虚用叢

見渡すかぎりうつろなくさむら

アニメキャプチャ環境の整備

 前回のブログにて、引越しに伴いテレビアニメの視聴環境がテレビ放送から DMM TV を利用したネット配信に変わったことを書いた。また、画面キャプチャをしやすくなったにもかかわらず、まったく撮っていないことにも新たに気がついた。

hibihinichi.hatenablog.com

 ネットにおける、アニメキャプチャを撮ったり貼ったりする人々、文化には、一アニメファンとして畏敬や憧憬の念を抱いている。法的な問題がないかはさておき、そこにはアニメへの愛と情熱(略して愛情熱)を感じるからだ。できることなら、わたしもアニメキャプチャを撮ってみたい。これまではテレビのキャプチャの煩雑さを言い訳に自炊( = ネット上のキャプチャを流用せず、自らキャプチャを撮ること)をほとんど諦めていたが、PC 視聴のいまはそうも甘えていられない。

 では、なぜわたしはアニメキャプチャを撮っていないのか。そもそもの問題意識が先日までなかったことも大きいが、実のところ、いまだにキャプチャを撮る環境が十分とはいえないのではないかと考えた。そこで今回は、快適にアニメキャプチャを撮っていくべく、アニメキャプチャ環境の整備に着手する。汎用的でない決着となったため、ひとの参考にはならないかもしれないが、個人的な備忘録として残しておく。

 

目標

  1. キャプチャを撮る。
  2. 撮ったキャプチャをクリップボードではなくフォルダに保存する。
  3. アニメをフルスクリーンで視聴しつつ、一時停止なしかつキャプチャに UI を写さない。
  4. キャプチャの遅延をなるべく抑え、キャプチャ中に UI を映さない。
  5. なるべくノート PC のキー入力を用いない。
  6. なるべく少ない入力数で撮る。
  7. 既存の機材のみを用いる。

 以上が今回の目標である。順に、 1. は当然、すでにできている。 2. も個人的には必至、これもすでに可能。 3. から 6. が主な課題。アニメ視聴を邪魔することなく、快適にきれいなキャプチャを撮ることが理想。なぜ 5. があるかというと、アニメ視聴中は PC を閉じてテレビでモニターしているためである。現状アニメはいつもフルスクリーンで見ており、実装を楽にするためにも、キャプチャ動作もそれに特化させたものにする。画質も高めたいが、まずはアニメの一コマ以外が写らないことが第一。保存先やファイル名なんかもいじれるに越したことはないが、これも急がない。 7. もできれば。昔モバマスを走るためにフットマウスを導入しているひとを見たことを思い出したが、追加費用がないに越したことはない。他にも見落としていることがあるかもしれないが、初回はこんなもので(次回があるかは不明)。

 

備前の環境

 ひとまず、整備前の環境を確認する。PC は FMV LIFEBOOK AH77/R、ネット情報で 2014 年発売のノート PC で、ハード部分は買ったときのままなはずだ。 10 年前の PC を使い続けているように、わたしはその道に明るくないが、やれるだけやってみよう。OS は Windows 10、周辺のアクセサリとしては、画面出力用のテレビ(ネット対応サポート終了品)、PC 付属のマウス、以前別に買った Microsoft のワイヤレスキーボードである、All-in-One Media Keyboard N9Z-00029 がある。付属のマウスは左右中ボタンのみの簡素なもので、今回の活躍は見込めない。

 目標 1. から 4. を満たすものとして、Windows 10 標準のショートカット、[Win] + [PrtSc] がある(標準と書いたものの、わたしは知らなかった)。これなら自動で PC のピクチャのフォルダ「スクリーンショット」内にファイル「スクリーンショット (n)」として保存される。目標 6. については 2 個、ただし片手で気楽にタイプするのは厳しい。

 また、この方法には欠陥があり、先のワイヤレスキーボードには [PrtSc] キーがない。その場合、[Win] + [Fn] + [Space] でも同じ挙動ができる。ただ、これでは入力キーは 3 個、片手タイプはキー配列をいじらなければほぼ不可能。これでは快適にアニメキャプチャを撮れない。やはり、現状のキャプチャ環境は十全ではないことが確認できた。

 

N9Z-00029 のマクロ作成

 環境に課題があることがわかったうえで、ここからより個別化された事案になる。[Win] + [PrtSc]( [Win] + [Fn] + [Space] )以上のショートカットとして、注目したのは N9Z-00029 のマクロ割当てである。Microsoft 謹製のワイヤレスキーボードである N9Z-00029 には、[Web] キーなる特殊キーが備え付けられている。この [Web] キーはアプリ「Microsoft マウス キーボード センター」を用いて任意のマクロを割当てすることが可能だ。マクロといっても難しいものではない。割当てたいキーをアプリ上でそのまま入力するだけでプログラミングは完了だ。あとはこの [Web] キーに [Win] + [PrtSc] を割当てるだけ。

support.microsoft.com

これでいつでも 1 ボタンで「anime」とつぶやける。

 このキーボードは元々、PC 本体から離れてベッドの上でごろごろブラウジングをするためにタッチパッド付でワイヤレスのものを探したのだった。去年の 2 月で 3898 円、後継品はずいぶんと値上がりしているようだし、我ながら良い買い物をしていたものだ。そう悦に入ったのも束の間、大きな問題に行き当たった。

 

[PrtSc] キーが出ない

 発覚した問題、それはアプリ上で [PrtSc] キーを直接入力できないというものだ。いくらキーを押しても画面領域切り取り機能が開かれるだけで、マクロが書けない。OS の設定で一時的に画面領域切り取り機能を開くショートカットをオフにしても無駄だった。切り取り機能は出なくなったが、相変わらず入力もされない。

[PrtSc] のショートカット設定。

 [PrtSc] がだめなら [Win] + [Fn] + [Space] はどうかと試みるも、今度は [Fn] が出ない。まあ、そんな気はしていた。

 

[PrtSc] キーの捜索

 せっかくなのでもう少し粘ってみる。問題なのは [PrtSc] があくまで直接入力ができないことで、[PrtSc] のコマンド自体は内部に存在しているのではないかと推測した。[PrtSc] キー自体は数十年以上の歴史があるらしいし、キーが存在する以上はコマンドも設定されているはず。結果的に、この考えがうまくいった。

 作成したマクロのソースコードは、「ドキュメント」>「Microsoft Hardware」>「Macros」フォルダー内に、拡張子「.mhm」のファイル(以下、正確かはさておき便宜上「MHM ファイル」と呼ぶ。)として保存される。このままではエディタがなく開けないため、コピーしたファイルの拡張子部分を強引に「.txt」に書き換え、テキストファイルとして開き、中身を調べる。

適当なキーを入力したマクロ。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?><Macro>
    <KeyBoardEvent Down="true">69</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="false">69</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="true">57426</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="false">57426</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="true">57415</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="false">57415</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="true">57417</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="false">57417</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="true">57416</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="false">57416</KeyBoardEvent>
</Macro>

 解析用として適当にキーを入力してマクロを作成する。一例として、[Pause] [INS] [Home] [PageUp] [↑] を続けて入力したマクロのコードが上のものになる。これを見ると、どうやら<KeyBoardEvent>で挟まれた数字が、対応するキーを表しているようだ。したがって、[PrtSc] キーをマクロに組み込むためには、[PrtSc] キーに対応するコード上の数字列を見つければよい。特殊キーの多そうな 57400 番周辺に当たりを付け、総ざらいしていくことにする。

 先ほどとは逆の要領で、調べたい番号を組み込んだテキストファイルを作成、MHM ファイルとして保存、それをソースコードとしてアプリで読み込み、出力されているキーを確認する。そうして見事 [PrtSc] キーを発見、記念すべき番号は 57399 番だった。 57400 番の上側から調べたので少し時間がかかった(それ以外にもいろいろ紆余曲折あった)が、 1000 番とか 10000000000000000 番とか -100000000000000000000000000 番とかじゃなくてほんとうに良かった。

57300 から 57399 までの入力結果。

 ちなみに、上のアプリのキャプチャでいくつも白丸が出ているが、どうやらそれらはプログラム上の空白やダミーとも限らないらしい。偶然見つけたのだが、[右Ctrl](そもそも左右の区別があるのかよ)である 57373 番のそばにある 57376 番は、アプリ上では表示こそ白丸だが、実際に実行させてみるとミュートボタンとして機能した。また、アプリ上のマクロの編集でミュートボタンを押しても何もコマンド入力されず、この通常の手順ではマクロに 57376 番を組み込むことはできない。俺だけ知ってる隠しコマンドかよ。

俺だけ使えるキャプチャコマンド

 ともあれ無事に [PrtSc] キーのコードが見つかり、目論見どおり N9Z-00029 キーボードの [Web] キー 1 プッシュのみで完結するショートカットキーが完成した。以下のコードで [Win] + [PrtSc] を実行し、フルスクリーンのキャプチャをフォルダに保存することができる。

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?><Macro>
    <KeyBoardEvent Down="true">57435</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="true">57399</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="false">57399</KeyBoardEvent>
    <DelayEvent>10</DelayEvent>
    <KeyBoardEvent Down="false">57435</KeyBoardEvent>
</Macro>

俺だけ使えるキャプチャコマンドの完成。

 目標を振り返る。

  1. キャプチャを撮る。→〇
  2. 撮ったキャプチャをクリップボードではなくフォルダに保存する。→〇
  3. アニメをフルスクリーンで視聴しつつ、一時停止なしかつキャプチャに UI を写さない。→〇
  4. キャプチャの遅延をなるべく抑え、キャプチャ中に UI を映さない。→〇、遅延はよくわからん
  5. なるべくノート PC のキー入力を用いない。→〇
  6. なるべく少ない入力数で撮る。→最小手数
  7. 既存の機材のみを用いる。→〇

 7 つすべての目標を満足している。しいて挙げれば、当キーボードの [Web] キーはタッチパッドの奥に配置されており、あまり押しやすくない。これを改善しようと思うと、もはや追加のアクセサリが必要ではないか。

 

試運転

 さっそくツールを試してみる。自身初めてとなるキャプチャ撮影前提のアニメ視聴である。

ちょうどすばらしいアニメが更新されているね(遅い)

 アニメ視聴中はご飯を食べているときが多いのだが、朝と昼の間で今回はなし。神妙に右手人差し指を [Web] キーもといアニメキャプチャボタンに置き、「終末トレインどこへいく?」第 4 話「なんでおしり隠すの?」を再生した。
 物語は回想から入る。幼き日の少女 5 人。さっそくキャプチャのタイミングだと思うも、どこか決め手に欠く。画面はすでにかわいいであふれているのに、もっと良いショットがあるのではないかと、 1 枚目の瞬間を逡巡する。そうこうしているうちに OP に入ってしまった。特殊 OP ならともかく、 4 話で通常 OP を撮るというのもなあ。

 結局 1 枚目となったのがこれ。ここまで 4 分 40 秒かかりました。しかも、「あっ!」と思った瞬間にはカットが切り替わっており、 10 秒戻しをしてから撮った。

ファーストキャプチャ。

 当時は最高のショットが撮れたと思ったのだが、あらためて見返すと、知らないひとが見たら何のことかわからないかもしれないな。いや、でもやっぱり良いショットだと思う。ふたなりが好きというより、東雲晶ちゃんが恥ずかしい、隠すべきものとしてそれを扱っており、そこに本能的に誘引される獣という構図が美しいのですね。

 その後は堰を切ったように、というほどでもないかもしれないが、 1 話の間に東雲晶ちゃんを中心に計 72 枚のキャプチャを撮ったようだ。

この犬、やりおる。

 視聴中は普段より緊張して集中しているというか、むしろ画ばかりを見て話があんまり入ってこないというか、なんなら「ここ絶対みんな撮ってるでしょ」とか「このキャプチャにこのコメントを載せよう」とか「いま撮った背景何に使うんだ?」とか、余計なことばかり考えていたような気もする。

こマ?

回想アニメ博士。エピソードが鬼畜すぎる。

 良くも悪くもいつもとは全然違う 30 分で、その前に PC を触っていたせいもあるだろうが、首も肩も目も頭も疲れた。これが、エクストリームアニメ視聴……!

ラストキャプチャ。さすがにここしかない。

 

まとめ

 初回の環境の整備としては大成功だろう。ただ、はたしてアニメキャプチャが簡単に撮れるようになっても、それでわたしはどうするのか、どうなるのかというところが定まっていない。キャプチャが撮れるという意識下でのアニメ視聴は、そうでないものとは別物であると体感した。撮ったものをどうしよう、あるいはどうしたいから撮ろうという思いがちらつくし、たとえばこれに実況をつけるとなるとより別物になる。そもそも最近は Twitter でもブログでもあまりアニメの話をしていないし。そういったアニメとの付き合い方まで含めて、今後に影響を与えるものになるのかもしれないし、ならないかもしれない。なにはともあれ、技術的にも楽しいお勉強になったし、あこがれのアニメキャプチャ職人に少しだけ近づけたことはうれしい。