虚用叢

見渡すかぎりうつろなくさむら

家を買う

 先日、家を買った。それからそこに引越して 1 ヶ月余りが経つが、住まいが変わっただけなのに毎日が新鮮で楽しい。大学進学にあたって大阪に来て、そのときにアパートを借りて以来の転居で、その学生アパートにはじつに 9 年住んだことになる。引越し自体は以前から考えていたことで、ただし、賃貸でなく家(と土地)を買ったのは、自分でもまさかと思っている。別段身の回りに何か変化があったわけではない。結婚や交際はもちろん交友関係は希薄、職場も変わらず週 3 勤務のままだ。引越しの元々の最大の目的は経済性だったのだが、正直それが些末に思えるほどに、いまは新しい暮らしに充実を覚えている。そこで、住宅の売買(お金)に関することは後日書くとして、ここでは住まいの変化に伴う生活の変化を思いつくままに記録しておこうと思う。

hibihinichi.hatenablog.com

 

寒い

 新居は築 50 年近い古い戸建だ。冒頭にも書いたとおり、週 3 勤務のまま社会人未満の収入も変わっていない。したがって、購入する家についても、これまで住んでいたアパートの家賃の月 5 万円並みのローンに収まることが条件になる。府内(北摂)でそれなりの住宅地域となると土地だけでほとんどそれだけの額となり、必然的に家の方はほとんど値段のつかない、年数のいった中古になる。そこからマンションか戸建かといった分岐がもう少しあるが、選択の顚末についてはここでは省く。

 一般に、木造住宅は SRC 造等のマンションより寒いといわれる。古い家も、新しい家より寒いといわれる。どちらも満足する我が家は、期待されるとおり寒かった。点検口から床下を覗いても、断熱材ひとつ見当たらないような家だ。

 ちょうど引越した週がやたら寒く、この辺りでは真冬でもあまり見ないような着雪まであった。暖房設備が皆無だったことがまた大問題で、親が置いて帰った西川のボーアふとんだけが友達だった。中古住宅、とくに戸建において何が一般的なのかは知らないが、撤去やリサイクル、あるいは輸送に手間と費用の掛かる古いエアコンなんて置いていってくれたら良いのにと思う。会員向けのジャパネットのカタログがポストに残っていたし、前の住人は下取り厨だったに違いない。とにかく引越してすぐは暖房と断熱のことしか考えられず、Wi-Fi の通っていない部屋でスマホを覗き込んでいた。

引越し後最初の出勤。室温 6 ℃だった。

 

エアコン設置

  1 台のエアコンが居間に設置されたのは、移り住んで 10 日目のことになる。

 カーテンすらまともに付けるお金がないので(カーテンレールくらい残しておけよ)、最優先事項とはいえ冷暖房費もなるべく抑えたい。最大出力と省エネ性能(≒電気代節約性能)以外はどうでもいいという基準で、最終的に価格に対するカタログスペックだけで選んだのが、富士通ゼネラルの AS-Z402M2W である。最新モデルと性能差はない(厳密には低速運転時だけあるかもしれない)トップクラスの省エネ性能、一つ型落ちの単相 200 V の 14 畳モデルで、本体価格のみ驚きの 10.6 万円。しかも手数料なしの 60 回分割払い、安すぎる。

www.xprice.co.jp

 思えばエアコン購入の機会は、賃貸暮らしではなかなかないことではないだろうか。こうして備え付けのエアコンのない家に住まなければ、家電量販店のポップが非常に見づらいことも、そもそもネットと比べて極めて割高であることも、知ることはなかっただろう。

 これまで家電にはとんと興味を持つ機会がなかったが、エアコンというのは比較が容易ですばらしい。流布している用語こそわかりにくいが、(暖/冷房)能力の何 kW というのが、交換できる熱量に比するものなのだろう。電気を食う悪魔のような存在でもあるため、国より省エネ基準なる評価方法が作られていて、これを見れば消費電力に対する冷暖房効率も一目瞭然だ。

 面白いことに、現在国内の有名エアコンメーカーのハイグレードモデルの省エネ性能は、およそ横並びのようだ(富士通ゼネラルもその一つ)。価格を決める大きな要素の一つがパワーとか最大出力とかと呼ばれるもので、(暖/冷房)能力の最大値であり、古い慣習で何畳用だとかいうのも同じものを指している。さらに、同じメーカーの同程度のパワーでありながら、省エネ性能のまるで違う商品展開というのを各社が行っていて、これがまた驚くほど(メーカー希望の)価格に影響する。ようするに、製品代が高くてかつランニングコストが安いか、その逆かというわけだ。作る側からしたら、ハイグレードもローグレードもそんなに製造コストが変わるものかと疑問だが、買い手側の問題なのだろう。

 ネットの型落ち製品に限れば、ハイグレードも比較的安価で買えることがわかったため、結局はそこに落ち着いた。メーカーにこだわりはなく、たまたま希望スペックで一番安かったのが nocria だった。 1 階には居間の他にキッチン、 2 階には洋室和室で全 4 部屋あるのだが、少なくとも当面はこの 1 台で夏も冬も乗り切るつもりだ。もう一つの有力な案として、小さめのを複数台というのも当然考えた。これなら、長時間使用する部屋、主に寝る時とそれ以外とで、局所的に空調を使える。ただ、工事費は台数分掛かるし、移動した後の部屋の熱量はどちらにせよもったいなく思えて、ひとりで複数台使って生活するイメージがいまいち浮かばなかった。冬はそれこそ開始 1 週間で寝具次第で睡眠中は快適に過ごせるとわかったし、暑さの方は後で紹介するハンモックで何とかならないかと問題を先送りしている。いまのところはちょうどよい気温が続いていて、はたして今回の選択がベストだったのか検討する機会はない。

 すでに後悔というか疑問があるとすれば、 1 台だけ置くにしても大きすぎたのではないかということ。いうほど扉を全開にして全部屋を暖めたいのか、そもそも暖まるのか。スカスカの家とはいえ 6 畳の居間だけならオーバースペックで、何しろデカいので壁への負担が心配。室外機もクソデカくて、くらしのマーケットで頼んだ設置業者も大変そうだった。電圧切替工事を追加してでも単相 200 V にしたのは、一般に 100 V に比べ変換効率が良くなるというのと、将来的にもし関西圏から出た場合に、電力会社との契約アンペア数を下げられて、経済的だと考えたため。ちなみに、関西電力は基本料金をアンペア数で決めるシステムはなく、一度に何アンペア使ってもブレーカーは落ちない。しかも、その他どの電力会社圏より大概安くなる。大阪は良いぞ。引越しにあたり、ずさんだったライフライン回りの契約を一新したのだが、電気はオクトパスエナジーといういわゆる新電力にした。スマートメーターにより半日後には使用電力量を確認でき、それだけでも娯楽性がある。紹介割引サービスを行っており、もし下記のリンクから契約すれば、わたしにも 5000 円( 6/12 までは 10000 円)のキャッシュバックがある。

octopusenergy.co.jp

前日の電気使用量もすぐに調べられる。

 

ネット

 毎日パソコンを開いている全身インターネット人間の皆さんへ、とにかくネット回線の工事だけは早めに手続きした方が良い。最低でも引越し日の 1 ヶ月前には始めること。わたしは NURO の光回線を契約したが、工事は 2 回に分けての実施だった。 1 回目は宅内工事と呼ばれるいわば下準備で、外壁へのキャビネットの設置、そこから屋内へのケーブルの引き込みおよびルーターの設置のみを行う。派遣される工事士は 1 人で、これは申し込みから 4 日でできた。大変なのが 2 回目の宅外工事で、電柱から光ケーブルを先のキャビネットまで引き込む。 2 時間ほどで順調に終わったとはいえ、作業員 4 人、車 2 台の、交通規制も含めた大掛かりな工事だった。これだけの工事費を実質無料と謳うキャッシュバックによる料金システムは、必要悪とはいえ歪で気持ちが良いものではない。それはさておきこちらの工事は申し込みから最短の日付でも 3 週間以上先しか空いておらず、わたしのように暇でなければ工事までもっと期間を要するだろう(どちらも立会いが必要)。なお、これはあくまで既存の回線設備のない戸建における新規工事に限った話である。

 わたしは愚かなことに申し込みが遅れたため、 2 週間近く Wi-Fi のない家で生活をしなければならなかった。じつは NURO には工事完了までの期間、工事不要のポケット Wi-Fi の貸出しがあるのだが、 2200 円が惜しくて利用しなかった。わたしの恥ずかしい秘密の一つに、いまだに携帯電話料金を学生時代のまま父親が家族割でまとめて払っているというものがある。したがってこちらでキャリアや料金プランを変更できない(する必要がない)のだが、現在のプランでは、通信量は基本 1 GB、そこからオーバーすると 2 GB ずつ使用可能枠が自動で追加され、最大で 7 GB/月の使用が可能となる。普段は 300 MB/月もいかないし、月末の 10 日間くらい楽勝だろうと思っていたのだが。エアコンを調べているだけで突破してしまった。当月に遠征に行っていて、多少消費していたのもあるが、それにしても、普段からネットサーフィンだけでいかに通信をしていたかを実感した。

 エアコン設置に続きネットが繋がって、ようやく自宅でまともな生活ができるようになった。身に染みて理解したのは、ネットを絶たれることは知ることを阻まれることに等しいということである。引越しで多くの関心が住環境の向上に向いているのだが、それにはネットの情報や買い物が不可欠である。情報獲得の機会が奪われれば、行動意欲すら失うことになる。トイレの水圧が弱いと不満を抱いても、製品を調べることもできず、一般的な改善方法もわからない。これが一昔前なら、メーカーや修理業者に電話で問い合わせるとか、近所や知合いに相談するとか、何も前情報のないまま現物をいじってみるとかしたのかもしれない。しかし、いまやネットには答えがあるのだ。自分だけで調べて、誰かの答えを頼りに、自分だけで解決する。もはやわたしは、この作法から逃れられないようだ。無制限であるということも肝要で、何かちょっとした調べものをするたびに、お金を取られているような(実際通信は有料だが)、与えられた情報獲得の容量を消耗しているような感覚は、とても健全ではない。

 通信速度については、アパートだった旧居と実感できる違いはない。旧居では SoftBank 光を 5 年余り使っていたが、安定して 300 Mbps 以上出ていたし、不都合を感じたことはなかったんだよな。ゲームはしないし(戒め)、スマホはいまだに iPhone 7 だし、PC は 9 年物のノートだし、このままだと回線速度がボトルネックになる日は来ないだろう。それはそれとして、有線で 1 Gbps 以上出るというのは気持ちが良いものだ。

 

アニメ

 新居にはテレビがない。いや、旧居から持ってきたテレビ自体はあるが、テレビ放送を見る設備がない。アンテナがないのだ。前住人せこすぎるぜ。ただ、これは悪いことばかりではなくて、正々堂々と NHK 受信料の支払い義務を手放すことができる。わたしは元々テレビはアニメと野球以外はほとんど NHK しか見ておらず、面白い番組も多く、お金を払うこともやぶさかではないのだが、払わなくてよいとなればやはりそれはうれしい、高いし。受信契約をしたまま NHKプラスを利用することもできるが、それならニュースこそないがより割安で古い番組も見られる NHKオンデマンドの契約をした方が賢明だろう。また、アンテナ以外にも光テレビやケーブルテレビといった視聴方法もあるが、コストの面から導入を見送った。

 さて、そうはいってもテレビがなくなったことによる生活の変化は大きい。アニメが見られないのはとても寂しいので、このたび初めて動画のストリーミングサービスを契約することにした。選んだのは DMM TV。月額料金が同じで、よく似たサービスに dアニメストアがあるが、自分にとってここに明確に負けている点として認識しているのは、ラブライブ!シリーズのライブ映像の充実度くらいだろうか。たとえば、Liella! の 1st ライブは dアニメにはあるが、DMM にはない。ラブライブに限らずオタクライブは dアニメの方がたくさんありそう。テレビ CM に関しては、雨宮天さんの出演している DMM TV の圧勝だと思う。併用しているわけではないので、細かい UI の使い勝手といった違いはわからない。

 連動している外部サービスを挙げると、 DMM の方はアダルトサイトの FANZA のうちの FANZA TV を追加料金なしで利用できる。わたしは以前ブログで書いたようにほとんど自慰をしなくなったのだが、無料で合法的に見られるならと、このたび 3 回利用した。これはわたしにとってはイレギュラーな事態だが、すでにもう飽きて利用しないような気がしている。追加料金なしで見られる作品は少なく、狭い好みを満足するものがなかったことが大きい。

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 余談が長くなったが、こうしてテレビ録画派から完全配信派に鞍替えした。顕著な変化として、見られる本数は増えると思う。録画作業に伴う、番組表とのにらめっこが減るからだ。 録画容量も気にせず、 1 期を見ていないからと、話題作の 2 期を諦めることもない。劇場版についても、テレビ放送を待つより圧倒的に視聴機会を得られる。CM が無いのも大きい。ただ、これはマイナスでもあって、円盤や主題歌、メディアミックスの CM を見るのも、テレビでアニメを見る楽しみの一つだったのだよな。

 独占配信に対する憎悪も共感できるようになった。今期でいうと、Disney+ 独占の「戦隊大失格」の視聴は諦めている(珍しくも昔原作を読んでつまらなかった記憶もあるし)。ABEMA 独占の「ささ恋」と「まどめ」は良さげだったので ABEMA で見ている。 1 週間の無料期間を逃さないように気を付けなければならない。ところで、なんで DMM TV の独占作品があれなの。

 放送ならぬ配信スケジュールについても疎くなった。実況民とまでいかずとも、最速放送から間もなく感想を共有したいなら、やはりテレビ放送、もっといえば MX 民になるほかないのだろう。

 画質の変化については、一時停止して見比べでもしない限り、まったく気にならない。元々地上波と BS の画質差もわからなかったくらいだし、たぶん DMM のフル HD を生かせていない。視聴環境としては、PC は常時起動(スリープ)でプラットフォームを常駐させておき、他に使い道を失った 32 インチの 9 年物のテレビを常時 HDMI 接続、外部ディスプレイのみ表示する事前の設定により、テレビのスイッチを入れたらすぐにテレビをメインモニターとして使えるようにしてある。そのため、テレビの録画視聴からほぼ感覚に変化はない。むしろ、レコーダーの起動分、より早く再生できるようになった。やはり、ただアニメ本編を見るという点においては、有料配信サービスはテレビ放送およびその録画に優ると思う。

そういえば簡単にキャプが撮れる環境になったのに全然撮っていない。

 また、春という季節もあってか、引越しの経験がタイムリーにアニメとリンクすることが何度かあった。間取り片手に物件探しをするルーデウス、照明のない部屋の寂しさや古い家の引き戸の固さに文句を垂れる井芹仁菜。アニメが人生に影響を与えてくれることもあるし、積んだ人生経験はアニメをより楽しませてもくれる。

 テレビのアニメ以外の要素について。ニュースを見られなくなったことは大きい。新聞は 1 年前に解約している。職場で常時点いているテレビがなければ、ほんとうに浮世離れしてしまいそう。かといってわざわざネットニュースを漁るでもないので、いまのわたしには関心がないというか、なくても困らないものなのだろう。野球や相撲も見ようと思わなければ見られなくなったが、その分の時間をアニメに充てられるようになったと思えば、生活実態はさほど変わらない。むしろスポーツは、プロを見るより素人として自分でやった方が、いろいろな面で良い。

 

広い

 ここまで書いて、寒い(暑い)はまだしも、ネットの変更とアニメのストリーミングは家と直接関係ないんじゃないかと思えてきた。ただ、次こそはシンプルだ。家が、居住空間が、広くなった。

 新居は、小さい家の多い都心のベッドタウンとしても、戸建の中では小さい部類だ。それでも 6 畳以上の部屋が 4 つあるわけで、 20 平米もない 1 K の以前のアパートと比べれば、生活スペースは 4 倍だ。これがとても良い。独居だと持て余すかもしれないという懸念は杞憂に終わった。

 あまりに当たり前のことをつらつらと述べることになるかもしれない。家が広いこと、部屋が複数あることの最大のメリットとして、暮らしにおける属性の異なる場面を、部屋ごとに振り分ける余裕が生まれることを挙げたい。寝室と居間ということばが存在するように、寝る場所と起きて作業する場所が分離されることは、伝統的な生き方の一つである。それが 1 K のアパートでは、寝るのもテレビを見るのも食事をするのもパソコンを触るのも同じ空間だった。なんならかつての実家暮らしでも、ベッドとデスクは同じ子ども部屋として詰め込まれていたのだ。今日、わたしは初めて真の意味で寝室を手に入れた。ベッドが置いてあると作業に集中できないとか、食べ物の臭いが残っていると安眠できないとかいうつもりは毛頭ないが、いまの暮らしはとても贅沢だと思う。

 家にそれなりの広さがあれば、家の中だけで歩くこともできる。ピアノで小休憩を取りたいとき、アニメや音楽で感動があふれたとき、その場でぐるぐる回るよりもある程度まっすぐ歩けるスペースがある方が落ち着ける。階段の存在はしばしば平屋でない戸建のデメリットとして語られるが、洗濯や着替えだけでちょっとした運動ができるというのは、引きこもりがちな家大好き人間にはむしろちょうどよいのではないかと思う。

 

 家の購入を通じて、両親との関係はかなり改善した。大学院を修了後、無職でふらふら、パートでふらふらしていた後ろめたさで、親および親族とは疎遠になっていた。しかし、黙って家を買うわけにもいかず、また、フルローンが下りずに自己資金が大きく足りないというのっぴきならない事情もあり、帰省も数年ぶりにして話をした。正直、ばかげた話だとして聞き入れられないことを危惧していたが、意外にも反応は好意的だった。結婚ははなから期待されていないだろうし、まともな食事をして生きているのかも懐疑的だったところから、少なくとも家の購入を検討するような生活をしているのだと、安心したのかもしれない。

 金額が金額だけに、納得してもらうまでにそれなりの時間は要したが、最終的に無利子でお金を借りて、頭金に充てることができた。ちなみに、家を買うなら受けられる援助は素直に受けた方が得。住宅取得時の贈与は一般住宅でも 500 万円まで非課税になる(我が家は旧耐震のため適用外、だからもらうでなく借りたというのもある)。贈与税相続税はアホみたいに高く、いずれもらう前提なら、これは円満に贈与を受ける口実になる。親と子はあくまで他人主義のわたしは、贈与に懐疑的な立場だが、昨今のやれ景気がどうの株がどうのの時代次第なままならなさを思うと、持っている世代が持っていない世代に資産をあげることは必要なことなのかもしれない。

 売買契約が済んで以降は、さらに親の軟化が進んだように思う。引越し作業の手伝いや追加の生活資金の援助まで受けた。家の購入を知人に話してもおめでとうと祝福されることはほとんどないが、親にしてみれば喜ばしいことなのかもしれない。ありがたいことだ。

 

挨拶回り

 近所への挨拶回りはした方が良い、と思う。世間からすれば、若い独身の男が古い戸建を買って住むのは異常なことだ。スタートはマイナスであると自覚するべき。変わり者であることは否定できずとも、挨拶する程度の良識や気質を持ち合わせていることはアピールしておくのが得策である。一度でも顔を見せるだけで、警戒は大きく緩む。これは当人が善人か悪人か、あるいはどちらに見えるかとは関係がない。慣例に従い、向こう三軒両隣に地元の銘菓を持って簡単な挨拶をした。こちらとしても、周囲にどんな人間が住んでいるのかを知っておくことは安心に繋がる。

 

物欲と工夫

 家が広くてスペースが空いていると、物を買いたくなってしまうのかもしれない。あるいは、引越しに伴う避けられない出費に金銭感覚が麻痺したのかもしれない。かつてない物欲にとらわれている。

 なにも悪いことばかりではない。以前のわたしは、生活を改善するために、お金や物という手段を用いることを忌避していた。それが無職の、週 3 パートの意地であり矜持であった。現在はというと、多少投資的思考をするようになったかもしれない。家の購入がまさにそうだからだろうか。物の購入は、いわば金銭と物品の交換だ。所有している物には、大なり小なり金銭的価値が残っていて、売ればお金に戻るかもしれないし、売らなくても自分が必要として使える限りは、新しく買い直す分のお金を浮かせていることになる。損か得かでいえば、株や都心のマンションを買う方が賢明なのかもしれないが、将来のお金を増やすことより、いますぐの生活の向上にわたしの関心は向いている。

 ただ、貯金を崩すにしてもお金に余裕があるわけではないので、慎重に、破産しない程度に、貧乏性を忘れることなく、安く工夫で乗り切る。これを新しいわたしとしたい。

 

ママチャリ

 ここからは買って良かったものブログみたいになる。家と関係がないようでいて、あったりやっぱりなかったりするかもしれないが、好きに書く。すでにトピックが散らかっていて、記事を分けるべきかもしれないが、続けて書く。

 2 年前に盗まれて以降自転車のない生活を送っていたが、早く買っておけば良かったものの筆頭。引越しで職場が徒歩 1 時間になり、スーパーも遠くなったため、購入が必至に。弊社はなぜか自転車通勤にも通勤手当が出るため(同経路でも徒歩だと出ない)、金銭的にもさっさと買うべきだったもの。

www.asahicycle.co.jp

 ハブダイナモライト(重要)、リアローラーブレーキ(重要)、フロントキャリパーブレーキシティサイクルなら仕方ない)、外装 6 段変速(内装 3 段の方が好きだが許容範囲、大ギア小さく不満)、ほぼストレートバーハンドル(重要)、そこそこデカい前かご(重要)、荷台(どっちでもいい)、両立スタンド(重要)、カラーリングは街乗り感があってなかなか良い。ほんとうはハンドルをもっと下げて乗りたいのだが、ステムは下の写真の高さでぎりぎりらしい。ステムを換えるにしても前かごが邪魔、ブルホーンやドロップ化はちょっとハードルが高くて現状。

 空気入れ(そこそこ良いやつ)、ヘルメット(CE 規格認定の安物)と合わせて 44880 円。ここから地域通貨のポイントと市のヘルメット助成金で 3750 円還元されている。少し高くなってしまったが、ママチャリでもそれなりのスペックを求めると相応の出費かなと。

愛車 5 号。

 クロスバイクも検討したが、雨の日もがりがり乗りたいし、価格どうこうよりも、通勤や買い物に必要な性能や頑丈さと趣味性の中庸を取るのが難しく見送った。買うなら趣味に特化させた 2 台目が欲しく、その場合は NJS の固定ギアかなと思っている。春の競輪アニメははまらないかもしれないが、自転車欲の方はモリモリクロモリで抑えるのに苦労している。

 

ハンモック

 元々ベッドでの睡眠に退屈しており欲しかったもの。賃貸時は広さの関係で導入できなかった。ベッドはベッドで引出しを収納として使っていたし、冬場にハンモックで寝るのには不安もあり、撤去するわけにはいかなかった。家が広くなったことで念願の購入に至った。

 選び方としては、先人の教えに従い、 300 cm のものを。布付きで耐荷重があって(軋みが少なそう)リーズナブルなものとして、おそらく引用元と同じ Amazon ベーシックのものに落ち着いた。 11611 円。

celeryin.serorin.com

 寝るのが楽しいと思ったのは初めてかもしれない。ハンモックを置けるようになっただけでも、引越した甲斐がある。今後の狙いとして、熱帯夜への対抗手段として期待している。すでに暖かい日は 2 階の寝室は 25 度近くなっているのだが、まったく寝苦しくない。むしろ通気性が良すぎて風の中で寝ているようなものなので、 20 度でも肌寒く、寝間着の上に厚手のジャージを着て寝ている。それでも足元が冷えるので、寒さの方の対策を何か追加したい。

 

電動爪切り

 これもずっと欲しかったもの。主に手の爪の方で、握力を使う競技をしており、そのためには爪を伸ばしたいし、他にも爪を切りすぎないメリットは多い。一方で、ピアノを弾く際には爪がカツカツ当たらないよう短くしたい。この両方を満足するちょうどよい長さを保ちたいのだが、普通の爪切りとやすりでまめに手入れするのは面倒だった。

 通販サイトの Temu で 930 円。Amazon楽天だと同じものが 3500 円くらいする。Temu がおかしいだけで、ちゃんと 3500 円の仕事をしている。こういった小型家電に、日本製の出る幕はなくなって久しい。巻き爪なので小指や薬指は少し苦労するが、軽快に切れる(削れる)。多少の削り粉は出るが、むしろ普通の爪切りで爪が飛び散るのに比べると、片付けはずっと簡単。時間の短縮にはさほどならないが、なによりきれいに長さをそろえられるようになった。バッテリーや刃の消耗が気になるところだが、この価格なら 1 年ももてば大満足できる。平面のやすり部分はほとんど使っていない。また、足の爪は厚くて硬すぎるのかなかなか切れない。普通の爪切りを使っている。

電動爪切り。

 

内窓

 暑さ寒さを懸念しているのは冒頭から繰り返しているとおりで、その対策として内窓に高い費用対効果を期待している。重要なのが補助金だ。先進的窓リノベ2024事業という施策があり、一定の断熱効果を上げる窓と玄関ドアのリフォームに多額の補助金が出る。特に内窓(二重窓)の設置は還元率も断熱効果も高い。昨年に続き 2 回目らしく、やや還元率は下がったとも聞く。それでも、持家なら絶対にすぐやるべき。行政が出すお金にはアンテナを常に張るべき。話が脱線するが、お金を理由に結婚や育児を断念するのは早計ではないかと思う。

window-renovation2024.env.go.jp

 現在は依頼した複数の業者の現地調査が終わり、各社の見積が出そろうのを待っているところだ。最大で大小 11 枚の窓の内窓工事を予定している。その場合の補助金額が 477000 円。現状出ている見積で最安のところが 644890 円。もしここで追加費用がなければ差引き 17 万円、 1 枚当たり 1.5 万円でそれなりに立派な内窓を付けられる。DIY が泣きたくなっちゃうね。断熱というのは建物全体で考えなければならないため、あまり窓だけ上等にしても効果は限定的だろうが、それでもこの価格は破格だ。建物価値も上がる。

 防音にも期待している。窓が多くて日当たりが良いといえば否定はしないが、その分暑さ寒さの他に雨風の音もうるさい。通り抜けのない道路なのでひとや車の音は静かなものだが、反対にこちらが出す音をより気にしなくて済むというのも魅力。アパート時代イヤホンで弾いていたピアノも、日中は自由に音出しするようになってより楽しくなった。あとは大きな声で歌いたいのだが、一重窓のいまはまだ少し気を遣っている。

 リフォームの依頼は当然初めてで、手探りだ。一般に、リフォーム会社やホームセンターに頼むよりも、工務店や大工に直接依頼する方が中間コストを抑えて良い仕事が受けられるとされる。しかし、内窓についてはそうとも言えないかもしれない。まだ道半ばでありかつこの先対照実験をすることも叶わないが、現状の業者選びの所感を書いておく。

 絶対に欠くことのできない点として、上記の補助金に対応していること。今回の補助金は、申請を出して認可を受けた業者による取付が条件で、そもそも業者が対応していなければ補助金は下りない。補助金で競争の激しい窓リフォームにおいて、昨年から同様の施策があったにもかかわらず対応していないような業者は、はなから問題外だ。

 ネットに対応していることも重要。古式ゆかしきホームページでも、リフォーム仲介プラットフォームの登録でも、大手ブログサービスでも、SNS でも何でもよい。問い合わせや事業内容を確認する窓口がネット上にあることが重要。先の補助金対応かも調べられるし、いまの時代にネットなしでまともに競争できているような業者があるとは思えない。

 これらを前提として、少なくとも今回はだめ(そう)だったやつ。ホームプロ経由の業者。ホームプロというのは大手のリフォーム紹介サイト。顧客が匿名でリフォームを募集、登録している業者がそれを見て手を挙げ、マッチングするというもの。

www.homepro.jp

 今回は総合リフォーム会社 2 社、専門不明の工務店 2 社からメッセージが来た。うち総合リフォーム業者 1 社を除く 3 社に現地調査と見積を依頼した。 1 社蹴ったのは、立会いの時間と手間を惜しんでのこと。社会勉強として大変な娯楽性があるが、普通に働いているひとなら 3 社も相見積すればそれだけで疲弊すると思う。

 総合リフォーム会社、A 社の場合。現地調査に来たのは二級建築士等の資格を持つ営業部長。建物を見る目は確かな様子だった。しかし、寸法の計測は簡易的で、あくまでゆがみや隙間を補正する部材等をまったく考慮しない、簡易的な材料と工賃の見積をしただけだった。どうやら、ここから依頼を進めて初めて実際の施工業者による見積をするらしい。無駄が多い。仕事だけ取って自分たちの手間は省き、あとは下請けに丸投げといった雰囲気。(簡易)見積 94 万、高い。却下。

 工務店、B 社。現地調査員 1 名、保有資格は二級建築士、インテリアコーディネーター等。ゆがみのある古い木造戸建を見慣れているようには見えなかった。一見して気付いていないのか、あるいは気付かないふりをしているのか不明だが、窓枠のゆがみや傾きを気にする様子もなく、簡易的に寸法を取っていく。メジャーの扱いも下手で、安物っぽい。エリートコースを進んできた人間で、現場の経験は少ないと邪推した。今回のような自由度の低いリフォームでは、真価が見られないのかもしれない。見積 73 万、安め。しかしずさんな調査でいくら追加費用が取られるのかわからないし、隙間だらけの工事になるかもしれない。却下。

 工務店、C 社。現地調査員 1 名、名刺には営業とだけあり、資格の記載なし。建物の専門家には見えなかった。こちらの測定も簡易的。 89.3 万、高い。却下。

 以上、ホームプロ経由はいずれも外れだった。現地調査時間はいずれも 30 分足らずで、とても正確な施工をしてもらえるイメージが浮かばなかった。

 これらとは別に、大手ホームセンター 2 社にも依頼。 D 社は近所の店で直接申し込み、E 社はネットで申し込み。この 2 つは所感が似ていて、どちらも優良そうである。

 現地調査。D 社は 1 名、E 社は 2 名。下請けとの直接交渉を防止するためか、名刺はいずれも出されなかった(聞けば教えてくれたかもしれないが)。測定は丁寧で、必ず縦横それぞれ 3 ヶ所ずつ長さを測っていた。道具もしっかりしたもの、アナログメジャーとレーザーを併用、水平器も当然のように使用していた。これが普通だよな。作業員 2 名の E 社はとくに丁寧で、ここだけレーザー墨出し器を使っていて、対角まで測定、その場で検算をしていた。聞けば、サッシメーカーである LIXIL 直属の施工業者として派遣されているため、施工にあたって隙間が何ミリ以内であるといった細かい決まりがあるらしい。D 社は 1.5 時間、E 社は 1 時間ほど測定に時間をかけていた。D 社の見積は 66.8 万円、安い。きちんとゆがみの補正費も材工共で含まれている。ただし、ここにはある 1 ヶ所施工が難しいと断られた。E 社は調査や見積に時間がかかっているのがネックで、まだ見積が出ていない。ただ、ネットでの簡易見積によれば D 社と似たようなものになると思う。

  6 社目となる最後が窓とドアのリフォーム専門を謳う工務店 F 社。ここも良さげで、冒頭の最安の見積はここ。現地調査員 1 名、名刺は名前のみで役職すら記載なし。丁寧な調査で 2 時間弱。ただ、隙間部材やゆがみに関することは何も言われず、見積にも記載がないので、あらためて問い合わせる予定。

 さて、このように有力 3 社のうちホームセンターが 2 社と、自分で依頼をしておいてなんだが意外な結果となった。推測だが、価格と品質には大量発注と仕入れが関係しているのではないだろうか。そもそも内窓の設置というのは、リフォームとしてはおそらく簡単な部類である。あくまでリーズナブルで施工精度をさほど要求せず、大量生産をしている LIXILYKK の商品の話だが、ゆがみがなければ素人でも寸法を測って発注、取付が可能だ。デザインや提案にかかる費用はほぼなく、工事に割かれる人員や時間も極めて少ない。するとどこで価格競争するかというと、仕入れである。優れた仕入れルートを持っているところが、よく出てくる本体価格 5 割引きといったインチキ商法を先導しているのだろう。また、工事が簡単でどこの業者でも引き受けているというのもポイント。複数の施工業者を下請けに、広告をばらまいて大量の受注を可能にするホームセンターのようなところの方が、スケールメリットで工賃単価を下げても利益が得られ、当然仕入れ競争にも有利になるだろう。結果的に、中間マージンを出してなお、安くなるのではないか。施工精度については疑問が残るが、好き放題やって高い利益率を出す工務店ではなく、サッシメーカーの監視の下一定の基準で施工する業者をうまく見定める必要があるのだろう。

 

物干しロープ

 気の利く賃貸ならあるもの、それは室内物干し。旧居には吊下げ式の物干し架けが備えついており、そういう細かいところは家賃に見合っていたんだよな。当然新居にはなかったので、部屋干しをどうするか。吊下げ式や壁打ち式は場所を取らないが、少し高いし古い家なので天井や壁へのダメージが心配。建物と独立した物干し台を置くだけのスペースはあるが、そうはいっても邪魔だし干せる量も少なく割高に感じる。そんなときに見つけた商品、ニトリの穴あき洗濯ロープ。ニトリは材質が安っぽくて見た目と機能性だけの商品も多いと思っているが、たまにこういった代えがたいアイデア商品を出してくるのだよな。

www.nitori-net.jp

 ねじで固定するタイプのスチールの小さな L 字フックを買い、一端をこれに、もう一端を備え付けのクローゼットの竿に引掛けて、しめて 700 円足らずで場所も取らない、たくさん干せる物干し場を作れてしまった。

 洗濯関連でもう一つ、洗濯ホースに取付けてナノバブルを発生させるといううさんくさい商品を買った。効果のほどは不明。元々は前住人の残したジャパネットのカタログにあった類似品に興味を持ち、ネットでその理論と効果のほどを調べていた。この手のミクロナノ商法には懐疑的だが、販売元のブログが面白かったので購入を決意。文章を買ったといってもよい。直販ショップだとその場でクーポンが使えて Amazon楽天よりお得。 3184 円。

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トイレ

 新居で困ったことの一つが、トイレの水圧の弱さ。わたしは並外れた排便量を誇っており、新居の節水トイレでは必ず 2 回、時間を置いて流さないと流れ切らなかった。結果的にそれは、タンク内のチェーンを最大まで張ることによって、なんとか 1 回で流し切れるようになった。ただ、小で流す際にも連動しており、小でも大量の水が流れるのをもったいなく思っている。ただし、水道代に限れば最低料金の上限である 8 m^3/月もいかないため、減らしてもうまみはない。

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 戸建に住んだらやりたかったこととして、トイレのコンポスト化がある。毎日 400 g 以上出る我が便をそのまま下水処理場にやっているのはもったいなく、できるなら自己で活用したい。いろいろと調べた結果、草木灰での一次処理が良さそうである。別に既存の水洗トイレを撤去することはないので、尿は基本的に下水に流しつつ、便だけ回収して利用する方針。とりあえず 20 kg で 3700 円という破格の木灰を入手したので、もう少し道具をそろえて挑戦してみたい。いつになるかわからないが、土作りと園芸まで行けたら幸いである。

sonohen.life

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まとめ

 さて、長くなってしまったが、一番言いたいのは「家は良いぞ、家は楽しいぞ、皆家を買え」である。別に戸建に限らない。金勘定とは別に、狭い賃貸に住み続けているなら、一度そこを出てみてほしい。若ければ若いほど良い。収入が低くとも土地と建物次第だ。独身でも関係ない。いざとなれば、多少損するかもしれないが売ればどうとでもなる。立派な社宅があるとか、いますぐに家族ができるとか転勤するとかでもなければ検討の余地がある。家賃補助が太いから賃貸を出たくないというのなら、それは少しうらやましい。一緒に週 3 パートになる方を勧めるしかない。それでは、不動産屋とのバトル編に続く。