るタッチ、足としっぽのたたずまいだけで愛らしさがよく伝わってくる。パーカーに突っ込ませるアイデアを出したスタッフにB2の感謝状を贈りたい。

 そうして別れ、ではなくゲットのシーン、再び大粒の涙。構想初期から決まっていたのかと思わせるほど、このふたりのショットがぴったりなのだよね。この出会いがさらにリコを成長させ、目指すトレーナー像の力強い決意を聞くことができる。すばらしい主人公だ。きまぐれなニャオハ先輩が新人をいびらないかと正直ひやひやしていたが、ここでは杞憂だった。彼女もまた、この旅で成長していることがわかる。

 

魔王学院の不適合者Ⅱ ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~ part1

 冬の宿題組。理屈を長々とことばで説明するのは重要ではないというと怒られるかもしれないが、さておき円満に終わったようで良かった。放送の延期も含め、萌えとギャグのないパートが続くと興味を維持するのが難しい。

第7話「ただ一振りの剣の如く」

 異種族、なんなら異種概念のラブロマンス。このとき涙花に愛情を注げなかったシンが、神さえにも恐怖や生存願望をもたらしたアノス様の力で、2000年の時を経て妻子を愛するうれし涙を流す。慈悲深きことよ。

 

政宗くんのリベンジR

 第1期が6年前って本当かよ。春のBSの再放送をスルーしたのでほとんど何も覚えていない状態での視聴。旧作を、ましてや視聴済みのものを追う余裕がない。CV. 大橋彩香の黒髪メインヒロインがもう一度見られることもうれしかったが、CMが懐かしすぎる。原作者のドローイングCM毎週楽しみにしていたわ、全部思い出した。「ワガママMIRROR HEART」はあまりにも名曲。原作は1期から間を置かず完結していたらしいのに、こうしてアニメも最後までやってくれてありがとう。

第3話「忘れたころにやってくる」

 小十郎きゅんや委員長のことはなんとなく記憶にあったのに、藤ノ宮寧子さんのことをきれいさっぱり忘れていたのが我ながら信じがたい。三森すずこボイスで適当なこと嘯いてたまに京都弁が出る知的で愛嬌のあるノーパンお嬢様が好きすぎる。昔とは好みが変わったのだろうか。リベンジなんて忘れて寧子さんときゃっきゃうふふしようぜ。

 

無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~

 春の再放送で作品を知って、圧倒的なアニメーションと世界観に、いやが上にも高まった期待の下迎えた第2期だったが、想像していたものとは違う方向だった。良く言えばエピソードの幅が広い。

 エリス・ボレアス・グレイラットは至高のヒロインだと信じて疑わないので、たとえルーデウスのErectile Dysfunctionが治ったとしても、わたしの失意の念は消えない。終始彼女への心残りがちらついていた。いや、新しく出てきた女の子たちもえっちでかわいかったけれども。その点黒髪ストレートロングの後ろ姿の女の子には希望を抱いていたのだが、思っていた子とは違ったね。

 ED(エンディング)の曲と映像がシルフィもといフィッツ先輩にぴったりですばらしい。サングラスの遮光度を自在に変えられるアニメという媒体よ。OPEDは毎話固定映像と曲の今回の方式の方が好き。

第6話「死にたくない」

 なんといってもルーデウスとシルフィもといフィッツ先輩が一緒に帰る放課後のシーン。好きなひとの前で当人のことであることを隠して当人をほめるの楽しいねえ。夕陽差す用水路の橋を降りて微笑むフィッツ先輩に風がそよぐ。その光景に抱く情念に、男も女も幼なじみもないのだと、わたしは思う。

 

ライアー・ライアー

 もっちりとした頬の形が、史上稀に見る好みのキャラデザだった。この作品の輪郭が際立って特徴的というわけでもなく見えるのに、絶妙にツボを突いてくるとしか言いようがない。あらためてキャラクターを眺めてみると、細い首、赤みの強い肌と薄い塗り、ヒロインズの多くに共通する下がり眉、やや垂れ目、ぼけっとした鼻と口、この辺が有機的にかみ合っているのかもしれない。作中の決闘については心底どうでもよくなっていったが、彩園寺更紗、姫路白雪、椎名紬たむのだれかしらが画面に映っている間は、とても幸せな気持ちで見られる作品だった。わたしは萌え一本のアニメは脱落してしまいがちなので、作画が怪しくなる中ほぼキャラデザだけで完走させたこの作品はほんとうにすごい。

第1話「王と嘘」

 3ヶ月ぶりに見たけどけっこう面白そうな作品ですね、「ライアー・ライアー」っていうんだ。決闘内容はすでに怪しさがあるが、タイマンでルールもアビリティもシンプルゆえにさほど気にならない。なにより彩園寺更紗がキャンキャン吠えて下着が透けてたいへんに萌えになる演出として最高とすらいえる。ジャジーな劇伴も好き。メインテーマは次話以降も何度もかかったが、決闘と映像の出来次第でもっとクールに感じられたのではないかと思う。

 

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- (2023)

 観柳邸での闘いが終わった第13話時点。第一に来る感想は「物足りない」である。小中時代にCS放送で旧アニメに級友とドハマりしていた身としては、25年以上経てリメイクされたわりにその思い出を超えていないという印象が残り続けている。もちろん、好きな作品なので楽しく見てはいるのだが、だからこそ厳しい目を向けてしまう。丁寧ではあるけれども、現代アニメとしては凡庸で、アニメ化ならではの突出して良い部分が思い浮かびにくい。

 剣心といえば流浪人と人斬りとで揺れ動く葛藤が魅力的な人物であり、演出として目のカットが多用される。しかし、新作は眼光の鋭さが足りていない。斉藤壮馬さんも好きな声優なのだが、ちょっとおとなしいように感じている。殺陣の映像も迫力不足というか、真面目すぎる。蒼紫様の流水の動きは大幅に手が加えられてかっこよかったけど、蒼紫様に強キャラのイメージがないために、1クール目のシナリオとしての盛り上がりに欠ける面もある。まあ比較対象が思い出の中の旧アニメなので、いまそれを見返したらそれはそれで演技・演出過剰と感じるのかもしれないが。一番好きな斎藤も、鈴置さん以外を受け入れられる気がしなくて、京都編も不安だ。それはそれとして、三条燕ちゃんはよ。

第1話「剣心・緋村抜刀斎」

 いや、どんな愚痴を並べてもね、昔の好きな作品を一から作り直して、皆と見る機会を与えてくれるというのはほんとうにありがたいことだよ。「剣は凶器 剣術は殺人術」から続く大好きなことばを一言一句漏らさずしゃべってくれるだけで感無量。流浪人もといホームレス無職の解像度が上がったいまだからか、じゃじゃ馬のイメージが強かった薫殿がすごく魅力的な人間に見えてびっくりした。

 

Lv1魔王とワンルーム勇者

 ギャグあり人情ありバトルありで面白かった。キャストがとんでもなく豪華で、元勇者パーティーの男3人である中村悠一さん松岡禎丞さん下野紘さんのだれが勇者役かクイズをしたら正解率3分の1になる。この3人が解散してなんやかんやあって別々の立場を取る話なわけだが、戦闘能力や精神力、信頼関係といった力の均衡に、キャスティングも寄与しているのが偉い。とりわけおかしいのは8人いる大臣のキャスティングで、公式ホームページにも載っていない大して出番のないキャラなのに、往年のスーパースターと名脇役みたいなメンツで、会話が入ってこなかった。

 一本道じゃないストーリーが良いね。元勇者パーティーの三すくみだけでなく、魔族、王国のお偉方といった勢力の思惑や利害関係が複雑に絡み合うことで、目指すべき未来の見えない緊張状態が続く。マックスの世捨て人のような諦念観に共感を誘う描き方をしたうえで、ここぞという場面で腹をくくるからこそ胸が熱くなるのだ。

第8話「決別」

 ギャグとシリアスのバランスが絶妙。料亭談議にて、忙しくカメラを切り替えて口角泡を飛ばす両者の迫力は見物。行きすぎた力は利用される。フレッドもされる側でありながら、マックスを引き入れようとするのだから合意が得られなくて当然。不器用な男だね、フレッド。一方のマックスの顔芸には、たんなるギャグとしての演出だけでなく、だれにも取り入れられないしたたかさを覚えた。

 

わたしの幸せな結婚

 女性向けかと思って油断していた。傑作。下が初回から3話通して見てのひとことで、その下が第7話のつぶやき。このタイトルから異能バトルでドンパチやるとだれが予想できるのか。

 映像が非常に美しく、中でもヒロインの美世の明るい表情に感動した。OPがわかりやすく、サビに入ってからの駆けだすシーン。デフォルメの利いた笑顔というより、薄い表情ながら生き生きとした希望を感じる顔をしている。美世というキャラクターをよく表現するとともに、言われるがままだった人生から主体性を獲得していくストーリーを予感させるものとなっている。

 キャラデザでいうと、女の子たちよりむしろ男性陣の華のあるイケメンっぷりが好み。見た目に加え、強さを決定づけるものが異能である。やっぱり男は強くてなんぼですよ。

 ストーリーの締め方もすばらしい。あくまで主人公は美世であることを示す構成だ。ただ守られるだけでない、自らの意志と力をもって、道を切り開く終幕。斎森家での死んでいるも同然の日々から、よく立ち直ったものだ。やっぱり女の子も強くてなんぼですよ。

第10話「夏の桜、そして過ち」

 今期一番興奮したバトルは、呪術でも無職転生でもなく、本作の久堂清霞と薄刃新の異能戦かもしれない。話し合いで平行線だから決闘するぞ理論大好き。話の持っていき方もそうだが、バトルシーンそのものにたぎる。ヒキ多めのカメラで軽快な身のこなしが映える。それにしても、対異能者特化型の新に対し、圧倒的火力と身体能力で追い詰めてみせる清霞様かっこよすぎる。新のスタイルもクレバーで、被弾して間合いを詰めさせたところからの美世の幻覚を使った不意打ちによる決着が、画としてもキャラクター性の演出としても100点満点。

 素直にすごすご帰宅した清霞へのお姉ちゃんのフォローも完璧。頼りになるひとだよ。濃密な一話だったが、ストーリー上は美世覚醒前の前座ともいえる。ここでは自信を巡る話し合いでも決闘でも蚊帳の外で、意志はあれど表に出すことはできない。出生の謎の開示と覚醒を予期させる次話への引きまで、じつに見事だった。

 

劇場版 呪術廻戦 0(2021秋)

 今期唯一の旧作の履修、ただし劇場版。テレビアニメ第2期に先んじて放送されていたのでその折に。すごすぎていまさらここで語ることがあるのか。祈本里香ちゃんと結婚したい。

 

総括

 続きものの安定感が光っていた一方で、琴線を掻き鳴らすような新作、新キャラは控えめなクールだった印象です。良かったエピソードは……あれとか……これとか、年末の10選がいまから楽しみです。

 もう少し旧作の履修をしたくて、なんなら録画も溜まっているのですが、どうにも秋アニメの層が厚すぎて、新作すら追いきれないかもしれません(厳しめに絞ってすでに23本が確定)。とりあえず夏の感想はこうして早く終わったので、次はアイコンにする子を見つけて描かねば。