虚用叢

見渡すかぎりうつろなくさむら

東京遠征の記録

 9月11、12日にLiella!の4thライブの東京公演があり、その1日目に参加した。過去に2回、現地ライブのレポートを書いたが、今回は初の片日参加かつ初の遠征で観光を兼ねていたということで、ライブにも旅行記の中の一事として触れることにする。

hibihinichi.hatenablog.com

hibihinichi.hatenablog.com

 外泊を伴う観光旅行というのが自分にとってはごくまれな出来事で、道中のツイートや写真の補完になるような記録にできたらと思う。基本的には時系列に沿って、はしょりこそすれまとめはせず、だらだらと書いていく。

 

やらかしの前日譚

 さっそく旅立ちの話に入りたいところだが、その前に致命的なやらかしをしてしまっていたことを告白しておかねばならない。旅行のメインであるLiella!のライブが2日間あり、そのうちの日目に参加したことはすでに書いた。しかしわたしは、あろうことかその2日前の9月7日までずっと、日目のチケットが取れているものとばかり思いこんでいたのである。抽選で片日のみ当選したことだけが確かな記憶として残り、いつのまにかその当選日を思い違えていたらしい。

 少なくとも労働(シフト制)の希望休を申告する7月25日にはすでに勘違いが始まっていたようで、1日目に当たる9日にはきっちり出勤が組まれていた。算段どおり1ヶ月前に初めてとなる4列シートの夜行バスを予約して、その安さに満足げになるわたしも、開始5分で売り切れるはなから売る気のない物販予約にブチ切れるわたしも、いまにしてみれば滑稽そのものである。

 取り返しのつかない過失が発覚したのは、顔写真登録手続きで参加日を指定してのログインがうまくいかなかった時で、それはもう顔面蒼白である。当日労働していては新幹線でも大阪からは間に合わない。虚構の予定どおり2日目だけ参加するかと当日券を探すも珍しく完売。ライブは諦めて、10日に観光だけして帰るか、いっそバスも全部キャンセルして少しでも無駄な出費を減らすか……。

 悩んだあげく、職場での信用を犠牲に、100%私用で100%自身の過失が理由であることを正直に伝え、欠勤させてもらえないか急遽頼みこんだ。ほんとうにありがとう、ほんとうにごめんなさい。バスも行きの便だけ当日の昼行に取り直し、キャンセルでの一部払い戻しを合わせて2800円ほどの追加費用で1日目公演に参加できることとなった。

 

出発

 さて、そういうわけで予定外の昼行バスに乗って出発である。記憶が正しければ、実家以外への外泊は4年ぶりになる。勝手を忘れているくせに、当日の朝に準備を始める悪癖は変わらずで、荷造りは迷走した。夕べ眠れないとか言って2期のブルーレイを再生していたアホはこいつです。元々最小限の荷物しか持っていかない主義だが、限界貧乏根性が無意識に発動し、4食分の食糧(オートミール)を詰めた3つのタッパーで、ただでさえやや小さめのリュックサックのスペースを大量に食うこととなった。まあ、家だろうが外だろうが独りで高いご飯を食べても仕方ないというのは本音。

 一発目に撮った写真は、甲南PAのご当地プリント自動販売機。なぜか最近になって自販機に目が行くようになってしまった。理由に心当たりはまったくなく、ほんとうに不思議だ。甲斐性なしが無銭で写真撮影するだけですまんな。車内でも水道水の2Lペットボトルを前席背面の網にねじ込み、周囲の500mLペットボトルホルダーを威嚇していた。

世界初!!オールキャップで飲み口付き!!の自販機を撮らないわけがない。
道の駅もっくる新城の自販機兄弟。

 高速バスに乗るときはいつも音楽を聴いていたのだが、今回は履修をサボっているリエラジを流していた。ライブの予習になるし、そうでなくても曲を流しっぱなしより耳に優しく疲れないし、車酔いもしないし、通信量も控えめ?(高速バスのフリーWi-Fiを当てにするな)なので、長時間移動時の声優ラジオはとても良いかもしれない。

 

現着

 本日はライブ会場である武蔵野の森総合スポーツプラザをまっすぐに目指す。東京の土地勘はまったくないが、高速バスの各バス停到着時刻まで考えるとどうやら新宿からよりも神奈川側からの方が早そうである。東名向ヶ丘で降車し、徒歩と電車で向かう。中部の山中では雲が厚くかかっていたので不安だったが、幸いにもいまは晴れている。この2日間、台風が引き連れた夜通しの蒸し暑さは堪えたものの、運よく折り畳み傘の出番はなかった。Liella!は皆晴れ女。

見知らぬ料金所に独り放り出されるわくわく感。

 わたしは大阪に出るまでずっと四国の山の中で過ごしており、南関東は全部まとめて都会のように思っていた。川崎市なんて大都市のイメージだったが、海から離れた端の方は郊外を通り越して山なのだね。来たばかりで元気が有り余っており、調子良く歩く。不意に太鼓の鳴るごく小規模の地域のお祭りに出くわす。奇遇だね、わたしもお祭りに向かうところだよ。京王稲田堤駅まで来たところで、時間を見て電車移動に変わった。

 最寄りの飛田給駅に到着。ここから会場まで、ごった返すオタクの百鬼夜行が形成された。にわかにオタク臭くなったのは、わたしが都心側からのルートを選ばなかった影響も大きいだろう。駅そのものは郊外の普通の駅といった趣なのが不釣り合いで余計に異常性が高い。そもそもFC東京ヴェルディのホームがあるなんて、ここに住むの大変そう。

 そうして会場に到着。オタクライブの写真やアニメの舞台として見たままの光景だ。新しくてきれいだね。明日で予約していた物販の受取りはやはり今日は不可とのこと。もしブレードが予約できていたらそれこそ悲惨だった。明日の15時に受取りのためだけにこの辺鄙な土地までまた来るのは億劫なので、結局唯一の購入品であるパンフレットは救済措置の後日郵送を利用することにした。

「今日はここ」ツイートするの忘れていた。

 

入場

 会場内もきれい。座席は上手側にほど近いスタンド4階席(3段構造なので実質3階)。見切れが売り切れているだけあって超満員だった。メインステージはほとんど真横から見下ろすような角度で、奥のメインモニターは手前半分ほど隠れて見えず、脇のサブモニターもステージと比べるとかなり高い位置にあるため、メインステージであっても直接演者を見ていると周辺視野から外れる難がある。

赤い星が座席。

 上手側の通路のトロッコは、角度がありすぎてこれまた見えない。これは3rdの城ホールでもそうだったが、ここは矩形なので正面時だけでなく会場後方をの上手側を通っているときも見えない。近くに来ても隠れるのだから、スタンド席のトロッコってうれしくないね(3階席だったら見えたのかも)。演出の緩急になるから、不要だとは言わないけれども。

 メインステージは近いと言えば近く、角度が急な分だけ逆に考えれば演者がこちらを見てくれたときは直接こちらにだけレスがもらえているように見えるのはとても良い。とはいえ、真横から臨むと並んだ演者が横ではなく縦に並ぶため、ふつうにダンスを見る分にはやはりイマイチだと感じた。

 ただし一番の問題点は(まだ会場と座席の文句を言うのか)見え方よりむしろ音響で、これがライブの満足度を総じて下げたという印象が強い。メインステージ中央の真上すなわち座席近くにバカデカいスピーカーがぶら下がっており、基本的に音はここから聞こえる。トロッコやセンターステージ使用時は演者と音の発生方向が違いすぎて気持ち悪いが、まあこれは現代のデジタルライブならある程度割り切らないとね。そして、それが霞むほどの問題が反響音。中高音がすべて会場後方から遅れて二重に聞こえてくるのである。MCや幕間劇なんて完全にやまびこだった。わたしはけっして耳は良くないしライブも音響も知識ゼロだが、単純に音楽を楽しみたいという気持ちはある。2nd、3rdの城ホールでの体験と比べるとその差は歴然で、この会場はもうよいかなと思ってしまった。

 

開演

 長い愚痴は会場の方に押しつけ終わったので、ここからは良かったことを書く。まず衣装。どれも力が入っていてほんとうにきれいだった。開幕の「Jump Into the New World」、スカートが大きくてフワッとしていて、エレガントでありながらダンスをダイナミックに魅せてくれた。イラストや写真でのイメージが一変である。ゆっくりなびいたかと思えばキュッと方向転換し、いつまで見ていても飽きない。

 ソロの衣装も抜群に良かった。「ビギナーズRock!!」でキュートが天井を突き破った。色味、小物、それをのんちゃんが身につけることですべてが完成する。CDで聴いたときから曲もとても好きで、振りやしぐさがまたかわいい。3rdのときも声がよく出ていて驚いたのだが、キュートさを保ったまま一段とパワフルで通りの良い歌声になってすごい。

 「ミッドナイトラプソディ」にしても「Starry Prayer」にしても装飾の凝り方がこれまでと段違いじゃなかったか。1stアルバムのソロと比較にならないくらい、2ndアルバムのソロは曲自体がそもそも好きなので、4/9しか見られなかったのは惜しい。公演の半分がソロになるとバランスが悪いと言われれば間違いないが、もう回収できないかもなあ。「君を想う花になる」、「ガラスボールリジェクション」、生で聴きたかった。

 本公演を語るうえで欠かせないのが、声出しである。コロナ前はアイドルライブと無縁だったわたしには未知の世界で、半ば戦々兢々としていた。さっそくオープニングどころかその前のランダムbgmからその洗礼を浴びることに。まだ着席している中「TO BE CONTINUED」のギター前奏で突然会場中が「ヘイ!ヘイ!」うなり始めたときは心臓が飛び出るかと思った。

 声出し禁止が当たり前だったビギナーのわたしの所感としては、これまでの(特殊な)スタイルの方が好きかな。曲に合いの手を入れるのもたしかに楽しかったが、ボーカルの休符時のとりあえずの「フッフー」など、不要に感じるものも多い。ただ、意外とコールのない曲もまた多く、この辺はコロナ下で展開が進んだグループの特徴かもしれない。一方、「キラーキューン☆」の「ズッキュンキューン」やアニメ時点で組み込まれている「常夏☆サンシャイン」の声出しなしはもう考えられないや。11人での常夏は思い切った選曲、今回の楽しさナンバーワンだった。

 (アイドル)ライブとはお祭りでありコミュニケーションであるというのが、これまで参加してきての実感で、周囲のオタクが大きな声を出していれば、自分もという気持ちに自然となってしまうのだよね。MC前後や降壇時に、「ありがとう」はまだしも声優の名前を呼ぶオタクに自分がなるとはまさか思っていなくて、思い出していまさら怖くなってきた。

 さて、Liella!としては初となるユニット活動として、この東京公演では5yncri5e!がピックアップされた。このパフォーマンスが圧巻だったね。CDで聴いていたよりずっとすばらしかった。大熊さんのこと、最初はそうでもなかったのに、いつのまにか意識してしまっている。歌声がクールで、ダンス以前に立ち姿からかっこいい。ただ、彼女の目線はいつも客席よりメンバーに向いているように見えて、モヤモヤする……これが、恋?

 ユニットの展開を今後どう続けていくのかは未知だが、今回の5yncri5e!の2曲はこれまでのLiella!とはっきり色を分けていたと思う。立ち姿と書いたが、5人がそれぞれユニットコンセプトに合わせてひとが変わったとさえ感じた。センターステージの近くでまた見てみたいね。

 それとね、坂倉花さんの堂々のパフォーマンスにおじさんびっくりしちゃった。これがほんとうに弱冠19歳の新人の姿か?お披露目となった生放送では、素の表情や喋り方がいかにも若い子だと見ていたが、舞台での印象が違いすぎる。肩出し衣装で腰くねくねさせるのは煽情的にもほどがある。MCでも最も上手側に立っていることが多く、たくさん手を振ってくれた。

 意外な選曲としては、アニメ2期の特典3曲。1期特典曲がファンミ以外でスルーされ続けていることから、これらも幻の曲になると踏んでいた。どれも好きなのでうれしい。ソロを回収しきれなくて残念とは書いたが、代わりにこれらを入れてくれたと考えると納得である。

 セトリ全体としては、初回収15曲はほんとうにすごい、大満足。ただし全21曲中、メンバー別では最多のなこちゃんで15曲、Liella!名義の曲は11曲。円盤曲はほとんどLiella!としての歌だとしても、アニメとリアルライブとの時空がどんどん離れていくような感覚は拭えない。高校生という限られた時間の物語である以上は仕方ない部分もあるが、やはり本作の特徴である進級と新入生の追加の影響は大きい。メンバー5人が全員がソロ以外のほとんどの曲に参加した2ndとは、グループとしての印象はかなり変わったものである。今後も物語は大切にしてほしくて、その面でも今回の11人常夏は、「ずっと参加できなかった恋ちゃんが一番喜んでいる」と語ったなぎちゃんのMCの補完込みで最高だった。

 そんなふうに思っている中で、冬の5thライブの告知が翌日にされたわけだがどうよ。正直今回でさえ、3期アニメ放送前に3期生が加入してしまったことに困惑していたのだが。いちおう幕間のリエラのうた調ミニアニメでその辺の補足があり、セトリにもうまく繋げていたね。また大阪ないし、それ以上にどちらの会場もコンサートホールじゃないしで、いまのところは後ろ向き。

 

深夜徘徊

 さて、ライブで終わらないのが遠征である今回。元々の予定だと、日曜朝に夜行で着いてからライブまでのせいぜい9時間が自由時間だったのが、急遽丸1日使えるようになってしまった。お金もないし、宿にすぐ入ってもどうせ明日は時間を持て余すだろう。会場付近に留まって、賑やかなオタクの群れで寂しい思いをするのは嫌だったので、とりあえず移動することにする。

 この判断が愚かだった。きっと初めての声出しライブと久しぶりの外泊でテンションがおかしくなっていたのだ。方角だけ決めて目的地なく歩くのはなかなか面白く、時間と体力の消費先のない無職時代はよくやったものである。今回も最初の方は気分良く進んでいた。

謎漢字。

ラッミス、カレーとお米の自販機だよ。

 せめて多摩川沿いに緩く下りながら川崎市街地方面に出ればよかったのだ。しかしなあ、「藤沢」や「鎌倉」の響きが持つ魔力が西の人間にはあるのである(たぶん)。去年の秋アニメでその辺りが旅行先として出たのが記憶に新しかったり、昔ZARDをよく聴いていたりしたことも引力としてはたらいたのだろう。

 幹線道路から外れて南下を始めると、にわかに丘、いや山であった。ロードサイドに途切れず建っていた飲食店やコンビニはおろか、自販機も一斉に姿を消し、宅地と森が続く斜面を進む。そして最悪なことに、ここにきて尿意を催した。トイレは行けるときに行っておいた方がいいらしいね。

 おしゃれは足元から、おしゃれはガマンの格言に従い、私用では足元をガマンしてコラボスニーカー(

White atelier BY CONVERSE × ラブライブ!スーパースター!! ALL STAR COLORS R HI 澁谷かのん | PremiumStore.jp(プレミアムストア)

)を履くようにしている。会場を出てから2時間近く経っただろうか、両足の小指にはマメができ、左のかかとは着地のたびに骨がむき出しになっているかのごとく痛む。それでも歩みを止めることはできない、なぜならトイレを探さなくてはならないから。住宅街のトイレスポットといえば公園と相場が決まっている。それがどうだろう、寄り道と回り道を繰り返し公園を4つ5つと見つけるが、いずれにもトイレがないのである。川崎市政の陰謀か?

 横暴な市政をけっして許してはならないが、先に決着すべきはほとばしる尿意とである。南へ、南へ、とにかく山を抜けるのだ。そうして無心で歩き続け、ライブ会場からじつに10km、暗闇を照らす聖地へとたどり着いた。ありがとう、セブン-イレブン 川崎菅生1丁目店。トイレを借りられたことももちろんだが、店内が明るいというだけで心底安心している自分がいて驚いた。

 股間の緊張から解放されると同時に、全身の疲労が現実を覆ってきた。歩き続けたまま日付もまたいでいたらしい。単なる空腹を超えた、一時的な栄養失調である。持参の食塩付きオートミールと、身体が求めるがままに買った肉⸻7Pサラダチキンハーブを広げる。バス停のベンチで食べる、初めての食事だった。

 7.5時間の高速バス移動に始まり、3時間のライブ、残りはほとんど歩き続けである。30分ほどの休息で気分こそましになったが、身体の方は立っているだけで苦痛である。グーグルマップを開けば、夜通し歩けば着くと考えていた湘南の海は、進んできた道のりの何倍も先にあることがわかる。地球って大きいんだなあ……。これからどうするよ……。坂の途中の傾いたベンチで足を揉んでいたわたしの元に、一条のメロディーが降ってきた……。

動いてないと探せない 休んでも止まらないで
夜が明けた空には 太陽…!

 うおおおお!!!動け!!!!

自転車用のカーブがイカしている歩道橋(写真がヘタ)。

結構な上りなのだが速度を落とさないとだめらしい。

 そうして見つけた太陽⸻ゆう遊空間 あざみ野店。

これはチェックアウト後の朝に撮った写真。

 会員登録料込みの24時間フリーで2310円、タバコとトイレの臭いを消臭剤でごまかしており、臭い。値段相応に、初の神奈川宿泊先としては最底辺だろう。それでも、シャワーと柔らかい床、それ以上のものは何も要らなかった。

 

2日目

 冷房の風が直接当たる部屋だったせいか、3時間ほどで目が覚めた。さっさと部屋の変更とブランケットの貸与を頼めば良かった。体力が回復しきっていない中、早々に出発しても時間を持て余すのが目に見えており、ぼおーっと本日の計画を立てる。

 一般に、旅行の計画は旅行そのものより楽しいとされる。しかし、わたしの場合はこれが億劫でしかたないらしい。今回の残念な学びである。出掛けたら出掛けたで楽しいだろうと浅薄に信じてはいるのだが、その幸福を最大にするための事前準備をするという努力と想像力と欲求が欠如している。逆にアニメの女の子ってエネルギッシュで希望にあふれていて夢にまっすぐでありがちで、そういうところが良いんだよな。

 さて、そんなこんなで気がつけば9時を回るところで、時間が惜しくなってきたので出発する。漫画はいっさい読まなかったが、ヤングジャンプNo.37・38合併特大号の結那とさくちゃんのグラビアは、互いの肉感のコントラストが芸術的だった。凹みの目立つ2Lペットボトルを満タンにして、いざ灼熱のお外へ。

 足の痛みは回復には程遠く、地球の大きさも思い知ったので、公共交通機関は惜しみなく利用していくことにする。最寄りのあざみ野駅から一本で行けるなんか大きな都市(適当)ということで、まずはブルーラインで横浜へ。

 虹2期の聖地ほかをざっくりと回るつもりだったが、すでにくそ暑いのと、(中学時代だったかに)一度訪れたことのあるばりばりの観光地をあらためて巡るのが面倒になって、すぐに駅に引き返してしまった。さっそくぐだぐだである。

(左)ててて駅長。(右)シンボルの木がイチョウ自治体大杉問題。

 

お台場

 というわけで北上、虹ヶ咲の本拠であるお台場へ。ここから一日かけて24区内を反時計回りに一周することになる。天王洲アイル東京テレポートりんかい線の駅名にしびれる。

観光地に新たな魅力を吹き込むもの、それがアニメ。

 駅着いてすぐがこれだったので他にパネルがないか歩き回ったのだが(下調べ無し)、虹ヶ咲のにの字も見つけられなかった。ODAIBAゲーマーズのことを知らなかったのは完全にミス。次遠出することがあれば、観光地の前にアニメショップを調べておくべきだね。

 前夜の教訓から早めの補食が大事ということで、デカいショッピングモールのちんまりとした休憩スペースにて最後のオートミールを食べる。たった500gで1800kcalその他ミネラルが摂れるので、家でも外でも便利。聖地とは無関係にデカいショッピングモールをただぶらぶらするのも嫌いじゃないが、そんなことは大阪でもできるので移動を再開する。

 太陽は高いが、見通しが良く風がある分さほど不快ではない。東京のど真ん中とは思えない、無人の広大な空間を気分良く散歩する。朝夕の通勤しかしなかった今夏分をゆうにしのぐ日焼けをこの遠征でした。

スケボーと花壇とのことばの距離にしばし戸惑う。そこに乗るのか!

割れているのかと錯覚するほど窓の反射がゆらゆらしているビル(写真だと伝わらない)。

 

月島

 お台場散歩に大満足し、有明駅からゆりかもめ豊洲駅まで、そこからバスで月島へ。ちょっとした距離ではあるが、時間短縮以上に足を休ませられる意味が大きい。日中と夜間との違いはあるが、しばしば見物で立ち止まったり電車で座ったりするだけで疲労が昨夜とまるで異なる。バス移動はここだけだったが、運転手がぶっきらぼうで怖かった。大阪でもほとんど乗ったことなくてすまんな。交通系IC買わないとだめですか。早く世の中のあらゆる対面決済がクレカのタッチ決済に対応してくれ。

 さて、春アニメの江戸前エルフの舞台であることがここに寄った理由。お台場から一転してふつうのきれいな郊外といった趣で、24区って全部一様な都会だと思っていたけど面白いね。人間さえ少なければ自転車で回るだけで生涯楽しめそう。

しなやかで おれにくい ヤナギのき ほんとうに好き。

 偶然選んだルートもあるのだろう、ふつうに宅地があり、ふつうに公園があり、ふつうに学校があり、ふつうに役所があり、ありふれた生活の地であったところから、ほんの一路抜けたところで、観光地に様変わりした。昼としては遅い時間だが、アーケードは所狭しと林立するもんじゃ焼き店に並ぶ人々でにぎわっていた。ただ観光地と言っては語弊があるだろうか。地域住民は普段どれくらい食べているのかしら。お台場での補給でお腹は空いていなかったが、ちょっとぐらい店に入ればよかった。

 今回、聖地巡礼と呼ぶにはおこがましい無計画な街歩きをやってみて思ったことがある。わたしにとって、アニメ作品の舞台が現実の都市を借りていることそのものは重要でなく、都市から作品の気配を感じ取ったときにこそ感動を覚えるのかもしれない。もちろん、それとは別に萌えパネルや萌えポスターはなんぼあっても良い。

 

浅草

 月島駅を発って浅草駅へ。この際、大江戸線浅草線を各蔵前駅で乗り換える必要があるのだが、これが面白かった。この2つの駅舎は200mほど離れており、かつ直接連絡していない。一度連絡専用のオレンジの改札機を抜けて(切符が戻ってくる!)地上に出て、特別の通路でも何でもない、道路わきの通常の歩道を通行し、新しく電車に乗るかのように出入口から目的の駅に入って、またオレンジの改札に先の切符を通すのである。前を歩くひとがいなかったら絶対迷っていたわ。

初めて見た薄型。この後も薄型は市街地で何度か目にした。東京では珍しくない?

 やれ浅草、人間の密度が高すぎる。ワールドダイスターという作品がなければ絶対に来ていない。なんで外国人観光客はここに集まるの。

 ここで先に花やしき通りに行ってから曙湯に出向く痛恨のミス。つくばエクスプレス浅草駅から遠ざかってしまった。再びあのごった返す人混みに戻るのははばかられ、徒歩で西方へ歩き出す。

 

上野

 気分の問題も大きいだろう。にわかに疲労を感じるようになった。ところで、過去にひとりで東京に来たことが一度だけある。就職活動、といっても面接ではなく1日インターンとかいう、いまにしてみれば絶対に遠方から行く必要のないものが目的だった。これを書きながら当時のレシートとメールを漁ってみたら、4列の夜行に乗って帰っていたことが判明、今回が初めてではなかったのだね。ただ、三食ちゃんと店に入って牛丼やらそばやらを食べていたようなので、やはりいまの方が貧乏である。

 そのとき、半日のインターン以外の時間の大半をつぶしたのがこの上野エリアである。伝聞でよく目にする秋葉原などと違い、イメージの上書きの機会が少ないからこそ、余計に自身で見たままの光景をよく覚えている。バカデカいのに意外と道を塞がない駅、首都高速の曲線的な脚、御徒町のうるさい灯り。BOOKOFF PLUS 上野広小路店も、目にした瞬間に当時立ち寄った店舗だとわかった。

 ただ、懐かしさに浸ると同時に、次の行動に悩んでもいた。疲労や空腹に加え、何よりスマホの充電が残りわずかになってきたのである。理想としては、動き回った最後にネカフェでスマホの充電を兼ねて休憩、シャワーで汗を流して夜行に備えるというもの。しかし、夜行の出発までまだ6時間あり、先に充電が切れてしまう。Twitterを開くのは自重するにしても、地図その他調べもの、写真撮影、現在時刻の確認すらできないのは、旅先では詰みに等しい。

 

秋葉原

 そんな具合に悩むもとい問題の先送りをしていると、気づけば秋葉原まで歩いていた。冷静に考えれば、充電を途中に挟むことは避けようがないのだから、さっさと休んでおくべきだったのである。梅田のヨドバシのような充電スポットを期待してビックカメラに入ったのだが外れ(ヨドバシAkibaの方にはあったらしい)。カフェか、レストランか、カラオケか、少しでも安く済ませようとぐるぐると回り、結局快活クラブに倒れこむ。そうこうしているうちにスマホがお亡くなりになったせいで、会員登録にカード発行料で370円余分に取られるわ時間はかかるわになったのだから始末に負えない。

充電スポットより萌え絵が簡単に見つかることに感動(している場合じゃない)。

 ここの快活クラブは、昨夜の郊外のネカフェと比べるとあまりに清潔で高級感があったが、逆に言えばそれだけだった。リクライニング席は出入りや靴ひもを結ぶのにも苦労するほど狭く、ドリンクは150mLほどの紙コップにちまちまと1個ずつ作られる自販機タイプでかったるいものだった。ゆっくり寝たいならカプセルホテルで良いんだよな。

 休憩を終えると外はすっかり暗くなっている。バスまでまだ3時間余りあるが、実際の残り時間以上に、のんびり観光をしている場合ではないような気分になる。とはいえ、どこかを歩くしか能がないのでまだまだ歩く。

大通りに当たり前のようにラブライブの看板があってうれしい。

 正直なところ、わたしはサブカルチャーに好意的ではあるものの、やってきたことといえばほとんど断続的にテレビアニメを見てきたということだけである。大阪に長いこと住んでおきながら、日本橋のオタク街に行ったこともない。秋葉原でも何をするものなのかわかっていないが、とりあえず自分でも知っている二大アニメショップには立ち寄っておくことにする。

 まずはアニメイト。衝撃の7階建てであり、1階部分は通りとシームレスに外国人でごった返している。早々に階段へと退避、するとこの一年のタイムラインで見知った文字列を目にし、くたびれた大腿にいまいちど電流が走る。

 これが⸻ポップアップショップ⸻。こういうところでやっているものだったのか。通常の売り場で雑多な商品と並ぶパネルは少し見慣れてきたが、単体の作品だけにフロアの大部分が占められている光景は、近寄りがたさすらある、ショップというよりサンクチュアリだった。

きん!ぱつ!きん!ぱつ!

 下の階もひととおり回って退店。デレマスのフィギュアが充実していて良かった。

 続いてゲーマーズへ。郊外にも店舗のあるアニメイトと違い、ゲーマーズは都心にしかないイメージで、見るのも入るのも初めてだった。開幕からヨハネの出迎えで興奮。さすがラブライブのお膝元である。1階の構成が「書籍新刊・雑誌・ラブライブ!」なの良すぎる。ネット通販が普及した現在、ここでしか買えない、もらえないものというのはほとんどないのだろうが、こうしたショールームとして実店舗も維持されていくのだろうか。

もはやラブライブショップなの、新参としてコンテンツの巨大さにビビる。

 1階の空気を吸い込んだ後は、シャワー効果にまんまと釣られるように最上階のこれまたポップアップストアへ。今回は複数作品がそれぞれ3畳ほどの狭いスペースで展開されていた。

これがうわさに聞くアニメキャプチャ学園のポスター発表か。
ライアー・ライアーを見ていてほんとうに良かった。見ていないアニメの写真は貼れないから。

 そしてもうひとつ、この旅でとてもうれしいことがあった。それは、初めて自分がオタクとして対面で他人と話したことである。4階のブシロストアにてまたまたラブライブのグッズを眺めているとき、不意に面識のないオタクから話しかけられたのである。いわく、サンシャイン!!からのシリーズのファンで、久しぶりにアニメショップに来たのだとか。自分もスーパースター!!を今年に入ってから見て、シリーズのアニメを後追いして好きになった口であることを答えると、ラブライブについてにとどまらず、かれこれ10分ほどその場で立ち話をした。

相手「最近はアニメ見られていないんですよね。転生王女と天才……だっけが好きでした」
自分「ああ!アニスとユフィの立場が途中から逆転するのがまた良いですよね、最終話はとても感動的でした」

相手「今期だと何かおすすめあります?」
自分「(自然と繰り出される "今期" !)いやー、……あらたまって聞かれるとぱっと思いつかないものですね。何か見てるんですか?」
相手「幻日のヨハネは見てます」
自分「(そうきたか)…さすがですね」

~しばし流れる沈黙~

自分「……!七つの魔剣が支配するって作品見てます?」
相手「いや、知らないです。どんな作品なんですか」
自分「タイトルどおり剣と魔法のファンタジーで、舞台は学園なんですけど、バトルといい友情といい王道で熱いんですよ。作画も、CGをうまく合わせてたぶんけっこう良いと思います。そうそう、OPがまた良くって、とくに入りがかっこいいんですよね」

 これもう完全回答パーフェクトコミュニケーションだろ。Twitterアニメ部の先輩!自分、やりましたよね!?

 いや、本音のところは相手は百合好きで、BanG Dream! It's MyGO!!!!!こそがほんとうに必要だった答えだったのかもしれない。なんなら、そこはブシロストアなので大々的にフィーチャーされており、周囲のオタクたちからは隅の小さなスペースで垂れこんでいるラブライ部員たちを白い目で見てさえいたのかもしれない。でも、見てないアニメを口に出すことは許されなかった。ちなみに、秋葉原のアトレはこの作品とコラボ中で、それこそそこら中パネルやら何やらでいっぱいだった。未履修であるバンドリの続編だろうし、タイトルはなんだかオラオラしているしで、KVすら確認せずにスルーしていた7月の自分を恥じている。すみません先輩、まだまだここで鍛えさせてください。

 そんなこんなで、予期せず発生した会話はとても楽しかった。かつて大学では部(アニメ部ではない)の先輩後輩にアニメ趣味を公言しているひともおり、仲が悪いわけでもなかったものの、自分はせいぜい理解はあるが興味はさほどない人間を気取って話を聞くばかりだった。べつにその姿勢を否定するわけではないが、アニメについて対等に語り合う相手がいることがこんなにもうれしいものなのかと、このたびは感動したのだった。また、Twitterは最後まで迷ったまま聞かず終いだったが、これもどうすべきだったのか結論は出ていない。

 さて、ゲーマーズを出てもう少しぶらつく。

左撮影時どいてもらったギャルに「自販機好きなんですか」と聞かれるも、自販機の今期アニメがあるのだと答えられなかった。おれは弱い。

 暗くなり、ついでのようになってしまったが、初代ラブライブ!の聖地の写真も。過去の旅行にてただの一建物だったUDXが、こうして作品と出会ってからはまったく別物に見えるのだから興味深い。男坂は自分の高校時代の神社前の階段と比べると大したことないなとか、神田明神は本殿に向かって左側が妙に現代的、俗物的で戸惑うとか、やはり足を運ぶことで得られる体験というものがあった。わたしはほんとうにケチで賽銭などろくに出したことがないのだが、ここではラブライブのすべてにありがとうの気持ちでいくばくかの小銭を投げ入れた。

2023年にUDX神田明神をありがたがって撮る絶滅危惧種

 

原宿

 いよいようかうかしていられない時間になってきた。最後の目的地、原宿である。時刻は8時を回るというのに、湿度が上がってむしろ昼間より暑いくらいだ。それでも、東京に来てスパスタの舞台にノータッチとはいかない。JRで御茶ノ水から新宿へ。どこまでも人混みから逃れられない。くわえて、あろうことか武蔵野の森から帰ってきたLiella!民とかち合う。どうして こんな処にいる(画像略)。錯乱したわたしは、原宿とは逆方向の電車に乗ってしまう。

 なんとか原宿に着いたは着いたものの、余裕がないので竹下通りを歩くだけで終了。穏田神社くらいは回りたかったし、なんなら渋谷から「渋谷に来るのは久しぶりん」とツイートしたかった。不完全燃焼どころか、表面すら焦げていない心で、バスの出る新宿に引き返す。次はせめて原宿ゲーマーズの開いている20時までには来ようね。

ありがとう原宿。次はもっとまともな時間に来ます。

 

帰宅

 最後は残念だったが、それだけ日中にたくさん回ったということでもある。前夜の徘徊はあれはあれで楽しかったし、電車の乗り間違えも体力気力ともに限界だったことを示している。なんにせよ、一番大事な帰りのバスにちゃんと乗れて、家まで帰れて良かった。

2日間で7万歩超。

 コンディションは万全ではなかったとはいえ、普段から労働でほとんど立ちっぱなしの歩きっぱなしなので、もっと自分の足腰はやれると思っていたよね。1週間経っても左のかかとの痛みは消えなかった。エクストリームウォークって化物なんだな。

 

出費と総括

 最後に、今回の遠征費用をまとめておく。元々の高速バス代が7800円、これに取り直しの行きのバスからキャンセルでの一部払い戻しを差し引いた追加額が2897円。(大阪除く)現地での電車と都バス代が計2090円。ネカフェで2310+1130円。食費は持参物で190円、現地調達で508円。お賽銭50円?旅行バレした職場へのお土産に渋々の1080円。締めて18055円なり。

 ライブそのものはたとえば単日で11000円、パンフで3500円、ブレードも買うならさらに4500円となる。これに対し、長距離移動だけで8000円、1泊するならこれに宿代もかかるとなると、やはり地元開催に替わっての遠征費用はばかにならない。ただ、今回の感想としては、ついでの観光を含めた満足感は、出費に十二分に見合うものだったと思う。ツイートやブログに残す前提があったのも、これまでの街歩きと異なるところ。ありがとう、フォロワー。引きこもるのが楽しすぎるのが悪いのだが、それにしてももう少しお外に出ても良いのかも。

 また、行き当たりばったりも面白いが、下調べも少しはしておいた方が良い。これだけ自動販売機を撮っておきながら、期間限定で大森にいたらしい本元のハッコンに会いに行かなかった失態。どのみち時間はかつかつであったが、上野に寄ったのだからサイゲ展も事前に知っていれば行っていただろう。

 さてさて、だらだら書いていたら2週間以上経ってしまった。ライブも含めてとにかく楽しかったし疲れた。夏アニメの感想も手をつけなければならないし、おわり!