虚用叢

見渡すかぎりうつろなくさむら

2023春アニメ感想

 Twitterはすっかり見なくなったのですが、アニメ感想ブログの方は続けていきたいと思います。今期も前期と同じく、歯抜けでの公開から随時更新していきます。皆さんの感想も楽しみにしています。書き終えたら巡回します。

<更新履歴>
2023/07/11 青オケ/ワンキル姉/江戸前/王様勇気/推しの子/とな銀/水星2/爆焔/天国/転生貴族/山田999/無職転生/虹ヶ咲/サンシャイン/サンシャイン2/サンシャイン劇 残り12
2023/08/30 残り全部!

hibihinichi.hatenablog.com

アイドルマスター シンデレラガールズ U149

 わたしにとってシンデレラガールズは、モバマスデレステ、およびこれまでのTVアニメを通じて情熱を注いだ作品であった。本作への期待は大きく、反面これまでのゲーム体験との違いをもどかしく思うことも多かった。

 大きなテーマとなっていたのが、第11話のタイトルにもなっている大人とは何か、子供とは何かという問いである。10年前に携帯電話向けのソーシャルゲームとして始まったモバマスを作ったひとたちは、そんなことを深く考えていたはずもないだろう。身も蓋もない話をすれば、フィクションの登場人物を一様に小さい女の子にするのは、小さい女の子が好きな客層にアプローチするために他ならない。それでいてなお、あえて150cmにも満たない少女たちがアイドルを始める理由を、目線の高さを合わせて語ろうとした作品だったと感じた。ひとつの結論として提示された、大人と子供の違いなどそうない、夢を見るのに早すぎるも遅すぎるもないという答えに、わたし自身勇気をもらったのも確かである。一方で、キャラクター造形や挿入歌には、良くも悪くも旧来のシンデレラガールズの年少組らしい過剰な幼さが振りまかれていて、やはりこのアニメがシンデレラガールズ由来でなければもっと楽しめただろうという思いは拭えない。

 作画はもちろんすばらしかった。不思議と萌えというより美しいイメージが強い。あごに入るターコイズの反射光がリッチで印象に残っている。

第8話「綺麗になるためにはくもの、なに?」

 失敗を恐れる千枝が一歩を踏み出せるようになるまでの、じつに美しい話だった。鬱展開で物議を醸した先代TVアニメの反省からか?先輩アイドルたちは皆頼りがいのある存在として描かれていたが、今回のゲストのつかさはまた一段とイイ先輩だった。優秀でビッグマウスでおっちょこちょいという設定がうまくはまっていたのもある。プロデューサーも含め、直接激励をするのではなく、緊張や不安が意図せず手をとおして共有されたことで、千枝本人から奮い立つ、じつに本作らしい一幕である。天真爛漫に手を引くみりあや小春たちはもちろん、目線を下げて話す(ようになった)プロデューサーやつかさに、千枝が大人であるか子供であるかなどといった雑念はない。「Sing the Prologue♪」良いよね。

 

青のオーケストラ

 第14話時点。全24話らしいのにOPED変わらんのかい。さて、事前の予想どおり秋音律子氏が萌え萌えで素晴らしかった。物語のヒロインとしては、ここのところ記憶にないほど好きかもしれない。彼女のバイオリンになりたい。うつむいてばかりだった青野くんの成長につれて影が薄れてきているように思うが、2クール目での見せ場に期待。

第5話「原田蒼」

 青野佐伯デュオ、秋音ソロ(横にも新入生がいたが)、上級生の合奏、三者三様の演奏でとても聴きごたえがあった。音楽ものの漫画に音がつくのはアニメ化の醍醐味。

 まずはデュオ。主要人物の演奏はすべて特定のプロが1人ずつ担当しているらしいが、プロでもこんなふうに故意にずらした演奏ができるものなのか。映像面でも、バラバラな弦の動きひとつで呼吸が合っていないことが見てとれるのが弦楽の面白いところだと感じた。青野と佐伯のそれぞれに見せ場があり、音のケンカをしながらもお互いが楽しそう。今後のライバル関係を示唆しているようで良いね。

 次に秋音ソロ。天才ふたりの演奏で皆が委縮する中、経歴半年の身にして力強く挙手して前に立つ、彼女のそういうところがほんとうに好き。ノンビブラートで一音一音確認するような音色に、また不思議と感動する。わたしも去年の末にピアノを始めたのだが、練習という性質上、自分のできないところ、拙い部分と向き合う必要がある。しかし、自信満々に大きな音で堂々と演奏し、達成感と満足感を顔いっぱいに浮かべる彼女を見ると、もっと演奏そのものを楽しんだり、自分の音を好きになって良いのだと安心するのだ。

 最後に、原田軍団の弦楽合奏。音についてはうまいのでうまいなあという感想だが、アニメーションが良かった。3DCGによる機械的な違和感を全体に残しながらも、部長だけ表情やモーションが作りこまれていて、これがあふれ出るカリスマ性のように感じられたのだよね。否定的な意見も見る本作の演奏シーンだけど、個人的には演奏外の手描きの方をもうちょっとがんばってほしいと思ってしまう。

 

アリス・ギア・アイギス Expansion

 原作ソシャゲは名前を知っているだけの状態で視聴を始めたが、とんだトンチキアニメだった。相河愛花と一条綾香の仲良しコンビの萌え力だけで天下を取れるポテンシャルがありながら、あえて狂気のオリジナルキャラを主人公に立てて奇行に走る心意気、嫌いじゃない。

 第11話、第12話を中心に、シリアスな場面では特徴的なブルーやブラウンの輪郭線がモノクロに置き換わっており、これだけでずいぶんと印象が変わるものだと興味深かった。

今期アイコン(右)はアリス・ギア・アイギス Expansion アイコンだった!?

第6話「下落合桃歌殺人事件~シタラ編~/下落合桃歌殺人事件~夜露編~」

 無難に水着回や終盤のシリアス回でも良かったが、やはりこの作品であれば人類には早すぎた寸劇回のどれかから選びたかった。探偵ものながら格好と舞台だけでろくに推理しないの自由すぎる。村のおばあちゃんにわらべうたを聴きに行く流れ、古畑任三郎藤原竜也回で見たやつだ!からのジャイアン歌唱とムンクの叫びで笑いが止まらなかった。唐突なキャラ演歌EDによる通常の浄化EDキャンセルまで、とかくハイカロリーな回だった。

 

異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~

 天国大魔境、地獄楽というなぜかあの土ヨルの頭に集まってしまった今期屈指の質アニメリレーに挟まる異世界転生アニメ。そんな難しい枠ながら、要所でキレのある作画、劇伴からドット絵に至るまでのドラクエオマージュ(ドラクエやったことない)、異質なダンスEDで強い存在感を放っていた。姉一強モノというのも珍しいと思っていたところ、後半テコ入れのごとくヒロインが増えてありふれたハーレムモノみたくなってしまったのは少し寂しい。まあ萌えはナンボあっても良いのだが。

 姉とは異なり弱キャラとして転生してしまった主人公が、少しずつ(ほんとうに少しずつ)強くなっている描写も丁寧で良かった。人生を変えるような作品ではないかもしれないが、日常、冒険、萌え、オモシロ、この辺のバランスがうまく取れていて、今期のアニメ視聴生活を支えてくれる心強い作品だった。

第5話「軍場姉弟のダンジョン探索大作戦」

 ヒロインとしてはストライクゾーンにかすりもしていなかったはずのキルマリアに萌えてしまった回。村娘の姿として変わった見た目もさほどかわいいとは思わないのだが、口調や声色の変化だったり、それでもなお隠せぬキルマリア色だったりに心奪われるのだろうか。萌えは一日にして成らず。

 

江戸前エルフ

 ノーマークだったがとても良かった。異世界より召喚されし御神体たるエルフがいる世界が、いまでは自分の中で当たり前のものとなっている。小清水亜美さんという意外すぎる人選がこんなにはまっているとは。昔話やオタク話でいくらでも話を広げられるのがおいしい。小柚子ちゃんが萌えの権化だったことに議論の余地はないが、真に驚くべきはその萌え力を圧倒的に高めていた汗漫符の存在である。この秘術が広く公開されたことにより、今後のアニメにおける萌えインフレが予見される。

第6話「Stand by Me」

 Aパートのテスト勉強回も良かったが、やはりBパート、東京スカイツリーでの神事に目を見張った。歴代の巫女の死を見送ってきたエルダの物憂げな瞳を、月明かりが青く照らす。繋いだ小糸の手を握ったまま、神域の規制線を力強くくぐるシーンには込み上げるものがあった。不死の山に小糸を連れていくことはできない。それでも、限られた時間を、これからもふたりは互いの幸せを祈りながら過ごしていくのだろう。

 

王様ランキング 勇気の宝箱

 わくわくする果ての見えない世界観、温かみがありながら躍動感にあふれる作画は健在。TLではあまり見ているひとがいない印象だが、第1期と合わせておすすめの作品。オムニバス形式で、1期のストーリーの裏側、キャラクターの深掘りをする内容だった。どの人物もほんとうにいとおしいんだよな。

第4話「不死と三兄弟」

 デスハー様もデスパーさんも見るたびにどんどん好きになっていく。一方で、不気味でおぞましい印象の強すぎたオーケンの生い立ちが、この話で明らかにされていく。エピソードの重々しさを補強して余りある凄みのある作画と音声。一歩、また一歩と闇に堕ちていくオーケンの姿に呼吸を忘れそうになる。亡霊と化す絵画、屍の山の上で兄と対峙するオーケンのカットが出色。

 

【推しの子】

 かわいい女の子がいっぱい出てきて良かった。アイ系列の写輪眼が目を引くが、そうでなくても瞳や髪の毛の描きこみはすさまじく、ワンショットが語る情報量は圧巻。EDが好きで、とりわけイントロが良い。ポップな話数タイトルとともに流れ始めて、来週も楽しみだという気分にさせてくれる。それでいて作品の闇の部分を強く印象付けてくれる不思議な曲だった。

 異例の90分という第1話には賛否どちらの感想も目にしたが、個人的にはあのバックボーンありきの作品だと感じるので英断だったと思っている。アクアがヒロインズにデレデレせず、復讐というダークな目標のための駒として打算的に利用する構図が、彼女たちをより魅力的にしているのだから。そもそも全話面白い圧倒的クオリティの前に、初回が長いなんて些細なことなのだとわからされた。

第8話「初めて」

 強さランキングで下位に沈んでいたかに思われた黒川あかねが、まさかのセンス・・・
持ち(CV. 石見舞菜香)で逆転してきた。その写輪眼出したり引っ込めたりできるんだ。

 そして「初めて」のキャッチボールデートへ。正直有馬かなは優遇されすぎで好きだと公言しづらいが、もう高鳴る萌えを抑えきれない。恋する乙女より強いものはない。アクアに翻弄される情緒が画面いっぱいにあふれている。有馬黒川間に子役時代からの因縁があったことを知ってから見返して、なおのこと見悶えた。

 

おとなりに銀河

 録画明けの日曜朝にゆっくり見るのにこれ以上ない作品だった。最終話での畳み方もじつに満足。しっとりOPの音数が増えていくの好き。EDのキラキラした絵も好き。

 素直にプラトニックな恋愛ものとして受け取ってもとても面白いけれども、姫の契約、漫画というアクセントによって下賤な妄想が捗って仕方なかった。五色しおりにえっちな漫画いっぱい読ませたすぎる。

第3話「姫と爆発」

 感情の共有にしろ実験にしろ、いちいちえっちすぎる。パートナーが久我くんでなければ、同居する兄弟がいなければ、単身本土に来た五色しおりがどんなめちゃくちゃな目に遭っていたかわからないということばかり考えてしまう。

 

神無き世界のカミサマ活動

 骨太で真新しいストーリーで続きを楽しみにしながら見ていた。初めは演出が過剰で肌に合わないと感じることもあったが、唐突なドット絵、露骨な3DCGモンスター、ほとんど雑コラの実写など、意欲的な画作りは飽きさせることがなかった。2期が来てくれるとうれしいね。

第5話「カケマクモカシコキ ミタマノオホミカミ ヨロズノモノ ツクリタマヒキハ ロクコンショウジョウニシテ アメツチノヨロズモノトドウタイナルガユヱニ カカルトヨアシハラミズホノクニニスマワセタマヘト マヲスコトノヨシヲ オホツチノ ミタマノミコト キコシメセトカシコミカシコミマヲス」

 タイトルが長すぎる。この世界の謎が明かされ、物語が大きく進展する回。後半はすっかりおなじみとなったが、OPの入りが特異。アバン→CM→(本編被せの)OPするアニメ、初めて見た。ネット配信だとあまり違和感ないのかな。効果的かどうかはともかく、こういったチャレンジ精神が本作の魅力のひとつだね。

 ロキは随一の良キャラで、CV. 緒方恵美が一介の村人で終わるはずがない。ミステリアスな面が暴かれてなお魅力が増すというのは、お話がうまい証である。幻影を駆使した戦闘スタイルもとてもかっこよかった。神に似せて造られているとのことだが、作中人物の中ではよほど共感を呼びやすく描かれているように感じた。

 そして満を持しての実写コンバインの登場。合成して貼り付けただけみたいなロイの顔面とか、紙芝居的に横切る真顔のクレンとか、画面すべてが面白い。間違いなく今期一笑ったシーン。最終話のOPEDでも顔を出してくれて感謝しかない。

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女 Season2

 積極的な視聴継続理由が見つからないまま、救いのない展開が続いて疲れた。わかりやすいヒールがいない分、だれかの肩を持つ、あるいはヘイトを寄せることができないために余計に再生ボタンが重かった。

第20話「望みの果て」

 御三家の子息たちにはいつまでも学園の中だけでドンパチやっていてほしかった。テロが明けて、アーシアンチームが自分たちの存命に安堵している中、救命に腐心するスレッタの背中が大きい。

 

この素晴らしい世界に爆焔を!

 本編のアニメはもっと面白かった気がするというのが率直な感想。特に学生時代が顕著で、「頭のおかしい紅魔族」のボケが延々と続くのが厳しかった。本編の3期が決まっているみたいなので、この作品の何が好きだったのか、自分の感性が変わったのか、確かめたい。

第6話「爆裂ニートの就職活動(レゾンデートル)」

 1つ、好きだった点を思い出した回。冒険者となって服装を一新したゆんゆんの胸元。

 

THE MARGINAL SERVICE

 キャラクターこそイロモノぞろいだったものの、案外ストーリーは堅実で毎週ストレスなく楽しめた。一話一話伏線からオチまできれいにまとまっていて、無駄なシーンがない。それでいて華やかさやコミカルさも忘れないと、予告の奇抜さからは意外なほどの今期の優等生だった。

第1話「革ジャンは滑りやすい」

 作品を象徴するお手本のような初回だったと思う。導入としてのバディの喪失と新たなバディの予感。身体を張ったアクションと爆炎を伴う派手な演出。「返してほしけりゃ死ぬなよ」と冗談をこき、結局借りたままになってしまったカネを墓前に供えるのも小粋。ラストのクソダサユニフォームでのうるさいキャラクター紹介も、前半にアジトで小物としてスルーされたペック・デズモントの存在がその意味を強めていた。

 

地獄楽

 謎と奇怪に満ちた舞台設定が非常に魅力的だった。各罪人や山田浅ェ門の魅力もさることながら、天仙様のデザインは他に類を見ない秀逸なものだった。同じMAPPA制作で記憶に新しいチェンソーマンでのグロ描写はきつかったのだが、虫や植物は平気らしい。雌雄同体の美形から異形の怪物までを往来するさまにはとてもわくわくした。公式HPの「円盤」表記好き。OPもダークでかっこいい。2期が楽しみ。

第11話「弱イと強イ」

 いかにもジャンプっぽい禅問答的戦闘術解説がうれしい。少年ならだれしも、不可視の生命エネルギー的何かを自在に操って最強になることを夢見ますからね。萌えを中心で支えていたメイ様が、ここにきて道士にまさかの堂々とセクハラされるのもすばらしい。これまで全体に説教くささをクドく感じていたものの、罪人設定とのギャップ、異なる倫理観で動く敵方との対比という面から軽んじることもできないのだろう。それがここでは画眉丸がメイ様を助ける行動原理、覚醒の契機となっていて熱い。

 

スキップとローファー

 OPは転生貴族と並んで大好きだった。美津未と志摩くんのステップは力が抜けていて、どこかコミカルでもあり、見ていて楽しい気分になる。なんというか、リアルな動きだけどちゃんとアニメなんだよね。ED曲もよい。この1年余りの間に、ラブライブキャストを見つけるとそれだけでうれしい体になってしまった。

 高校生活1年目、くすぐったくなるような若さあふれるエピソードの数々。コミックのコマーシャルのコピーのとおり、見ていて元気になる。半面、キャラクターはいささかわかりやすすぎるというか、ロールがはっきりしすぎているようにも感じた。とはいえだれもかれも個性的で魅力的なのは間違いない。

第3話「フワフワ バチバチ

 仲良くなる前の距離を測っている感じ、大好物。人間はギスギスしてなんぼですからね。そこに宇宙人であるところの美津未の言動が笑いを誘う(ただしイメージで宇宙人だったのは志摩くんの方)。このころはまだまだ猫被りの江頭ミカもとてもかわいいね。成長を見守っていたくなる、けれども簡単には幸せになってほしくない愛くるしさがある。

 

デッドマウント・デスプレイ

 秋に第2クールがあるらしく、風呂敷が広げられたまま消化不良で終わった感は否めない(とくに考察しない自分の視聴スタイルが合っていないのもある)。そろいもそろって現実味のないキャラクターばかりで、現実世界(現代)に転生した異能を使う主人公設定のうまみが薄れているのも気になった。きわめて自然な3DCGも含め作画は整っているが、入れこむキャラも見つからず、秋は一応録画しておくくらいの位置になりそう。

第5話「The Monster-怪物-」

 レミングスはタイトルに違わぬバケモノぶり。ただ、べらぼうに強い以外の印象がほとんどないせいで、好感があるかというとあんまり。屍神殿が長命ゆえに付き合いの長さは重要でない、助けたいときに助けるものだという師匠の示唆は、これまでの仙者のイメージとは真逆で新鮮な解釈だった。

 

天国大魔境

 主人公組含め文明の失われた世界でたくましく生きる人々の描写に胸を打たれる佳作だった。線の主張が控えめで、ときには西洋絵画のように塗りでほとんど見えない。アクションシーンに宿る躍動感、SFパートの感覚を乗っ取られるようなリアリティ、裸体の女は萌ええっちピクチャーというよりエロティシズムの芸術。雰囲気のある良い画だった。ストーリーは完結までほど遠い感じなので、2期早く来てくれ。

第8話「それぞれの選択」

 迷いなく今期ベストエピソードに挙げたい。命の終わりを巡るとかく繊細な描写にことばが出ない。初めは機械に繋がれた少女を見るに堪えずカーテンを閉めていたマルたちが、目線を下げてコミュニケーションを取っていくさまが良い。職業柄、死を間近にした人間と多くふれあっているが、現代の医療と他人の扶けがあれば、人間とはほんとうになかなか死なないものだと日々感じている。誤解を恐れずに書けば、ときに終末期の人間とはなぜ生きているか不思議なほどグロテスクで、だがしかし、それでも彼らは生きているのだと半ば仕方なく認めることになる。この生死の線引きが麻痺していく感覚が、映像によく表れている。ベッドを踏む土足は粗暴だが、チューブや機器を受け渡しする手はまさに赤子に触れるときのそれである。

 外の景色を知っている少女が、最後に青空を望むというのが、天国の子どもたちと対比的でまた良いね。左目からのみタブレットにこぼれ落ちる宇佐美の涙も、ベタながらやはり良い。団体の略奪行動の騒がしさとは別の時間が、ここでは流れている。

 宇佐美の心中シーンも格別だった。夕暮れ、ビルの屋上、白髪痩身眼帯スーツの男が、少女の亡骸を抱え拳銃を手にしている、この絵面だけでなんと美しいことか。ここに1羽のカラスを入れたの天才。結末はわかりきっているのに目が離せない。息遣い、カラスと手すり、拳銃の撃鉄、すべての音が生々しく頭にこびりつく。それからリアレンジされたED。良いものを見せてもらった。

 

転生貴族の異世界冒険録 ~自重を知らない神々の使徒

 PV時点で良さそうだとは思っていたけど、期待を大きく超える作品だった。第1話の圧倒的スピード、異世界転生アニメというフォーマットが広く共通認識となったいま求められるものだと思う。そして今期も激戦のOPの数々の中で輝きを放つ至高の映像。テレスとシルクに引っ張られて左からフレームインするカインとともにタイトルロゴが顕現する。これだけで「よっしゃー!転生貴族見るぞー!」って気持ちにさせてくれるのだ。

 女の子が何人出てこようとわたしは終始シルク嬢一本で行かせていただいていたが、声色といい髪型といい少なからず南ことりちゃんの姿を重ねていたことをここに懺悔しておく。

第9話「修行」

 至高のOP映像とは書いたが、1つだけ懸念点があって、青年に成長したカインが一部映っていたのだよね。それは同時にシルクが成人となることも示唆していて、願わくばずっとあの少女の姿のままでいてほしかった。とかくスピード感あふれる作品で、作中年月も数年単位であっさり経過していくものだから、それはもう不安で。いや、けっしてわたしはロリコンではありませんが。

 ところが唐突にも精神と時の部屋システムの別世界が乱入し、カインだけが先に歳を取ると知り一安心。いや、やっぱりそれはそれで問題ではないかと考え直したところで、あっさり初代様が身体年齢だけ戻しちゃってひっくり返った。この作品のご都合主義はエンターテインメントなので何も問題ない、むしろありがとう。

 このようにわたしは最初にOPを見たときからずっと不安だったものだから、またこれまでどおりカインが屋敷に戻ったときは心底ほっとして涙した。ヒロインふたりの成長途上のクッキーと、それを嗚咽してほおばる主人公とにも、それぞれで経過した月日がよく表れている。テレス、シルクと一緒に特大の「おかえり」のことばを掛けたよ。

 

僕の心のヤバイやつ

 えっちな妄想のレベルが男子中学生で止まっているので、なかなかクるシーンが多かった。羊宮妃那さんの声がよい。主人公に好感を抱かない(ただし嫌悪感もない)、ヒロインが惚れる経緯の描写が弱い、ヒロインの属性(とくに精神面)が嗜好から外れている、キャラデザが好みでないと、学園ラブコメとしては大きく不利を取っていたにもかかわらず完走できたのは、あらためて性的描写が身の丈に合っていた部分が大きいのだと思う。

第7話「僕らは入れ替わってる」

 人間の記憶というのは、可変である人間そのものに対してよりも、不変である(ように認知する)物や場所に強く結びつくものであると思う。成長して上書きされてゆく同級生との関係に対して、あのとき胸越しに揺れた体操服の影や、取り違えたジャージに残る温もりは、たしかな記憶として脳裏に焼き付くことだろう。それはさておき、羊宮妃那さんの「マジキモい」連呼ありがとうございます。

 

ポケットモンスター (2023)

 第12話時点。我らがサトシさんの主人公交代後の第1作目となる。CV. 大谷育江さんは続投のまま異なる個体のピカチュウがレギュラーを張っているが、看板ポケはそのままに性格のみならず技構成や戦闘スタイルまで一新できるのはおいしい。令和にかげぶんしんで戦うピカチュウがまた見られて感無量ですよ。

 いまのところダブル主人公というよりメインがリコという構図に見える。しばらくはリコの思考を逐一モノローグで流すのがくどかったが、子ども向けということもあるのかな。リコの成長につれて控えめになってきたのは助かっている。

 ゲームはBWを最後にプレイしていないので、パルデアのポケモンは知らないやつばかりだが、それはそれで楽しい。ポケモンといえばゲームとアニメの25年以上の歴史を継承したオーケストラによる劇伴であり、これも知らない地方の曲も含め楽しんでいる。

第9話「パルデア到着!」

 教育的示唆に富む健全な夕方アニメに感じる良さというのは、おとなになってもあるよね。実家より現住居に「ただいま」とこぼすくだり、いまではよくわかる。「言いたいことは言わなければ思っていないのと同じ」という教えが、長老ポジのランドウから直接リコではなくドットを経由して伝わることで、両者ともの成長や親睦につながっているのが美しい。親の方は子に対してあっさりしすぎだが、まあこれもニャオハによろしく伝えるポケモン世界ならではということで。

 

山田くんとLv999の恋をする

 ポップな画作りがとにかく好きな作品だった。自転する花柄だったり、降下するドットだったり、キャラクターの掛け合いをより軽妙に演出していた。ヒロイン含め登場する女性陣は癖が強く、ステレオタイプな女性像の面倒臭い属性を煮詰めたようで、必ずしも魅力的ばかりとはいえない。「失恋を引きずって酒に酔い、ほとんど面識のない高校生に絡む大学生」と書き起こせば、近寄りがたく思うだろう。こうした人間臭さを肯定的に受け取れるのは、ひとえに秀逸なアニメーションのパワーだった。

第7話「安心したいですか?」

 今期のベスト口の形エピソード。同時に頭の形アニメでもある。何度見ても笑えるし、斬新で感心する。

 

勇者が死んだ!

 下品寄りのコメディーアニメとして毎週楽しく見られた。すけべアニメとしては控えた表現だったかな。庶民が突如勇者として生きることを強いられるとだけ書くといかにもありがちな物語だが、旅を続けても一貫して下賤なままなのがよい。戦闘スタイルも独特で、罠と形状変化する聖剣を軸にし、ときに対立関係を越えた共闘も辞さないなど、与えられた手札で泥臭く生存するやり口は見応えがあった。EDのイントロで次話の映像を流す作品は初めて見たね。

第3話「勇者が白骨化!」

 白骨化した勇者という絵面だけで面白い。聖剣に顔を描いて仮面にしたの、たぶんこの作品が初でしょ。そしてマルグリットが登場。持病の魔漏症を補うための過食で一時的に肥満になるというのはまあギャグ表現なのだが、そんなコンプレックスをフェティッシュによって美点に変換してしまうトウカ・スコットくんはたしかに勇者かもしれない。骨フェチの院長も指折りの変態敵キャラだった。

 

ワールドダイスター

 これもOPがよい。長谷川育美さんの伸びのある硬派な歌声すばらしい。その意味で静香が予想に反してほとんど表舞台に立たなかったのは残念。

 オリジナルアニメとしてアニメというメディアをフルに生かす、美少女による演劇がテーマの作品。圧倒的なのがその演劇のアニメーション。2Dアクターなるクレジットがあるが、プロの舞台役者に実際に演じてもらい、それを一枚一枚模写でもするのだろうか。指先から足先まで、リアルな舞台がそこにはあった。引きのショットのほんのちょっとした動き一つにもかなりの枚数を割いていて、とにかく本物を再現するんだという気概を感じた。

第3話「初めての舞台」

 Aパートの静香とここなのイマジナリー歌劇は、これぞ放送前に想像していた舞台であって、これはこれでとても良かった。ここなから離れ月に帰る静香は今後の展開を予期させるものかと思ったが、杞憂だったようだね。タカヒロ先生、自分もっと鬱展開いけます。

 カトリナ・グリーベルはこのころのナイフのような態度の方が好き。サービスシーンと挫折のセットまで付いて、まさしく完璧である。

 演劇を忠実に再現する一方で、オタクのために(?)「センス」を導入したのは英断だったと思う。目が光る、消光するで「キターーーーー」ってなるので。わたしも柊さんポジションで腕組みして見ていた。

 

私の百合はお仕事です!

 フィクションにフィクションを重ねたようなめちゃくちゃな設定で、終始ツッコみながら見ていた。とりあえずこんな精神崩壊まっしぐらのバイトなんて辞めな。

 そんなバイトを続けているメインキャラクターたちは当然浮世離れしており、感情移入するのも難しく、身も蓋もなく言えば人形遊び的に女女の痴情を摂取させてもらった。百合を描くにしてもとかく尖った設定の作品に素人目には見えるのだが、サロン人格と通常とで絡みに幅を持たせられておいしいということだろうか。

第7話「ギャルといいますのね?」

 果乃子たちの恋路は正直どうでもよいのだが、指に寝ている陽芽と自分の髪を絡めるシーンで絶叫。今期アニメ中最も目に焼き付いたシーンである。

 

無職転生異世界行ったら本気だす~(2021冬)(2021秋)

 ここからは旧作。BS11の再放送にて初視聴。第2期の放送に合わせて第1期を再放送してくれるの、いつもほんとうにありがとう。うわさには聞いていたが、いっさいの妥協がないすさまじい作品だった。わたしはあらゆる漫画やノベルをアニメ化して初めて知る人間なのだが、どうやらこの原作は、異世界転生ものやいわゆるなろうのさきがけとなった作品らしい。アニメ化が遅いのは不思議だが、なるほど転生した主人公がメタネタまで盛り込んでくる最近の異世界アニメと比べると、転生前の情報が頻繁に出てきたり、転生後の乳幼児期に尺を割いているのは元祖っぽい。セクハラが過ぎるのは、内山夕実ボイスじゃなかったら耐えられなかったかもしれない。ロキシーに対するクソガキ王子はほんとうに不快だった。

 アニメーションはもちろん、ストーリーもとても魅力的だった。舞台の移行はルーデウスの意向とは無関係に進み、多くのそれは理不尽に富んでいて、見た目こそ華やかな異世界も現実と変わらない、あるいはそれ以上の厳しさを突きつけていた。異世界が主人公のための都合の良い逃避先になっていないことに、誠実さを覚える。

 ヒロインズ含め印象に残るキャラクターが多い。エリスをこんなにいとおしく思うなんて、初見時は想像だにしなかった。2クール分まとめてしまったのだが、第1クールなら、第7話「努力の先にあるもの」を挙げたい。

第16話「親子げんか」

 ルーデウスの方に大いに共感しながら見てしまった。これは作品にうまく乗せられていたとも言えるが、魔大陸に飛ばされてからの日々はほんとうに大変で、視聴者たるわたしも、よもや故郷の人々が苦しんでいたことなんてまったく考えるいとまもなかった。

 1年ぶりに再会した父親の姿は変わり果てていて、みすぼらしい。魔法無しでもあんなに強かった父、それが魔眼によって息子との力関係が逆転してしまった。娘に「いじめないで」と庇護される父の、なんと哀れなことか。苛酷な道中をあえて気丈におどけて語ったときも、対等な親子のけんかのつもりで全力で拳を振ったときも、ルーデウスはちょっと気づくのが遅いだけなのだよね。それがどうしようもない不和を生み、後悔にさいなまれる様子はやるせない。強さとは何か、力とは何か、人物それぞれの眼差しから考えさせられる。

 

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(2020秋)

 公式YouTubeチャンネルの一挙放送にて初視聴。スパスタからラブライ部に入ったので、まだ第2期とにじよんしか見ていなかった。

 9人のソロアイドルがいるため当然と言えば当然なのだが、毎回のようにライブが描かれていてすごい。普段着に多くのバリエーションがあるのもうらやましい。キャラクターコンテンツとして大事に制作されていると感じる。

 結局同好会でありながらグループ化はしないというスタンスが、なあなあで済まされていたように感じたのは引っかかっている。ギスギスをもっとください。

第6話「笑顔のカタチ(〃>▽<〃)」

 天王寺璃奈にとってコンプレックスを乗り越える手段としてスクールアイドル活動がはまったことに、この作品の意義を感じた。覆面アーティスト自体は珍しくないが、彼女にとっての覆面はむしろ表情を出すためのものというのが斬新。ひとはそう簡単に変われないと挫折し、そのうえで顔を書き換えることでステージに立った彼女に強かさを覚えた。うつむいて舞台に反射した自分の新しい顔を見て、笑顔になれたのはとても素晴らしいこと。スクールアイドル恒例の円陣でなく、舞台袖で「がんばれ」と見守る同好会のメンバーが優しい。

 

ラブライブ!サンシャイン!!(2016夏)

 BS日テレの再放送にて初視聴。夏の「幻日のヨハネ」の番宣ね。去年の冬にスパスタと出会ってから、最後に残ったラブライブ!TVシリーズを履修することになった。初代やスパスタと比べると、個別のエピソードや会話劇に熱くなるものが少なく、かといってギャグの方も滑っていて退屈に感じる時間が長かった。

 一方で、楽曲はピカイチ、OPED挿入歌、キャッチーでゴージャスで、どの曲も一度聴いただけで印象に残る。極端な話、アイドルアニメは曲が良ければそれだけで最高なんだよね。ライブシーンの振付や3DCGも初代からずいぶんと洗練された印象で、アニメの進歩はすごいなと思っていた。

第11話「友情ヨーソロー」

 ノりきれない話が続く中で、この回はぶっちぎりに良かった。梨子から千歌にかかってきた電話をパスされておどおどする1年ズ、最高じゃなかった?仲良しでやらせてもらっているグループ内に不意に現れる、生々しいメンバー間の不和や距離感に非常に興奮した。曜が人気だと聞いて途中までは意外だったのだが、この話で得心がいった。嫉妬ファイヤーに身を包む幼なじみはオタクの大好物だからね。

 挿入歌「想いよひとつになれ」もまた最高のステージだった。エピソード、歌詞、振付がリンクして感動を増すのは、やはり物語たるアニメの醍醐味。

 

ラブライブ!サンシャイン!! (第2期)(2017秋)

 1期に引き続いて初視聴。1期とは何だったのかというくらい2期はどの回も面白かった。キャラクターに思い入れが積み重ねられたことも大きい。ルビィちゃんの成長を見ると胸が熱くなるし、いつもマイペースな花丸ちゃんに安心する。最終話のラストシーンは感動的だったね。

 OPEDの曲自体は微差で1期の方が好きだが、映像は2期でより良くなった。ハートの花丸からの上下がガッチャンコするカットが実にキマっている。EDのバスでのわちゃわちゃも良い。

第10話「シャイニーを探して」

 セリフが味わい深い。同級生の運転する車の助手席に初めて座ったときの感慨、しみじみするね(わたしは経験したことがないが)。人生経験は貧しくとも、大切なことは全部アニメが教えてくれる。そして唐突に飛ぶクルマ!?笑っちゃうのだけど劇伴の「起こそうキセキを!」が名曲すぎて謎に感動してしまう。

 「この雨だって、全部流れ落ちたら、必ず星が見えるよ。だから晴れるまで、もっと、もっと遊ぼう」ですってよ。青春だねえ。

 

劇場版 ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow(2019冬)

 ABEMAの期間限定無料配信にてTVシリーズに続いて初視聴。挿入歌盛りだくさん、これが劇場版ラブライブ!かと圧倒させる大盤振舞いで素晴らしかった。展開的にそこは卒業生は歌っちゃだめだろとツッコミを入れること多々だったが、これもメディアミックスアニメの性か。

 元となった劇伴からそうだが、「キセキヒカル」があまりに名曲。スクフェスでもこれがおすすめで選曲されると神妙な心持ちになる。もしリアルタイムで見ていたらきっとライブに行くようになっていただろうね。

 

総括

 自分の中で当たり外れの差が大きい学園青春ものがとくに充実のクールだった印象です。旧作の履修は本数こそ少ないものの、これでラブライブ!シリーズをTVアニメについては一通り見られたので、今後より関連作品を楽しめることでしょう。

 前期の反省を生かすことなく、今回の感想記事も先延ばししてしまい、気づけば夏アニメも終盤に差し掛かろうとしています。主にスマホ向けゲームにかまけていた影響で、視聴本数が減っていたり、夏アイコンが手付かずだったりと、そもそもアニメ部としての活動が滞り気味です。それでも見た作品については全部書ききったのはえらいということで、ようやくすっきりした気持ちで2023夏アニメを楽しみたいと思います。