虚用叢

見渡すかぎりうつろなくさむら

2023冬アニメ感想

 2023冬アニメも最高だった!ということで感想。

 ほんとうは全部書き終わってから上げたかったのだけど、ちょっといつ終わるか見当がつかないので随時更新にします。感想をTwitterじゃなくブログにする良さって、ひとつは読む側のタイミングを選ばないことだと思う。U149をまだ見られていないのでしばらくTLを開けていないのだけど、そんなふうにネタバレを気にすることもなければ、反対に見逃して数日前の感想が見つからないということも少ない。だから書けた分だけでも先に公開してしまいます。まずは新作10本と旧作3本。気が向いたときに、気が向いた作品の感想を流し読んでもらえるととてもうれしい。4月に秋アニメの感想を上げているフォロワーにも勇気をもらった。

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<更新履歴>
2023/04/08 アルス/永久少年/大雪海/天使様/おにまい/陰実/虚構推理2/砂糖林檎/ス教/利便事屋/明日ちゃん/サニボ/虚構推理 残り18-9
2023/04/13 ダンまち4-2/ツルネ2/D4DJA/転天 残り14-8
2023/04/14 トモちゃん/にじよん/人間不信 残り11-8
2023/04/25 防振り2/HIGHCARD/BuddyDaddies/UniteUp 残り7-8
2023/06/19 残り全部!

 昨クール感想記事で予告したとおり、今期は作品ごとにこれはと思う回を勝ち抜きさせながら視聴した。勝ち残った話数、これを執筆前にもう一度見返して、全体の感想に加える形で振り返っていく。

hibihinichi.hatenablog.com

あやかしトライアングル

 ハレンチなのはダメです!!(萌えキャラ)な健全な生徒だったのでTo LOVEるはあまり知らないのだが、これは想像より王道少年漫画といった雰囲気で見やすかった。一方で、性癖を破壊される気配はあまりしないので、今後も友情や青春、コメディーを楽しんでいくことになるかな。冬は第6話まで、夏に第1話からあらためて放送ということなので、面倒だし単話選出も先延ばしします。本編とは関係ないけど、放送延期の差替えで放送された原作者とプロデューサーによるオーコメ、とても興味深かったので他の作品でも真似してみてほしいね。

 

アルスの巨獣

 アニメ以外のサブカル趣味が皆無に近い人間なので、漫画好きやノベルジャンキーに気後れせずに済むオリジナルアニメに寄せる期待は大きいのだが、これといった魅力を感じられないまま終わった。ものものしいナレーションとか食卓を挟んでの異種族の会話とか、名作アニメ感、質アニメ感を出そうと肩肘張った雰囲気が制作の力不足との溝を生み、見る側としても気楽に楽しむ姿勢を取りにくかったように思う。せっかくだから良かったところを書きたいのだけど、ろくに記憶が残っていなくて、たとえばクウミが新しい二つ名をもらうシーンとか……(それもあまり思い出せない)。羊宮妃那さんの声が良い。

第5話「力比べ」

 完走してからもう一度見たけど、「これは女、ヤマビトの女は小さい」以上の選出理由がなかった。

 

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。2

 楽しくてかわいい安定の2期だった。1期と比べてバトルギャグ面でのパンチが弱いと感じていたのは、欠点を補うようなテイムモンスターの登場で、キャラそれぞれの戦闘スタイルが丸くなったように見えたからかな。3期来るなら天王の玉座をもっと見たいね。

第5話「防御特化と触手。」

 毎話80点取ってくる優等生だから選出が難しかった。触手、ウィスピーウッズに捕まる双子クマ、白蛇のにょろにょろ3クエスト並行、メイプルとサリーで感覚おかしくなっているけど、マイユイやカスミはふつうに死んでいるんだな。一歩萌え力で遅れを取っていた印象のカスミに幼児化という武器を取り付けたのやっぱり2期最大の功績だわ。ロリ早見沙織ボイス良すぎたのでおすすめ作品教えてください。正直言えば触手プレイはもっとえっちに描いてほしかったです。

 

永久少年 Eternal Boys

 15分枠で2クールの変則構成。実質本編の尺はただの1クール分になるけど、OPEDは24回流せるし、本編は15分アニメにふさわしい展開スピードと軽快さで、ジャンルの引っかかりのなさのわりに見やすかった。クールの変わり目でストーリーに柿崎さんの退場という大きなターニングポイントを設けたのも巧みだったものの、肝心の後半のストーリーそのものには全然納得がいっていない。

 第2クールのOPで柿崎さんの紫も入れた7色が使われているのを最初に見て、彼のプレーヤーとしての復帰および7人となったエタボというユニットの完成を確信したはずが……。武道館ライブのトリでサプライズ参加という雑な消化、あんまりだよ。映像的にも最高の盛り上がりを出すぞ!みたいな意図がまるで感じられないし、大切なデビュー曲を使っておきながら音源使いまわしでステージにいるはずのニコライが不在という惨事。

 かといって柿崎さんがマネージャーとして敏腕だったかというとそんなイメージもない。圧倒的下積み不足下の武道館ライブをメンバーが無茶やって奇跡を起こすということも叶わず、「満プロなんて潰れて当然、永久少年なんていなかったんだ」と納得しつつあったところで、またちゃぶ台返し。ほんとうに何だったんだ。

第7話「初ライブ」

 ボロクソなラストの放送から4ヶ月ぶりに見返してみたが、良すぎてギャップにびっくりした。アイドルアニメお馴染みの池袋サンシャインシティっぽいショッピングモールでのリリイベ、分不相応な企画を勝算なく断行して手痛い目見るの、このころから変わっていなかったんだな。ただ、大事なのはこの後なんだよな。愚直に営業をやってきた真田さんならではの機転、規模は小さいけれども、ある意味身の丈に合った、現実的な成功体験が胸をすく。人脈を生かした新しいひととばしょの結びつき、名刺を手渡しして宣伝って最高でしょ(サラリーマンやったことないけど)。激しい振付を控えたミディアムテンポの「Eternal」が、このアイドルとアニメの持ち味を象徴している。

願えば叶うなんてこと
簡単に言えないけど
遅すぎるなんてないよ
追いかけていこう

 クソダサおっさん円陣とか、初めてのファンレターとか、すべてがかみ合っていて、ほんとうにどうしてこの路線で続けられなかったんだ。

 

大雪海のカイナ

 サブも含め登場人物のひととなりや掛けあいに人間味があって、そこが魅力だったかな。ストーリーはこの一区切りとしては期待していたものと違い過ぎるものの、ロストテクノロジーで切羽詰まった世界、一方を殺すか心中するかしかない世界を、青少年の冒険が覆さんとするジュブナイル面は嫌いじゃない。おとなほど魅力に欠けるのはわざとなんだろうね。一面的な技術のわりに、生き延びていくための知恵がなさすぎるけど、なまじ一度野生を離れた人間が、築き上げた文字や体系化を失うとあんなにも弱くなるのだろうか。

 ただ、SF部分にかんしてはガバガバすぎてそういうものと割りきっていくのが疲れる。設定をひとが創るファンタジー世界こそ、高校の古典力学くらいは勉強してから出してほしい。

 細谷佳正さんって何役だったかなと思ったらエクスタシイィィィ↑↑の兄ちゃんか。OPEDのCMの落ち着いたタイトルコールがめちゃくちゃええ声や。

第5話「救出作戦」

 リリハが囚われの身ながらアメロテに毅然とした態度を取るのがいいね。本編でわざわざ描かない人格形成のバックグラウンドを、一幕のひととひとのやりとりから感じられるのが好み。最終話を終えて見返すと、口上が結末のフラグにもなっているのだね(その結末の方は……)。高橋李依さんは昔から個人的な萌え声のツボとはずれるのだけど、はきはきしゃべる演技でキャラへの好感を上げてくれるなあというのが、この1年の印象。

 雪海中でのアクション、洞や建物内が潰れたり浸水したりしないのを見るに、雪海は空気とさほど比重の変わらない軽い流体とするのが自然。それはそれで軌道樹はどうやって自身を支えてんだとか、浮遊棒や浮遊袋や飛んでる浮いてるやつらはなんやねんとか、背景がきれいだねーと言っている間がない。

 

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

 「くっつくまでがラブコメ」だとは思わないのだけど、真昼が厳しく当たらなくなった4話くらいから毎週視聴するのが苦痛だった。付き合ってもいない、SEXするわけでもない、若いだけの男女が一室で延々と仲睦まじくしゃべっているだけですやん。土ヨルは深夜アニメのピークタイムであり、翌朝に何から見るか本来は楽しみなはずが、本作の実況がTLに必ずいるという信頼からこれを先に流す必要があった。言い方を変えればTwitterなしではまず完走できなかった、ありがとうフォロワー。

 ウェハーチョコは一度労働の帰りに2駅分歩いて7軒だけセブンイレブンを巡ったが発見できなかった。転スラ2期のウエハースはあった。とかく本編の充実度と比較して存在感のあるアニメだったように思う(Annictの視聴数も多いしじつは世間では評価されているのか?)。梅田のタワーレコードに主題歌「ギフト」のCDの3形態がちゃっかり目立つ位置に並んでいたときには謎の感動があった。裏面を見たら全部ポーズの違うオーイシマサヨシで笑った。

第10話「夢の中の天使様」

 このエピソードだけは別格に面白くて、真昼がすべて周くんの妄想だったら良いのにと思っている。ラブロマンスに露骨なエロは要らない派だったのだが、プラトニック一辺倒でもそれラブロマンスである必要ないじゃん派に鞍替えした。その点でも案外自分にとって大事な作品になるのかもしれない。

 

お兄ちゃんはおしまい!

 OPもEDも、もちろん本編も、作画に圧倒され続けた。今期は良いOPいっぱいあるけど、その中でもこれは一発で、とんでもないアニメが始まったぞと思わせる傑作。

 枚数が多くて細かくよく動くのはもちろん、パステルで明るい全体的な色味がかわいくて好きだった。背景にドットのトーンを入れる手法は初めて見たのだけど、意外とうるさくなくむしろ静止していることがはっきりして、動いているキャラの方を引き立てていたように感じた。キャラデザの方は、瞳の中心の白抜き、これも初めて見た。原作とは乖離しているし、リアルの瞳とは真逆だからかなり思い切ったやり方だよな。かわいいかと聞かれるとよくわからないが、これも全体の明るい画づくりに貢献していたように思う。

 ストーリーやキャラクターの方にはあまり没入できなかったかな。大変なことをやってのけたみはりの心情が量れなくて、かといって科学者としての分析や倫理が物語に機能しているようにも感じられなかったのが大きい。かえでともみじの名前どっちがどっちだったか最後まで覚えられなかったのに、いまになってもみじろうで確認できると気づいた。

第6話「まひろと二度目の中学生」

 モブウエイトレス羊宮さん!じゃなかった、モブカチューシャちゃん!でもなかった。いやなぜ6話を選んだかというと、この辺りでTSしたまひろのスタンス、生き方の指針みたいなものが飲み込めてきたから。みはりのことはよくわからないと書いたけど、まひるは被害者でありかつ未曽有の体験のただなかにあり、行動原理の異質性を認めても寛容でいられる。もしわたしが女子中学生になったら、きっとセクハラ衝動を抑えられないだろう。一方でまひるは自分の身体も一度眺めただけで「こんなもんか」と受け容れてしまうし、この話でいえばあさひに抱擁されてもお日様の匂いに癒されるだけでまるで野性のENERGYがない。ああそうなんだ、この主人公はふつうに女子中学生やっていくんだという納得が、満員の女子更衣室の画面の前で流れていった。

 

陰の実力者になりたくて!

 秋の13話時点ではつまらなかったが、後半はけっこう楽しめた。最終話も派手に締めくくったね。決定している2期が楽しみかというと、そうでもないけど。

第16話「見えざる真意」

 ひとつはアンネローゼ・フシアナス。若山詩音さんの声が良い。やっぱり女性声優のキャスティングは三十路ばかりの守りに入ってはいかんですよ。ろくに感情移入できるキャラが出てこない点が本作の大きなマイナスだったが、この子は裏社会に関係してこないので興醒めさせられない。首鳴らしとくしゃみの模倣シーン、ボイスもあいまって萌えとギャグの絶妙なコンビネーションだった。

 ジミナ・セーネンも主人公への嫌悪感を和らげるのに一役買っていた。見た目がガキから成人になるだけでも違うらしい。54歳(54!?)の緑川光さんがこんな役やってくれるのふざけていて感謝しかない。懸かっているものが重くないブシン祭という舞台も、主人公の悪ふざけをする場として違和感なく見られた。

 

虚構推理 Season2

 雪女、萌女。いや、雪女編以外も面白かったのだけど、あまりに雪女が萌女すぎて再登場しないかずっと引きずっていた。エピソードはきわめて技巧的で、1期の良さそのままに構造から視聴者を翻弄させてくる。この作品は虚構のでっちあげがお家芸なんだなと理解させたところで、やっぱり真実を暴いて琴子がそれを突きつけるのとか、またこのパターンかと飽きさせることがけっしてない。ところで、OPEDの映像がちょいちょい差し替わっていたの何か意味あるんですかね。

第15話「雪女のアリバイ」

 雪女!!!!!萌女!!!!!!!!!!!!

 ……すみません、取り乱しました。まちがいなく今期最高の萌女です。ああーはやくわたしも女難の相にあって質の悪い女に好かれて人間不信になって持て余した金と時間とともに余生を山奥で雪女としっぽりやりてー。このアニメを見ている間だけは、自分の名前が「まさゆき」でないことを激しく嘆く(そもそも他人に名前を呼ばれることが皆無な人生だが)。虚構推理ノータッチのひとは、1期も他の話数もいいのでとりあえず雪女編の14、15、16話を見ましょう。どの雪女も萌女だけど、一番情感のあふれていた15話を選出。

 

シュガーアップル・フェアリーテイル

 フルスロットル陰湿アニメたまらん。人間と妖精の使役関係って時点で怪しく感じはしたものの、毎週毎週出てくる人間が最悪な倫理観を更新してくるのすごいっすね。史上稀に見る陰険幼なじみジョナスさんをOPEDからリストラしなくていいんすかと小物の手前どもはずっと気になって仕方なかったんすけど、退場したかと思わせて再登場しまくるしもうそういう世界なんすね、はい。

 大事なのは、キャラやエピソードの胸糞っぷりに負けない卓越した表現力で、これを欠いてはこんなに好きにならなかったと思う。生殺しがすぎる最終話、第2クール!!!!!はやくきてくれーっ!!!!!

第4話「王家勲章の行方」

 もうこのアニメ全部好きなのでどの話数挙げてもいいんですが、未体験の衝撃を受けたこの話で。何が衝撃だったかというと、前話との高低差なんだよね。第3話はジョナスさんがその本領を発揮した回で、まだそういう作品だと知らなかったからただただ胸糞な印象だけが残った。きっとこの話で切った視聴者は数多い。そしてその最悪な印象からなかば義務感で再生したこの第4話でボロボロ泣いた。落として上げる、言うだけなら簡単だけど、たかが娯楽の数多ある深夜アニメ、1週間待たせるリスクは計り知れない。そんなもの度外視して、続きを観てくれた視聴者を最大限歓迎する、そんなつくり手の気概を感じた。そういう意味で、この選出の半分は第3話によるものでもある。

 さて、それでは内容を振り返っていくとしますか。冒頭、返り血まみれでしゃがみこむアン・ハルフォード。平静に見下ろす寒色・黒系のシャルとの対比が美しい。原作の巻タイトルも「銀砂糖師と○の××」(○には色が入る)で色彩がひとつのアクセントなのね。まだほど遠いふたりの距離感にグッとくるのも、振り返りならでは。「わかってる」と繰り返すアンが放つシャルへの批判は理屈になっていなくて、いつもは聡くて前向きな彼女の動転ぶりがむなしい。この作品、クラシック調の音楽がまた好きで、ここでも木管の静かで哀しい響きが、受けとり手のいないアンの嘆きを包んでくれている。

 Aパート、お約束の悲哀の雨から始まる。シャルに羽を突き返すときのボスっとしたSE、OP前パートでもそうだったけどシャルの硬いけど重くない質感がよく出ていてグッジョブ音響。砂糖菓子づくりはもちろん、しばらく後の馬車が品評会に乱入するシーンの迫力あるSEなんかもすごい。

 嗚咽の雨がお約束なら、再起の雨上がりもまたお約束。泣きはらしてまっさらになった瞳、見つめられることで妖精は誕生するという設定、初めてのオリジナルなモチーフの想起、うまいことつなげるものだ。市ノ瀬加那さんの最ロリボイス、覚えました。服の返り血の色が鈍くなっているのも芸が細かい。アンが目を覚ますまで、馬車の中で服が見つかるくらい待ってくれていたシャルかわいいね。淡々としたままのようで、服を差し出す大きな背中は微笑んでいる。アンにとっては苛酷な雨だったかもしれないけれど、シャルにとってはアンを、ふたたび人間を、対等なパートナーとして受け容れられるようになる契機の雨だったんだね。

 舞曲で彩られる砂糖菓子づくり、そしてそれを手渡すシーン。まるで料理番組のような真上からのカメラ。屋外で突っ立って待つシャル、動かないときはほんとうに動かない。静かに感情を整理しているようだ。立ち姿がまた美しいし、長命な妖精の時間感覚を思わせるんだよな。戦士妖精にしては小さいとされるシャルだけど、小柄なアン目線で、さらに小さな砂糖菓子を掲げて、羽、触りたくなっちゃうよなあ。あったかいんだ、羽。主旋律にバイオリンが加わって音楽が止み、お姫様抱っこからのクルっと一回転、馬車にストン、ポッと赤らむアン、萌。緩急仕事しすぎ。

 来たぜ品評会。「僕の服、よく似合うじゃない(平らな胸)」じゃないんだよジョナス。ここからの高貴で緊張感のある音楽がまたすごくいい。

 ミスリル・リッド・ポッドさんのお出まし、アンの頭の上に乗ってポーズをそろえてジョナスを糾弾する画が良すぎる。その前にジョナスの悪行をさらせと後押しされたアンが、一瞬つらそうな表情をするのもすばらしい。こういうのひとつ入れてくれるかどうかで解像度が全然変わってくるんですよね。作画の力の入れようほんとうにすごいよ。

 来るぜ、最高のシーンが。めいっぱい振りかぶってからのぶん殴り。いや当時はこれで清算して退場だと思ってたよ。

 1点だけ、結局ここで銀砂糖師に選ばれなかったことがご都合主義で納得いかなかったのだけど、1話をとおして「アンがオリジナリティーを見つけるまで」がテーマになっているのだよね。銀砂糖師になるという母の模倣の延長にあった夢から、大切なひとのための、シャルのための砂糖菓子をつくるという夢へと変わる。馬車に散乱した母のレシピも、潔癖の証明のためだったはずのつくりなおしでシャルのことを思い浮かべてしまうのも、ラスト自ら馬車の手綱を握ったのも、すべては真の職人となるための第一歩。

 

スパイ教室

 スパイっぽい属性が入っているだけで、キャラ萌えとギャグを嗜む作品だとわかってからはとても楽しめた。キャスティングが凡庸でなければ満点だったけれども、「声だけだと8人いることがわからない」がメタネタになったり、遅延した本編に差し替えられた声優番組が面白くなったりもするからな。

第7話「File 《草原》のサラ」

 クラウスも含めて灯のメンバーの個性がよく発揮されていた感動のコメディー回だった。寝言のリリィとツッコミのサラのコントは本作屈指のネタ、その後のクラウスの手料理を堪能した朝食後のシーンがまた良い。この作品、サブタイ一覧からは個人回を並べているように見えるのだけど、各1話や1シーン、1カットに複数人の個々の魅力、あるいは組み合わせの妙、あるいはただ人数が多いだけのおかしみをうまく収めていると思う。横並びした適当な3人が順にひとこと料理の感想を述べているだけでもう面白い。直線で仕切られたキャラのアップショットが出てくるだけで笑ってしまうから、わたしはコメディーにそうとう甘いのだろう。でもそれをさしおいてなお、センセ!コールからのクラウスとリリィの掛けあい、締めのにーく!コールは歴史に残る展開でしょ。テキスト、間、構図、論文が1本書ける。

 

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか IV 深章 厄災篇

 正直惰性で見ていて、キャラもベルくんと紐神様とヴァレン某とまれいたそくらいしか覚えていない中、夏の迷宮篇を迎えた。パーティーを組んで正統的にダンジョン攻略していくこっちはそれでも抵抗なく楽しめたものの、厄災篇の方は視聴姿勢が準備できていない感が強かった。復習していない自分が完全に悪いのだが、早見さんボイスのエルフってそんなに重要なキャラだっけ。深手を負った主人公と思い入れのないサブキャラの絶望のダンジョン逃避行、なかなか視聴継続に腰が重かった。

第21話「優しい噓 (デイドリーム)」

 そうか、この話を描くためにこのアニメをつくったのか。深層という極限の環境に転落したふたりによってしかなされない肌の重なり。互いの体を温めるために抱き合う、たったこれだけを実行するまで、恥じらいと正当性をつぶさに堅苦しく言語化して攻め口説いていくリューさんも、いつもどおりあたふたしているベルくんも萌えすぎ。これぞ究極の萌えですよ。

 戦闘と成長を中心とした冒険系の作品を見ていると、適当なゲーム(で疑似体験)したいなーとよく思うのだが、アニメに期待するゲームでは体験しえないこととして、主人公の生きざまを見たいというのがあるようだ。その点ベルくんがかっこいいのは、打算も何もない、全部助けるという英雄たる生きざまなんだな。ジャガーノートは去ったという優しい嘘を認め合うふたりの最期は美しい。けれどそこから止まらない震えと激痛とともに立ち上がるベル・クラネルは、やはり物語の主人公なんだ。

 

ツルネ ―つながりの一射―

 一昨年の秋だったかに再放送で見た1期は、高校スポーツ、武道ものとしては好きだけど、男同士のねっとりネバネバな関係がネックな印象だった。2期になってそのマイナス面および特色(?)がマイルドになり、より楽しく視聴できた。全然弓道のこと知らないのだけど、毎回毎回同じへたなやつが外して、うまいやつが皆中するものなのですかね。当たるか外すかの二択、単純明快な結果だけに、それだけを見ていると気が狂いそう。結果が付きまとう競技としての側面とは別に、おそらく弓を引くという身体的、原初的、感覚的な快楽があって、我々は実際にそれを味わうことはできない。けれどもアニメーションのすべてをもってキャラクターの体験を画面越しに伝えんとせん、そんな情熱を作品から受け取っていた。

第9話「裏反る意志」

 合同合宿回、若いねえ、青春だねえ。あさっての方向の努力のようにしかみえない県大会の再現練習とか、風呂で反省会したりとか(風呂狭すぎてホモホモしいんだよなあ……)、他校の女子部員がやたら気になったりとか(それはそれとして白菊乃愛嬢でアニメ1本つくってくださいよろしくお願いします)、眺めているだけで無限に栄養になる。二階堂パイセンもかわいい。強キャラでありながら精神は未熟というかガキなのとても好き、あとは貧乏くさいところも。

 

D4DJ All Mix

 フル3DCGキャラの硬さ、ありていにいえばかわいくなさという課題を、表情にデフォルメのレタッチを入れまくる力技で解消しようとする試み、勉強になる。ときおり挿入されるSDなんかにも、アニメの自由さと多様さを教えられる。

 曲の方は1期と比べるとキャッチーさが失われてあまりピンとくるものがなかった。2年前にアプリゲームを触ったときにはハピアラ以外にもけっこう好きな曲あったのだけど。まあこの辺は繰り返し聴いているかどうかだけでも評価が一変するもので、楽曲アニメにありがちな難しさだよな。

第9話「ホシトカミ」

 ツルネに続いて9話、合同合宿回を選んでしまった。といっても魅力は全然違って、こっちの合宿は青春の解像度の高さとか共感とかはなく、良くも悪くも美少女アニメ的ウソの世界。アイドルアニメもといDJアニメに一番求めるのは曲とステージパフォーマンスなわけで、この回はそのモチーフの発見の過程が良かった。一時は自己紹介ソングという迷走をしたフォトンちゃんたちだったわけだが、今回は合宿で思い出すことになった咲姫の故郷の星空、安定の原点回帰というわけよ。10月といえばハロウィーンハロウィーンといえば仮装と安易にいくのではなく、これも原点回帰、収穫祭で厳かな雰囲気ときたか。迷走の先頭を行ったノアの博覧強記ぶりがかみ合ったのもうれしいね。

 「合同ライブやって委員会!♡」にて「星空か……」と思案する横顔の胡桃のショット、奥の委員長が「胡桃さん……?」といぶかるまで間が長く、印象に残る。これが全天スクリーンのライブ演出への下地だったのもいいね。自由で多様が許されるアニメにおいて、ライブ会場は異次元に飛んでいっちゃってもなんら支障ない。けれども会場を星空にするのはあくまでVJの仕事として、(現実的かはさておき)手段や根回しを描く。美少女コンテンツ、声優コンテンツとしての虚構を背負いながらも、それがこの作品のDJに対する誠実なところだなと。

 

転生王女と天才令嬢の魔法革命

 もっとお気楽にコメディーと女の子どうしのいちゃいちゃを楽しむ作品だと想像していたら、王位継承がどうだの貴族がどうだの転生がどうだの不老不死がどうだの、メインキャラクターたちが苦悩する場面が多くて意外だった。それ自体が悪いということはなく、むしろアルガルドの凶行の顚末なんて兄の方に肩入れしたくなる思いだったが、全体的に重い人物像のわりには伏線が足りないというか、背景の事前の説明不足を覚えた。たとえば自身の転生そのものに深い罪悪を持ち続けているという主人公の心情そのものは、いわゆる転生ものとしては珍しい部類じゃないかと思うのだが、それを語るのは最終話。出自のユニークさや親への後ろめたさ、自己肯定感の低さを視聴者に理解させる重要な設定なのだから、もっと早期に見せてはだめだったのか。

 ひとつ忘れていた、当期アニメアイコンに描いたイリア・コーラルさんにはお詫びしないといけない。クラシカルメイドといえば腹黒と罵倒(夏目准たそ~~)であり、PVを見ておてんばなアニス嬢を加隈亜衣低音ヴォイスで罵ってほしいという願望を表情に反映してしまった。まさかここまで聖人だとは思っていなかったんです、ごめんなさい。いま気づいたんですが冬→春のアイコンで CV. 加隈亜衣リレーしているな、大好きです。

第12話「彼女と彼女の魔法革命」

 この最終回はほんとうにすばらしかった。なんなら1クールこの回だけでも良かった。まずサブタイトルが良いよね。転生王女にしても天才令嬢にしても、それらは属性、タイトルとして目を引いても呼称としては愛がない。かといって名前をそのまま入れるのは安直だし距離が近すぎる。物語を紡いでいく愛おしきふたりから少し離れて「彼女」と「彼女」と呼ぶ、この語り手は視聴者でも良いのだが、リュミエルと解釈したい。飛行シーンに挿入されるモノローグ、淡々としながらも柔和さ、慈愛、喜び、いろいろな感情が滲んでいて涙が出てくる。釘宮さんありがとう。

 Aパートに戻り、決闘。とくに合理性のない女の子どうしの決闘とはそれだけで良いものであるが、結果的にアニスフィアが焦がれていた魔法の美しさをユフィリアが見せることにまた意味がある。お互いが欲するものをお互いが持っており、またそれを高め合う仲であるというのが、完成されたカップリングという感じ。虹と空、素直に感動。

 力関係はすっかり逆転してしまった。順番を入れ替えても成立する「彼女と彼女」のサブタイがここでも味わい深い。わたしは百合に免疫がないのであんまりえっちなのは気圧されるのですが、やっぱりキス、とりわけ口と口は格別ですね。Aパートのラストでピークを迎えたなと穏やかな気持ちでBパートを鑑賞していたら、最後におかわり!!!!!!!美しいものを目にしたとき、ひとはどうして汚い声を出すのでしょう。

 もうひとつだけ、アニメっていいなと思ったのが、人間飛行のデモンストレーションの場面に、たくさんの虹が架かっていること。ハロー現象とか環天頂アークとかいろいろとあるらしいが、晴れた空に架かる虹を文章で科学的に説明しても陳腐。それが違和感なく、物語の終幕を祝福するように画面を彩るって最高だなと。魔法でほんとうの虹も架けちゃうんですけどね。

 

トモちゃんは女の子!

 ノーマークだったけどめちゃくちゃ面白いラブコメだった。群堂みすずとキャロル・オールストンのキャラ立ちすぎ。そのコンビ含めメインキャラがそろいもそろって重たいやつら、明るい画面とコミカルな演技、音楽でごまかしているけど、自分の愛の実現のために計算高く非道なこともしょっちゅうお互いにやっているよな。お互いさまなのが重要なポイントで、もしこの中のだれかが私欲によって一方的に陥れられるだけだと円満に視聴できない。全員が愛すべきヤなやつ、それぞれ強みと弱みを持った絶妙なパワーバランスを描ききった。

 1話が2、3本立てになっていて、サブタイのカットとコールが毎回冒頭に挿入されるのも内容に合っていてグッド。あとはキュートなEDに続いて登場人物が規定のbgmにのせて折り目正しく予告するタイプの次回予告があったら完璧だったわ。

第4話「笑顔の理由/女子っぽく戯れたい/ヒーローはよく転ぶ」

 複数本立てでこの話数が特別好きと決めるのは困難だったね。ジュンイチロウの心情がいまいち量れなかった序盤、解像度が大きく上がったエピソードが「ヒーローはよく転ぶ」だった。モラリストゆえ高校生が暴力で解決するのは賛同しかねるものの、愛するひとを守るために動いた結果がそれならしかたない部分もあるよね。裏で戦い自分のことを誇らない、女にベタベタしない、こういう精神面にジュンイチロウの強さとかっこよさを感じる。ハンター試験のスシみたいなトモの煮干し握りを平然と食べるのも男前。内心我慢しているとか逆にとてもうまそうにほおばるとか一切ない、素であれなのが良いね。わたしはとにかく強いキャラが好きなのでジュンイチロウは当然好きで、ジュンイチロウに強いトモも好き、トモに強いみすずも好き、そしてみすずに強いキャロル・オールストンが一番好きなんですね(完)。

 

にじよん あにめーしょん

 かわいかったね。CGのSDキャラで5分枠だけど、ちゃんと映像はアニメなのが楽しい。

第9話「妹王決定戦」

 KTT(かすみん・トーテムポール・トランジション)良すぎる。2度もやってくれるのうれしすぎだったのに第10話でも使ってくれて感謝しかない。絵面だけでもう面白く、さらにツボなのが同時に鳴き声も入っていること。これより前にかすみが手で押し出すようにスライドしているのが合わせオシャポイントMAX。デフォルメやギャグアニメに映像干渉能力持ちがいるってこんなにも心強いんだなって。

 

人間不信の冒険者たちが世界を救うようです

 枚数かけられないけど大きく大げさに動かすぞみたいな作画が印象に残っている。デッサンが狂っているのか中割りの問題なのか技巧的には見えないものの、なんとなく意志が乗っているように感じるというのかな。

 ちょっとした境遇や出会いによって進む道の明暗がたやすくわかれてしまう、そんな人間の危うさを誠実に描いていたと思う。主人公たちもリスタートしたようでいて、酒、女、賭博といった煩悩を切り捨てることはない。世界を救うような勇者というより世界の一住人として平等に凡庸に存在しているんだなと。EDのへちょい線と実写フェルト、脱力したボーカルも作品とベストマッチだった。

第7話「賭博指南」

 前半はこれといった強い魅力を見いだせない中、第6話の算数ベアナックルとかいう奇をてらったワードで、ここがこの作品のピークかとわかったような気になり、視聴を中断していた。いや、全然わかっていなかったわ。早めに終わった作品で空いた時間に視聴を再開したのだが(空いた時間で感想も早めに書いとけ)、むしろ後半伸びる作品だった。

 鬱屈とした過去を持つ主人公パーティーに対して、だれしも多少は人間不信なところあるよねっていうツッコミに回答してくれたのがレオンという名脇役。堕落したレオンも、ティアーナとの対話を通じ、彼らもまた脆くも寄りかかり合う存在であることを知る。「ばかかよあいつ。それを仲間って言うんじゃねえのかよ」獄中にてこぼすひとことが胸を打つ。ニックたちはあの日偶然酒場で出会って仲間となり再起したわけだけど、いつかレオンさんにもそういう日が来るよ。

 言語センスも作品の特徴のひとつだった。銀虎隊のリーダーおよび兄の死因を、アバンでは「ありがちな死、知性も品性も関係のない、ただのちっぽけな死」とだけ語って濁し、戦闘シーンのクライマックスで「仲間だと思っていた糞野郎に殺された」と明かす。事実を語るだけなら冒頭の回想から「仲間に殺された」と言えばいいし、なんなら映像とその後の人間不信に陥った状況だけからでも十分伝わる。アニメとしては冗長ともとれる婉曲な言い回しが布石となり、後の滅の剣との押し問答での激昂が引き立つ。良くも悪くも原作そのままなのか、一貫して小説っぽいモノローグとダイアローグだった。

 

HIGH CARD

 OPEDともにオサレで大好きだった。イギリスのビジネス街やファッション、外車への憧れみたいなものは別段持っていないけれども、背景にしろキャラデザにしろパキっとかっこつけて画に落としこまれていたと思う。

 能力バトルものとしては少し陳腐。数字の大きさに応じた能力の強さと代償の描写にあまり説得力がない。能力自体もインパクトに欠けるのが多いよな。武器を出すとか植物や岩を出すとか、本質的に大して違わなくない?これは能力者の人間性の濃さや潜在能力で補えるものでもあるけど、その辺のフォーカスももっとやってほしかったな。2期は気楽に雰囲気を楽しみたい。

第1話「ONE SHOT」

 ずっと心に残っていた初回はやっぱり特別オサレだわ。時計を掏るシーンほんとクール。偶然の連続にみえる結果が、じつはひとりの計算によってすべて仕組まれた事象であることを巧みに描いている。スリのついでの善行で、素行は悪くとも根は弱者に優しいというフィンの憎めない人柄まで導入している。

 ラッキーおっさんとビー玉野郎の能力とキャラも抜群。掴むアクションは偉大なるゲンスルーを思い出す、ビー玉は音も楽しいし絵になるね。この2人もっと刷ってほしかった。12話しかないのだから焦点を絞らないと印象に残らない。ただ、拳銃を向け合うフィンとクリスのラストショットなんかをいま見ると、初回と最終回で描きたいものはちゃんと一致していたんだなと。

 

Buddy Daddies

 シリアスを持ち込んだわりにはいろいろご都合で片付けすぎだったなと思うも、なんだかんだ凸凹トリオの成長を楽しんだ作品だった。PV時点で一番期待していた電話越しの照井春佳ボイスの保育士がストライクゾーン外だったことだけが心残り。

第6話「LOVE IS BLIND」

 これ書くために3週間ぶりに見たのだけど、ミリちゃんこんなにかわいかったっけとびっくりした。久々に孫と会ったおじいちゃんってこんな気持ちなのかな。「ありがとううさぎさん、ミリのおともだち、たすけてくれて」って自分のことを差し置くミリちゃん優しすぎるし危なっかしすぎる。

 ゲームの話をきっかけに素直になって、謝ることができて、弁当を分け合って。おとなを介さずとも案外子どもはしっかり前に進んでいく。並行して、悪意あるおとなから一線超えられないように見守ったdaddiesの距離感も絶妙だったね。動物園から帰ってきて、ミリがケロっと一騎と駆け寄っていくのも、一時のきまぐれでなくこれまでの信頼関係ゆえなのだろう。

 ところで、モリオカートの作画、マリカーそのものだった。それっぽいbgmはともかく、こういう本筋には必要ないカットで高等な遊びを楽しませてくれるところも、
P.A.WORKSありがとう。風呂に入りながらもう一度、この親子の何が良いのか考えていたのだけど、難コースをコースアウトしないようにお互いにブレーキを踏みつつ、いくところではハンドル切って3人一緒にアクセル踏み抜くみたいな関係にあるのかなって。

 

冰剣の魔術師が世界を統べる 〜世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する〜

 KVやPVの期待できなさと実際の面白さがこれほど乖離した作品にかつて出会ったことがない。アニメの面白さってまだまだ自分にはわからないことだらけなんだなと。

第2話「世界最強の魔術師である少年は、演習を開始する」

 アニメーションそのものを笑いにできる、これがこの作品で最も衝撃を受けたことだった。何を食べたら画面の5分の1ほどの高さにもなる大きな縁取りしたゴシックの「DAY1」を堂々と横切らせる発想に至るのだろう。いや、動く絵の滑稽味だけでなく、寸劇としても諧謔に富んでいて、1週間の期限をDAY4で終わらせるスピード。笑っていたら間髪を入れずにシュッとスナップ利かせて投げられた紙切れをアオリでバシュッと(そうとしか表現できない)受け取る無駄にかっこいいカットで腹がよじれる。個室での対面の場で王国内に帝国の密偵がいることを伝えるためにはまったく不要なんだよな、このやり取り。しかもパスからキャッチまでの時間が不自然なほど短い。おそらくはこれらすべてを意図的に演出しているのだから感心する。クラリスの波打ち続けるツインテールや顎で血流が分かれているかのような赤面表現は萌えでもあるのだろうが、わたしにはやはり笑うべき場面に思われた。

 

ブルーロック

 2クール目もとても面白かった。強弱をつけたキャラの線画や抽象画のような背景やエフェクトで画面が熱い。潔の理屈っぽいモノローグがうっとうしくない、視聴者の先導として効果的にはたらくのも、この映像の力強さあってだと思う。

 潔がいかにフィールドを支配するかを主眼にして試合は描かれていくわけだが、成長途上の一人称視点ゆえにその時々では見えていないものがたくさんある。一歩引いて作者気分で先の展開を予測するも良し、同じ目線で個性的なキャラクターと破天荒な育成プログラムに振り回されるも良し。

第13話「TOP3」

 2クール目のトップバッターの本話、最終盤と対比的なつくりで美しい。ここで第1クールのOPで始めて第2クールのOPをEDに持ってくるだけでなく、最終話のEDに再び「カオスが極まる」を持ってくんのやばすぎんだろ。

 二次セレクションは個人プレーと連携プレー(化学反応!)をうまい塩梅で見せてくれたね。トライアングルはサッカーの基本、アオアシで習ったやつだ!それをTOP3が圧倒的エゴでねじ伏せる様式美。いまここに、潔-蜂楽-凛の新たなトライアングルが生まれた。「ボーっとすんな、おかっぱ。お前のこれからは、俺が握る(CV. 内山昂輝)」で絶頂。

 

ポケットモンスター めざせポケモンマスター

 懐古厨に優しすぎる作品。アニポケは最新作まで見たり見なかったりと視聴歴にムラがあるが、初代無印に関しては小学生時代にCS放送で全話履修しており、とりわけそのころの雰囲気の強い本作には郷愁を覚えた。夢のようなスタッフクレジットで、お話もキャラクターもあのころの、まさにオレたちが見ていたアニポケが令和によみがえっていてすごい。ポケモンというと当然本家のゲームについてもスルーできず、その面でも劇伴には記憶を強く刺激された。OPもEDもありがとう。

第7話「ラプラスにのって♪」

 ベイリーフチコリータ)、ラプラスと、2大好きなサトシの手持ちが登場。ベイリーフにお触りするヌマクローさんはホウエンに帰ってどうぞ。

 ホエルコが天高く跳ねて再び穴に入り、進化していっそう抜け出せなくなるバカバカしさ。こんな話が2023年に見られてよいのだろうか。愛嬌を振りまくだけでいっさい仕事をしないピカカスといい、雑に扱われるロケット団といい、人力コイキングメカといい、この作品を見ていると自然とありがとうのことばが出てくる。なによりやはりカスミは至高のヒロインなのであった。

 

魔王学院の不適合者Ⅱ ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~ part1

 あやトラと同じく第6話でストップ、夏から再度放送らしいので単話選出はお預け(サボり)。わたしの中では魔王様サイドの善性と強さを深く考えず安心しながら見る作品という位置付けなので、ぜひとも夏には順調に放送されてほしい。

 

もういっぽん!

 キャラデザで敬遠していたのだが、第1話を観て物語と映像の巧さに驚いた。最後にやっと海に行くところなんかも含めて、再始動の柔道部を軸に一貫してふつうの女子高校生たちを描いているところに好感が持てる。要所の柔道シーンの作画がほんとうに魅力的で、グリグリダイナミックに動くのももちろんそうだし、競技の特性か背中や後頭部で語るショットが印象的だった。でももうちょっと万人萌えするキャラデザなら……と考えた日は正直たくさんある。

第4話「3人いるから、大丈夫」

 選出理由はこれ。大型ルーキーにポジションを奪われる努力家の先輩ほど共感を呼ぶものはなくて、天音さんの方に肩入れしていたこれまで。永遠視点の回想を開始礼のタイミングで入れてくるとは。柔道着を着ると勇気が出る由来を語りつつ、永遠の心情にグイっと視聴者を引き寄せる。先輩を倒したばつの悪さだけ前話から引っぱっておいて、その先輩との大事な思い出を立て続けに後出しするの卑怯だよ。

 

UniteUp!

 アニメ筋が発達してきて男性アイドルものも抵抗なく見られるようになってきた。わりと王道に高校生アイドルのデビューを描いている印象で面白かった。OP映像しょぼいなと思っちゃったし、度重なる放送延期に表れているように大変な制作体制だったのだろう。しかし、ためた力を解放した最終回のライブは楽しめたかはさておきすごかった。CloverWorksがアイドルライブを一から十まで模写するとこんな感じになるんだなって。

第8話「外さないと」

 単話としての評価は別格に高い。第7話の五十鈴川きゅん回もかなり良かったのだけど、それ以上にこれは年間10選に確実に入れたい。カメラ越しの赤面大毅きゅん萌え。じゃなかった、飛行機に乗り遅れるアニメは名作。わたしも飛行機のチケット5回くらいしか買ったことないけど、2回乗り遅れたことがある(隙自語)完璧なスケジューリングをすると乗り遅れるように飛行機はできていますからね。

 さて、万里くんの高校生離れした英語力のなさはおいておいて、ことばも文化もわからない海外で独り僻遠の車道を歩き、たどり着いた砂浜で空腹に立ち尽くすというのはかなり寂しいものがある。そんな逆境を切り開くのが音楽、笑顔、アニメってあんた、百点満点だよ。いやー、アイドルアニメでこんなサイドストーリーが描けるんだ。

 ストリートミュージシャンのオッサンがまた良いキャラで、コミカルな言語不通コミュニケーションミスも王道。語気強めの"Smile!"からの正面のアップショットでにっこり歯を見せたシーンが心に残る。

 そして特殊EDもめちゃめちゃ良い!ちゃんと海外ロケ撮影回を生かしつつ、最後の最後に万里くんが自らオッサンとファンと撮った写真で締める。その笑顔にはサングラスもマスクもあるはずがない。EDも含め、単話としての脚本の完成度がほんとうに高いわ。プロダクション名の由来、万里くんのファンとの対面交流および写真撮影、仲間内での食事から孤独な空腹を挟み、ファンとの食事で結ぶ。描いているもの全部がつながるのが美しい。

 

REVENGER

 虚淵さん、じつはあんまり見てなくて(まどマギサイコパスもアルドノアも未履修)、ほぼ覚えてないけどコンレボが好きだったなあくらいのイメージ。夏のRWBYは退屈だったけど、これはとても面白かった。質アニメと見せかけてツッコまずにいられないギャグアニメ、でもやっぱりシリアスもやるよっていうわたし好みの絶妙なバランスだった。「金箔を用いて華麗に、そして無慈悲に標的を始末する、利便事屋のリーダー。」という意味不明な公式の碓水幽烟の紹介文が、本編を見ていっそう謎に包まれること間違いなし。OPの後奏でメインキャラが画面いっぱい回りながら奥に飲まれていくの好き。

第12話「The Sun Always Rises」

 大真面目に、この作品の最高なところが全部詰まった最終回だった。幽烟さん、あのちっちゃな砂子筒で刺したり砂子吹き付けたりしても攻撃できるんだ。けっしてトンチキを忘れないながらもバトルの作画は一級品。徹破先生が倒れながらも引き絞ったままの弓のアップショットをじっくり動かしながら、弦が弛緩する瞬間は引きのショットに移って画面の左端に低コントラスト、小SEで見切れて一瞬だけ、この一連がフラグになりつつネタバレにならない繊細な画づくり。かませのトリ頭っぽい博打キャラが計算高く勝るのも良い。そしてやっぱり幽烟さんの戦闘に理解が追い付かない。対トラ戦(対トラ戦???)の優雅な身のかわし、トラさんはお池にはまってピラニアに食べられる(ピラニア?????)、気づけばポカーンと口を半開きにした鳰たそと同じ顔で画面を見ている。

 Bパート、金属音の飛び交う刀剣同士の殺陣、王道とは良いものだ。それでも邪道を目一杯詰めこむことを忘れない。主人公の生い立ちや苦悩にるろ剣を重なる部分があったのだけど、まさかの縮地(名前そのまま)や流水の動きもやってくれる。

 そんなとんでも身体能力の雷蔵が霞んでしまいかねないほどに、やはり碓水幽烟という男はやってくれる。一通りサブウェポンを披露してからの必殺技、顔面に金箔をバーン!!!、背中にマリア様をドーン!!!!!!最高のアニメです。

 罪を犯した者には、その贖罪の意識とは無関係に報いを受けてほしい、その方がフィクションとして美しいという願望をわたしは持っていて、(ハエみたいなサイズのホタルを除いて)ラストにも大満足。雷蔵は絵を描くという新しい生き方を見つけたようでいて、その実罪の意識が薄れることはまったくなかった。許嫁の恨噛み小判がありながらそれとはあずかり知らない私怨によって絶命するのも、利便事屋とは別の原理による結末で美しい。雷蔵はその穏やかな表情に偽りなく、刺された時点で救われていたのだろう。けれども、幽烟に看取られるシーンを追加することで、視聴者も遺恨なくEDを迎えることができる。最終話だけでいえば今期一だったかもしれない。

 

老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます

 山野光波殿がメチャクチャやるアニメ。そうと理解してからは毎週日曜の朝が楽しみだった。OPもいいけど、ゆるいEDも好き。お金は大事と言いつつ、あんまり執心無さそうな感じが本編にぴったりだった。

第4話「雑貨屋ミツハ」

 荒唐無稽さを楽しめばいいんだと肩の力が抜けたのがこの話。異世界でお金を稼ぐのもその手段として都で雑貨屋を営むのもまあ許したとしても、ツッコミどころを数えたらきりがない。本作ではたびたび光波殿が課題をネット検索して打開を図ろうとするが、この作品そのものがまさに中学生がネット知識だけでお話を書きました!って感じなの、狙ってやっているならすごい。独善的ながら正義感が強い、計算高くもあれば想像力に欠けてもいる、お金にまっすぐなようでかなり回り道をしていると、山野光波殿というキャラクターの絶妙なバランス感覚も光っていた。

 

明日ちゃんのセーラー服(2022冬)

 BS朝日にて初視聴。噂には聞いていたがまさかここまですごいアニメだとは。BSを導入していなかった去年はたしか黒井津さんと地上波の放送時間が重なっていて、両方の第1話を観たうえで黒井津さんを優先し、かつ配信でわざわざ視聴することもないと判断したのだった。実際1年越しの第1話の印象も似たようなものだったと思う。作画はきれい、キャラデザは好みじゃない、主人公およびその一家には惹かれない、話は面白くない。

 そのうえで、これは確信をもって言える。1年前もそのまま第2話さえ再生していれば、目の色を変えて完走していただろうと。弱いと印象づいていたキャラとエピソードが、ひっくり返った。この作品では、明日ちゃんや木崎さんのようなカリスマより、古城さんや戸鹿野さんのようなふつうの女の子の方により魅力を感じた。これ、自分としてはけっこう珍しいのだよね。それが色濃い第9話なんてほんとうに好きで、ありふれた中学生のありふれた日常、そこに明日小路という光が差すことで、ほんの少しだけ特別な青春が生まれる。過去に見てきたどのアニメのショッピング回よりも良かった。

第6話「明日、お休みじゃないですか」

 と、前置いてなんなのだが、この回を差し置くことはできなかった。好みがどうとかそういう次元を超えているのだよね。アニメをとおして作品としても作中としても他のクラスメートとは1段特別な存在として描かれる木崎さん。「ずっと私のこと見てるでしょ」というセリフから瞬時にイントロ、シャボン玉を吹く木崎さんのカットへと切り替わることで、これがこのOPの完成形なのだといきなり思わされた。OPの背景に謎空間が一切ないのって珍しいと思うのだけど、そこにどこまでも美しい明日ちゃんワールドをありのままに描くぞっていう気概を感じる。ただ容姿が優れているとか才女とかいうだけでなく、だれしもなんとなく目が行ってしまうひと。メタ的には生徒たちはもれなくアニメ的美少女絵として描かれているはずなのに、作中目線ではこの子はふつうなのだろうとか、きっとこの子は美人扱いでこの子はカワイイ系とか、なぜか伝わる描き分けも絶妙だよね。

 そんな別格なふたりが惹かれ合うのはわかりきったうえで、どう距離を近づけていくのかを描くのが腕の見せ所なわけだけれども、これがほんとうによい。明日ちゃんが家への招待を一度失敗、諦めてから、場所を移して別の話題から偶然にそれが成就する。でも、これは明日ちゃんの魅力とそれに引き寄せられた木崎さんによる必然でもある。いつだって物語は出会いによって駆動する。かさねてすばらしいのは、この展開はきっと二度とないという点。木崎さんは自ら誘う体験によってはじめて「明日、お休みじゃないですか」の意味するものを知ったわけで、それが今後は明くる休日を聞かれた時点で誘われていると察する体になった。こうしてひとは大人になっていくのだなあ。約束は赤面して見つめあった瞬間にすでに成立していて、図書館フィールド魔法「お静かに」の詠唱後、指が絡まなかったり絡めとりにいったりただただ愛を確かめあうように「楽しみだわ///」と耳元でささやく木崎さんの耳が真っ赤でさあ!!!!!!(大声)

 わずか5分に満たないこのAパートが終わり、後半も最高の時間が続く。しかしすごい作画だ……。ルーブル美術館に飾ってあるらしい一枚絵もだけど、スポーツアニメ顔負けの迫力ある映像に感嘆する。キュートな一点物の洋服を脱ぎ捨てて駆けだすスクール水着、泳ぎに入ってからは超寄りの画が続いて、それらの繋ぎの臨場感よ。それから引っかかった大物と格闘するシーン、水面レベルからアオリで撮られる華奢な背中に、奥まで引きずり込まれるんじゃないかとドキドキした。

 

Sonny Boy(2021夏)

 年始のBS11での一挙放送にて初視聴。全話とおしてOP無しで主題歌をEDとして流したり、曲ごとにクレジットできるほど劇伴がごく一場面でしか流れなかったりする奇抜さ、それに見劣りしない本編の面白さ。

第7話「ロード・ブック」

 第6話での中学卒業および漂流世界からの脱出の失敗を経て、クラスメートたちはそれぞれ漂流世界での身の振り方を選択していくようになる第7話以降。悪く言えば一学級というごく狭い世界でのごっこ遊びのようだった漂流が、一気に社会に放り出されたようで、希望以上に不安が膨らむ。それでも脱出の未来を模索し、行き着いた世界のルールに独りで抗う長良の姿に、大いに成長を感じた。200年という歳月を重ねて諦念が腹の底に張り付いたように淡々と笑顔で話す二つ星との対比がまた美しい。ここで共感するのは、長良よりむしろ二つ星の方なんだよな。社会の役に立っているのか、あるいは社会そのものが虚像なのか、思考停止して労役をこなす。そこには漂流世界も現実世界も、200年も今日一日も関係ない。「大事なことだよ、くだらないことをどこまで信じられるかが大事なんだ。そうじゃなきゃ、わっちらには何もないんだから。それだけだよ。」

 

映画大好きポンポさん(2021春)

 これも年始のBS11での特番にて初視聴。長大な物語を90分というわずかな上映時間に切り詰めるという作中のストーリーが、作品のテーマとしても色濃く反映された傑作だった。

 ごく個人的な体験として、大学1回生で受けたある一般教養の記憶がよみがえった。名作実写映画をここのトランジションがどうのカメラワークがどうのと映画芸術ないし先生のうんちくを挟みながら鑑賞するものだった気がする。今度はこの作品を教材にしたらいいんじゃないかな。

 

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(2021春)

 水星の魔女が想定外に面白く、同じMBSの日5枠を引き継いで30分ずつ分割してTV放送されたこれも見た。映画公開前だったか、比較的最近にYouTubeで無料公開された逆シャアを見ていたこともあってか、ちゃんとはわからんけど面白くてすごかった(こなみ)。だれが善で悪でというわけでない戦争、登場人物の知性ある言い回しが、オトナのアニメって感じ。

 

魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~(2020夏)

 TLでの評判が良く、2期放送ということで履修する機会をうかがっていた作品。いまは亡きGYAO!で1月にやっていた無料一挙配信にて視聴。燃えと萌えとシュールギャグと人徳が高水準かつバランス良かった。思っていたよりずっとキャラが死なず、これは緊張感より安心感を持って見る作品なのだと理解した。

第2話「破滅の魔女」

 きりもみしながら吹っ飛んでいく城の絵面はたぶん死んでも忘れられない。このワンカットのみで選出に十分だった。

 

虚構推理(2020冬)

 秋のBS日テレでの再放送を録画だけしており、冬になってから消化した。2期の放送が控えていることを知りながら、多すぎる秋アニメの脇に積みっぱなしだった。視聴こそ遅れたものの、さすがの話題作でとても面白かった。推理モノの醍醐味である探偵役を通じた真実の解明を、丸々読者から取り上げてしまうという構造の転換よ。こういうのって初めからセオリーを分析してそれを壊す前提から話を考えないと創りえないと思うのだよね。良い意味でいかにも小説原作っぽいというか、作者はさぞミステリが好きなんだろうなと想像する。

 鬼頭さんって人気の割にパッとしない声の印象があったのだけど、演技派だね。長尺のセリフ回しがするりと入ってくるし、琴子の小柄でいて威厳を秘めている雰囲気が創出されていた。美少女もたれかかるタイトルロゴカットインOP好き。

第11話「最後の虚構」

 無難に鋼人七瀬の解決話をチョイス。4つの推理の中で最もありえないだろと突っこみたくなるものが最後に語られて信じられてしまうの、逆にらしい。あくまで視聴者としては冷静に、それらが虚構であることを知っているからこそ、この奇なる展開を否定しようがないのだ。面白がられる虚構を打ち崩すには、それ以上にウケる虚構をでっちあげるしかない。もはや未来を決定するためというより画的な華やかさを失わないために死に続ける九郎くん、ご愁傷様です。

 筋の通った説明というのは、幾通りも用意することが可能で、じつは筋が通ること自体は真相とは関係がない。真相を語るあるいは騙るために必要なのは証拠だが、亡霊が犯人という証拠の出しようがない真相によって作者は先手を打っている、これもうまい。同時にこの世界観は妖怪を使って証拠を偽造することも容易という脆弱性もはらんでいるが、それはきっと岩永琴子が秩序を守る者として許さないだろう。

 

アイドルマスター シンデレラガールズ 2nd SEASON(2015夏)

 BS11の再放送にて前期の大一期に引き続き再視聴。秋の感想でも書いたけど、デレステモバマスとゲーム面からそれなりにIPに浸かる経験をしたいまあらためて見て、こんなに良い作品だったかと驚いている。一番好きなアイドルアニメが更新される折はわたしの人生ではもう訪れないだろう。

第20話「Which way should I go to get to the castle?」

 クローネといいTPといい常務が有能すぎる。やっぱりシンデレラガールズはクールなんですわ。U149にも出張して第3芸能課をめちゃくちゃにしてほしい。

 「Trancing Pulse」をレッスン室で歌い始めたときの胸の高鳴り。懐古厨だと言われようが、あらためてこのころのデレマスは名曲ぞろいだわ。他でもないクローネへの参加を渋っていた凛が、体験によって心変わりするのが熱い。「新しいことを考えるのが苦手」と言う卯月はけっして変でも何でもなくて、未知とは考えるのではなく、他者との衝突によって感じるものなのだよね。現在で190人というアホみたいな数のオリジナルアイドルを好き勝手に組み合わせるソシャゲ原作のアニメとして、うまいこと物語にしたとわたしは思う。

 もうひとりのクローネ参加者となるアーニャの背中を押すきっかけとなったのが、CP内でユニットを組んでいた美波のことばというのも、NGとは対照的で面白い。プロデューサーが凛にクローネ参加を認めたのはレッスン室での凛の新しい笑顔が決め手だったのは違いないけれども、アーニャの挑戦を後押しする面談のシーンの挿入が、またその心境の一変と成長ぶりにワンクッション置くかたちになっていてうまい。私色ギフト回ほかとも迷ったけど、蒼さには勝てなかった。

 

六花の勇者(2015夏)

 BS松竹東急の再放送にて初視聴。パーティーを組んで魔神討伐するストーリーなのかと思っていたら肩透かしを食らったけれど、それはそれとしてとても面白かった。アクションシーンは七人七様な戦闘スタイルの描き分けで見応え十分。それから構図にキャラクターの心情や場の雰囲気が乗っているカットが多かった印象。

第8話「凡人と天才」

 アドレットとハンスの交戦シーンが圧巻だった。寄りと引き、アオリとフカン、動と静、肉弾戦と武器戦と舌戦。ハンスは天才のひとことで片付けては惜しい魅力的なキャラだったね。

 

ラブライブ! School idol project (第2期)(2014春)

冬の第1期に続き、BS日テレでの再放送にて初視聴。2期でも相変わらずこの絵面この展開スパスタで見たわ(視聴順が逆)と満面の笑みを浮かべる連続。一緒に過ごした時間が増えるにつれて、どんどんμ'sのみんなを好きになるね。唯一知っている曲だったスノハレの披露は、ここで来るのかと腕組みして見ていた。

第4話「宇宙No.1アイドル」

 メンバーのだれを抜きん出て好きになることがないというのがわたしの困りごとで、μ'sにおいても例外ではなかった。それはそれとして矢澤にこは好きだしこの話は最高に笑って泣いたね。デレマスと違ってこちらはグループありきのアイドルで、その要素をうまくアニメに落とし込んでいたように思う。冒頭の予選結果発表のシーン、花陽「みゅ~」からの全員「みゅ~」がギャグとして光るのも、雁首揃えてすぼめた口の形をやっている力が大きい。単独のアップより引きで複数が写るショットの方がうれしいアニメだ。唐突な3人の妹弟の登場による徳井青空劇場も見事な道化だったが、なにより個人回がグループの一員としての夢の発現に帰す構成が美しい。ソロMCからのソロEDはほんとうに感動ものだった。

 

思い出のマーニー(2014夏)

 1月の金ローにて初視聴。アニメがうますぎる。最近の(といってももう9年前なんだ)ジブリってこんなにすごいんだ。深夜アニメの食わず嫌いをやめるよう意識するようになり、逆張りであまり見てこなかったジブリ映画についてもTV放送があれば録画するようになった。入江の海水のリアルでいて幻想的な表現、それから本筋とは関係ない公園の園児集団の天衣無縫っぷりがとくに印象に残っている。

 

涼宮ハルヒの憂鬱 (2009年版)(2009春)

 BS日テレの再放送にて初視聴。名前は当然知っている古典、テレビ放送されるなら録画はしておくか程度の心持ちだったが、いざ見ると令和でも頂点を取れる面白さとキャラクターの強さ。やっぱり名作と評されるものは時代を超えて名作なんだなというのが最近の発見。独特というかこの時代の萌えアニメの特徴なのか、キャラごとの表情のパターンが絞られている印象を受けた。そういえばハルヒといえばこの目の形と口の形だよなみたいな。内面にしても表情にしても、記号的に個性的に尖らせるというのがトレンドだったのだろうか。2クール目の春が終わったらまた感想を書こうと思う。

第3話「涼宮ハルヒの憂鬱III」

 男女混合の部室で着替えに遭遇する萌えアニメしぐさ。ろくな予備知識なく見たので、続々と明かされる団員の正体に「そうなんだ!」と素直に驚いていた。長門、朝比奈さん、小泉の順に説明がよりわかりやすく、補強する構造になっていて、パターンに飽きずに見ていられる。これはたんに各のセリフ内容によるところだけでなく、長門でいえば本人のリアルタイムの早口セリフとはずれた文を画面に矢継ぎ早に挿入して情報過多に陥れる演出なども合わさって効いている。朝比奈さんの語りの裏では穏やかな音楽と景色、「禁則事項です」というえっちワードでデート気分が抜けないし、一転小泉パートでは徹底した対話形式でキョンが聞き手、質問役として機能している。あえて伝わらないコミュニケーションをするというのが、創作の世界では大事だと感じている。これはアカデミックの世界では厳禁とされるやり口で、曲がりなりにもそこで教育を受けたわたしにはなかなか難しい。ブログでも作為的に使い分けできるのが理想なのだけども。

 

ハウルの動く城(2004秋)

 1月の金ローにて初視聴。これももう18年以上前なのか。ストーリーやキャラクターにはあまり惹かれなかったが、音楽がとても良かった。いつかピアノで「人生のメリーゴーランド」を弾きたいなと思い、あるオタクの薦めていたこの楽譜を買った。おそらく練習は当分先になるが、付属CDの模範演奏が鑑賞物としてもすばらしい。

 

総括

 6月19日現在、最初の感想の公開から全部書き終えるまでに2ヶ月以上を要し、春アニメそのものがどうだったというより、その感想文からようやく解放されたという気持ちしかない。とりわけ年始に見た旧作の感想を先延ばししていたのが良くなかった。一方で、新しく試みた単話選出方式は、時間こそかかるが良い振り返りになったのではないかと思う。夏アニメではこの反省を生かし、すでにちらほらと出ているが、最終話を迎えた作品から順次てきぱきと感想を書いておきたい。